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インタビュー

「みんなが思っている以上に、介護・福祉領域は、大きな盛り上がりを見せている。」 〜銀木犀・下河原さんと考える、これまでとこれからの介護について〜

学生の目線で、介護の可能性を“もっと”探るand more project

前回の記事では、下河原忠道さん(シルバーウッド・代表取締役)から終末期などについてお話を伺った私たち。

今回はガラッと話題を変え、これからの銀木犀、そしてこれからの介護・福祉の可能性などについて伺いました。最後には下河原さんからオススメして頂いた本の紹介もあります〜!

これからの銀木犀について

りく
りく
今日はじめて銀木犀へお邪魔して、予想以上に普通の家っぽくてびっくりしました。銀木犀を作るときにこだわっていることはありますか?

いろいろあるけど、一番は、見た感じの印象で高齢者住宅かわからないところにしたかったんだよね。
下河原さん
下河原さん

りく
りく
僕、今日スマホの地図アプリでここまで来たのですが、銀木犀の外観見たとき、全然介護施設っぽく見えなくて、アプリ故障してるのかと疑っちゃいました。(笑)
でも、これまでの下河原さんのお話を聞いて、施設の中を色々と回らせてもらって、その理由が何となくわかった気がします。
きっと、銀木犀自体の目指しているものが、「介護施設」と一言で言い表せないものなんですね。

嬉しいこと言ってくれるね!
最近京都で計画している新しい銀木犀の広告は 「高齢者住宅やめました」というポスターにしたいと思っていてね。
単身赴任中のお父さんや学生とか、障害のある人など、色んな人に住んでもらいたいっていう理由があるんだよ。今後は、周りの人たちが助け合って介護職が介入しなくていいコミュニティを作っていきたい。
下河原さん
下河原さん

さてぃー
さてぃー
とても素敵です!

そういえば最近、石垣島にも支店を作ってるんだよ。そこでは障がいを持った方の就労支援とかをやっていきたくて、今シェアハウスをリノベーションしてる。
下河原さん
下河原さん

ひびき
ひびき
石垣島、いいですね!

社会的に弱い立場にある人も社会の一員として取り込み、支え合う考え方のことを、『社会包摂』というんだけど、障がい者支援はこれが包摂する方とされる方にはっきり別れてしまっているのが課題だと思ってる。
下河原さん
下河原さん

…あれ、もともとの質問なんだっけ?(笑)
下河原さん
下河原さん

 

次々に新しいことにチャレンジしていく下河原さん。そのエネルギー源を聞いてみたところ、「とにかく海外へ行ってみて!」ということです。下河原さん自身、若い頃海外の介護施設を見て回り、その経験が今に生きている、とのこと。コロナウイルスが収束した後、長期休みなど使って、ぜひ海外に行ってみてはいかがでしょうか?

 

これからの ”介護” の面白さ


 (入居者の皆さんとの会話も弾み、時間があっと言う間に流れました)

さてぃー
さてぃー
介護って聞くと、まだまだマイナスなイメージを抱く人も多いじゃないですか?
『死』についての話もそうですが、これからはより多くの人、またより若い段階で介護、老いについて考えていかなければいけないと思っています。多くの人に興味を持ってもらう上で大切なポイントはありますか?

まずはじめに覚えておいてほしいことは、『介護のスキルは、介護現場以外にも役立つ』ってこと。
下河原さん
下河原さん

ひびき
ひびき
介護のスキルは、介護現場以外にも役に立つ…?

どうしても『介護』と聞くと、高齢者の方のお世話をする姿が連想されがちなんだけれど、介護職が培っていくノウハウやホスピタリティは、介護領域でないところでも求められているスキル。
「介護で得た経験を持ってほかの業界にチャレンジする」
ということでも面白いし、それらを例えばビジネススキルとともに、社会起業家としての活動に転換していくような若者が増えていくとうれしいな。
下河原さん
下河原さん

さてぃー
さてぃー
『介護』に縛られず、介護を起点に色々と違う分野のことを考えていけば、見えてくる視点が変わるってことですね。

うん。みんなもっと自由に考えて、いろんな領域でやった方がいいと思う。例えば、ゆるスポーツって聞いたことある?
下河原さん
下河原さん

ささっきー
ささっきー
…ゆるスポーツ?聞いたことないです。

明日から役立つ豆知識!〜ゆるスポーツって?〜
ゆるスポーツとは、スポーツの得意不得意、障害の有無、老若男女に関わらず、“誰もがゆるっと楽しむことができるスポーツ”のこと。『手錠バレー』や、『こたつホッケー』など、多種多様な種類のスポーツが考案され、人気を博しています。

名前のとおり、『ゆるいスポーツ』のことなんだけど、誰にとっても参加しやすいように色々工夫されてるんだよね!これも現場を分かってる人たちが作るから、こういうおもしろいものが生まれるんだよね。
下河原さん
下河原さん

りく
りく
福祉とスポーツって一番遠い存在だと思ってましたが、そんなことないんですね!

そうだよね。あとは、ヘラルボニーって知ってる?
自閉症の兄を持つ双子の兄弟がやっているブランドなんだけど、福祉とアパレルを組み合わせて、色々な企業とコラボして今すごい注目を集めてる。
下河原さん
下河原さん

さてぃー
さてぃー
聞いたことあります!ゆりやんレトリィバァとかともコラボしてましたよね!

そう!最近はVOGUEなんかともコラボしてて、ほんと最高だよ
下河原さん
下河原さん

りく
りく
僕は初めて聞きましたが、VOGUEとコラボなんてすごいですね!

でしょ!介護や福祉は現場だけじゃないっていう意味がわかってきた?
今、本当に力のある人たちがどんどん介護・福祉領域に集結してきていて、みんなが思ってる以上に盛り上がりをみせてる。
自らの経験を切り口にして、本当にいろいろな事に挑戦できる。そのことは覚えておいてほしいな。
下河原さん
下河原さん

 

介護や福祉はスポーツやファッションなど、そこからいくらでも派生させていける。介護だけに目を向けすぎていた私たちに、下河原さんは全く異なる可能性を見させてくださいました。


(インタビューの最中も、子供たちの賑やかな声が聞こえていました)


内向的な性格は、むしろ武器になる

ささっきー
ささっきー
…いきなりですが、実はここ数年間、ずっと悩んでる悩みがあって…。

え、なになに?(笑)
下河原さん
下河原さん

ささっきー
ささっきー
僕、性格が自他共に認める内向的な性格で、大学に入学したことを契機に変わろうと思い、色々と行動してみたのですが結局直らなくて…

なんで変えようと思ったの?

ささっきー
ささっきー
うーん…。今世間で活躍されている方たちって、総じて外交的な人が多いような気がするんですよね。一種のあこがれみたいなものがあるのかもしれません。

なるほどね。そう考える気持ちもなんとなくわかるなあ…。
でも、僕個人としてはその内向的な性格は全く変える必要はなくて、むしろ強みになると思っているよ。
下河原さん
下河原さん

ささっきー
ささっきー
強み、ですか…?

(内向的な性格が強みになるって、どういうことですか?)

こう感じるのは僕だけかもしれないけど、この業界に携わっている方も内向的な人が多いと思う。それを変えようとしてる人や、君と同じように同じような相談をされることもままある。
下河原さん
下河原さん

ささっきー
ささっきー
そうなんですね。

で、話を聞いていくと、本人は『内向的=悪』みたいに考えてることがあるんだよね。でも、さっきも言ったけど、その性格を直そうとすることこそが間違いだと思う。
下河原さん
下河原さん

ささっきー
ささっきー
なんだかお話伺って肩の荷が軽くなったような気がします。でもなんでそこまで言い切れるんですか?

僕は、内向的な人は外向的な人よりも、総じて自問自答する回数が多いと思うんだよね。「自問自答する」ということはつまり、自分の頭の中に落とし込んで考えるということだよね?
ということは、「いろんな物事に自分なりに考えて意味付けをする」ということにならないかな?
下河原さん
下河原さん

ささっきー
ささっきー
なるほど。確かに僕自身、自問自答する回数は結構多いような気がします。

これからは、そんな風に静かに、でも目的をしっかり伝えてみんなのモチベーションを上げてしまう人たちがリーダーになっていくと思っているよ。
僕より上の人たちは、『独占』という考えが強かったけれど、僕たちの世代でだいぶ価値観が変わり、『共有』という風に変わってきた。でもまだ十分ではない。これからどんどんそういう人たちが増えるようにバックアップしていきたいと思ってるよ。
下河原さん
下河原さん

ひびき
ひびき
とても心強いです!

時代は「独占」から「共有」へ。そして「共有」と「内向的」は相性が良いのだと、下河原さんはおっしゃいました。長年感じてきた生き辛さ、心の重荷が、その一言でだいぶ軽くなりました。

 

学生が介護に興味を持つなんて、すごい希望! 

一同
一同
本日はありがとうございました!

いいよいいよ!こちらこそありがとね!
一つ聞きたいことがあるんだけど、みんなこの活動してて楽しい?
下河原さん
下河原さん

さてぃー
さてぃー
た、楽しいですよ〜!

へー!楽しいんだ!大学生だよね?
下河原さん
下河原さん

さてぃー
さてぃー
そうです!

大学生が介護に興味を持つってすげー希望なんだけど!そんな人たちがいるんだ!
下河原さん
下河原さん

りく
りく
そんなこと言われると、なんだかほめられた気分です。笑

さっき話した通り、介護は全体でみるとどんどん面白くなるのに、まだイメージの悪さが先行して、やりたい人はすごい少ない。でもそれって逆にチャンスなんだよ。
下河原さん
下河原さん

ひびき
ひびき
今日お話を聞いて、まだまだ知らなかった介護の面白さを知ることができました。

うんうん、これからも色々な人に取材して、その面白さを伝えていって欲しいな。
下河原さん
下河原さん

取材をさせて頂いている私たちのモチベーションまでググっと上げてくださる、なんとも男前で愛にあふれた下河原さん。私たちは一瞬でファンになってしまいました。

 

 (ありがとうございました!)


番外編 下河原さんおすすめの本3選!

ニュータイプの時代
ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式/山口周

これからのリーダシップを考える上で大切な考えが本当にたくさん書いてあるよ。介護を学んでいる人もそれ以外の人も、いろいろな人に読んでもらいたい!
下河原さん
下河原さん

地域医療のゆくえ
地域医療と暮らしの行方:超高齢社会をともに生きる/高山義浩 

沖縄中部病院の地域ケア科医である高山先生のこの本は、絶対読むべきだと思う。
医者という立場から、介護の在り方についてとても深く洞察していらっしゃるよ。
下河原さん
下河原さん

医療にたかるな
医療にたかるな/村上智彦

村上さんは、財政破綻した夕張市で、経営破綻が明らかになった病院の再建に尽力した方なんだよ。惜しいことに若くして亡くなられたんだけど、これからの日本の医療を考える上で大切な考えをたくさん提言されてきた。この本もぜひ読んでみて!
下河原さん
下河原さん

次回予告

来週は、銀木犀・船橋夏見の所長でいらっしゃる大下さんに伺ったお話をお届けします!
お楽しみに!

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8/1  下河原さんインタビュー記事① これからの 『死』 のありかたについて
8/8    下河原さんインタビュー記事② 求められるリーダー像、介護の未来
8/15   大下さん(銀木犀船橋夏見・所長)インタビュー記事 
8/22     編集後記 ~学生視点で考える「人生会議」
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この記事を書いた人

佐々木 涼悟 Ryogo Sasaki 

KAIGO LEADERS学生チーム/株式会社Blanket インターンメンバー
中央大学4年

僕自身、祖母との同居を通して、介護に興味を持ちました。回らないお寿司屋さんに行くのが夢です。

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