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イベントレポート

現場で見つけた介護・福祉の魅力を届ける。一人ひとりが「表現すること」に挑戦した4か月(KAIGO LEADERS SCHOOL AWARD)

介護の仕事=大変な仕事だけじゃない。楽しいも、感動も、嬉しいも、全部ある。そのリアルは、あなたが一番知っている――。

その思いを「届ける力」として磨き、実践を積み重ねてきた場所が、2025年10月に開校した、コミュニティ型オンラインスクール「KAIGO LEADERS SCHOOL」です。

介護・福祉の領域で活躍するプレイヤーが仲間と共に学び・成長することを目的に、SNS講座、ライティング講座、場づくり講座の3プログラムを通して、4か月にわたり「介護・福祉の仕事の魅力を伝えること」に挑戦してきました。

この学びの集大成として、2026年2月22日(日)、KAIGO LEADERS SCHOOL AWARDを開催。アワードでは、受講生たちが思いを込めて制作した作品の中から「社会の広告社」賞や「こここ」賞、「これからのKAIGO」賞など各賞の受賞作を発表しました。

本記事では、アワード当日の様子をお届けします。

SNS講座・ショート動画部門(「社会の広告社」賞)

SNS講座では、発信の目的や届けたい相手のターゲット設定、企画立案、撮影、編集の基礎、投稿設計まで一通り学びました。実践課題として取り組んだのは、ショート動画の制作です。

今回初めて動画制作に挑戦した受講生も多く、チューター(個人指導員)のフィードバックを受けながら、それぞれが感じる介護・福祉の魅力や価値を映像として形にしていきました。

受講生の作品は全31本。

社会テーマ専門にしたクリエイティブエージェンシー・株式会社 社会の広告社のクリエイティブディレクターである山田英治さんから「社会の広告社」賞として3作品が選ばれました。

受賞作品①古一義宣さん「一杯のコーヒーが教えてくれた、”寄り添う”ということ」

豆から挽いた一杯のコーヒーを通して、ご利用者様の「ほっと一息つきたい」という願いに、心から寄り添う瞬間を表現した本作

SNS動画は縦型ショートが主流であり、冒頭2秒でいかに心を掴むかが鍵となります。本作はまさにその構成を体現しており、文字の入れ方にもテクニカルな工夫が施されている点を山田さんは評価。

「スタッフが普段行っている支援が一般の方にも伝わる構成であり、利用者様とスタッフの思いが『家』のようにつながっていく重要性に気づかされました」と、選出の決め手を語ってくれました。

古一さん:私は今回の動画制作を通して、集団生活という日常の中でも、ご利用者にホッと一息ついていただけるような時間を届けたいという思いを形にしました。

古一さん:介護の仕事の魅力は、誰かの「言葉にならない感情」を丁寧に汲み取り、言葉にしていくことにあるのではないかと感じています。その思いをどう伝えていけばいいのか。この数ヶ月間、講師の方々や講座の仲間に多くのことを教えていただきました。ここで学んだ「思いをつなげる」ということをこれからも大切にしながら、丁寧な情報発信をしていきたいと思います。

受賞作品②大渕凛々子さん「ケアの魅力ってコレか!その人の“ちょうどいい”とは?」

「その人にとっての『ちょうどいい』とは何だろうか」という現場で日々生まれる悶々した葛藤を美化することなく切り取り、私たちに静かに問いかけてくれるような本作

動画という形でありながらも、あえて写真で構成された点が評価されました。

また、現場のリアルをさらけ出すことで、見る側も一緒に考えさせられるような深い気づきを与える作品だと山田さんはいいます。

「福祉の現場にある簡単には解決できない『せめぎ合い』をありのままに伝える構成が、多くの人に響くヒントになると思います」と、選出理由を語ってくれました。

大渕さん:私は大学卒業後、福祉の世界に飛び込み、まだ10か月ほどですが、現場には私の知らないワクワクするような世界が広がっていました。日々感じているのは、認知症や障がいに対する正しい知識はもちろん、その先にある『ちょうどいい』という感覚の大切さです。「障がいがある人」「認知症の人」とラベリングをしてしまうと、目の前のその人が本当に困っていることや、その時々の素直な気持ちに気づけなくなってしまうのではないかと思います。

大渕さん:だからこそ、経験を積んでいく中でも決してそれを見失わず、常に目の前の人と真っ直ぐ向き合えるケアワーカーを目指していきたいです。福祉は現場だけでなく、日常の中にも転がっているものです。この動画を見た方が、ご家族や地域の方に対して、少しの思いやりをおすそ分けできるような気持ちを持っていただけたらうれしいです。

受賞作品③村上卓也さん「寄り添うことから始まる介護の仕事」

スタッフ目線になりがちな動画制作において、「故郷離れて初めて施設に入居される利用者」の視点から物語が始まる本作

その導入から介護に対する思いへとつなげていく構成が素晴らしいと山田さんは評価。

「縦型の構図を熟知したプロフェッショナルなカメラワークやアングルのセンス、ナレーションの構成力も一貫して高く、完成度が際立っている作品でした」と選出の決め手を語ってくれました。

村上さん:この動画は、ある職員のエピソードをもとに、ご利用者の心情や職員の葛藤、そして私たちが大切にしている思いを30秒の中に心を込めて凝縮しました。私たちが現場で何気なく行っている「当たり前」のことも、社会から見れば決して当たり前ではない尊い瞬間があるはずです。だからこそ、飾らない等身大の言葉で表現することを意識して制作しました。

村上さん:この動画を通して、多くの人に「介護の仕事って本当に素晴らしい」と感じていただけたらうれしいです。丁寧にサポートしてくださった講師の皆様や運営メンバー、そして共に学んだ受講生の仲間に心から感謝しています。今回の受賞を励みに、これからも介護の魅力を積極的に発信し続けていきたいです。

【SNS講座講評】現場の温かさを届けることは、未来への「恩送り」につながる

受賞作品の発表後は、SNS講座のプログラム設計とメイン講師を担当された、KEY Design Office 代表の川崎笑美さんより講評をいただきました。

「発信に慣れない中で、頭に汗をかきながら一生懸命に言葉を紡ぎ出し、ご自身の仕事の魅力をどう伝えるか。その言葉一つひとつを宝物のように大切に扱ってくださった姿がとても印象的でした」と振り返る川崎さん。

初めてリール動画制作に挑戦した方が多かったにも関わらず、わずか数ヶ月で形にした受講生たちの熱意に驚くとともに、一つひとつの作品に胸が熱くなったといいます。

「これからも、ご家族や地域の皆さんに現場の素晴らしい雰囲気を届け続けていただきたいです。皆さんが思いを言葉にして届けることは、社会への『恩送り』につながります。一人ひとりの発信が社会を活性化させる力になると信じています。これからも皆さんの発信を楽しみに応援しています」と、未来への期待を込めたエールの言葉で締めくくってくれました。

ライティング講座・記事部門(マガジンハウス「こここ」賞)

ライティング講座では、介護・福祉の仕事の魅力を文章で伝える力を学びました。

まずは、自分が大切にしている思いや現場で心を動かされた出来事など、仕事のどこに魅力を感じているのかを言葉にするところからスタートし、読み手に届く構成や表現を意識しながら、インタビュー記事やエッセイの執筆に挑戦しました。

プロのライターや編集者の視点に触れながら、「伝えたい」が「伝わる」に変わるプロセスを学び、「介護が私に教えてくれたこと」をテーマに一本の記事を書き上げました。

受講生の作品は全38本。

株式会社マガジンハウスが運営する、福祉をたずねるクリエイティブマガジン「こここ」編集長の中田一会さんより「こここ」賞として3作品が選ばれました

受賞作品①和田至正さん「弱さを奪わない仕事ーケアマネジャーとして、揺れながらかかわるということー」

世の中が「強くあること」を求めるのに対して、老いや病によって生じる「弱さ」をどう受け止めるのか、その本質を問いた本作

「和田さんの文章は『弱さを肯定するのが介護の営みである』という印象的な書き出しから始まっています。『弱さ』という言葉の本質を深く掘り下げており、一つひとつ線を引くときりがないくらい名言に満ちた文章でした」と語る中田さん。

和田さんならではのオリジナリティ溢れる表現の数々は、日頃から自身の仕事や利用者様と真摯に向き合い、言語化を続けてきたからこそ生まれたものだといいます。

その真摯さと読み手の心に届く文章が評価され、選出されました。

和田さん:私にとってケアマネジャーの仕事とは、誰かを無理に強くすることではなく、弱さを抱えたまま生きていける世界を支えるための、小さな「実験」のようなものだと思っています。

和田さん:今回の記事では、その実験の体温をそのまま伝えたいと考え、強く言い切るのではなく、できるだけ静かなトーンで言葉を紡ぎました。ご利用者の一瞬一瞬に寄り添い、共に戸惑い、揺れている自分自身の姿を、飾らずにそのまま書き記すことも意識しました。この静かな言葉を通して、福祉の持つやさしさがほんの少しでも誰かに届けられたらと思います。

受賞作品②吉田美樹さん「正解のない現場で、その人だけの「生き方」を支える ——本人・家族の絶望と現場の葛藤を超えて、私たちが届ける『究極のサービス』」

ご家族との関係から生まれた「モヤモヤ」を導入に、ケアの現場で直面する制約と尊厳の狭間での揺れ動きを描写した本作

自分の内面にある複雑な感情を他者に届けるための言葉選びが深く練られ、現場での葛藤の描写がとても丁寧に描かれていた点を中田さんは評価しました。

「泣きながら読んでしまうようなところもあったのですが、特に最後の『揺らぎ続けることが大事なんだ』という締め括りに、心を動かされました」と選出理由を語ってくれました。

吉田さん:この作品は、私自身が挫折や葛藤を重ねながら介護の現場に向き合ってきた日々、そして利用者様、ご家族様、共に歩む職員一人ひとりとの積み重ねの中から生まれました。

吉田さん:まだ道半ばではありますが、私たちの施設で少しずつ形になってきている「一人ひとりに寄り添うケア」をもっと多くの方に知っていただきたい。そんな思いを込めて執筆しました。管理者として現場の声を大切にしながら、介護の魅力を伝えていきます。

受賞作品③中田麻友さん「自分が一生懸命になれる仕事は、介護だった」 迷いながら働く私たちへ:ケアの現場で20年、宮澤潤さんが教えてくれたこと」

自身の選んだ道に対して「この方向でいいのか」という漠然とした悩みから物語が始まり、取材相手である宮澤さんの思いを自分の中で消化していく過程が丁寧に描かれた本作

「介護職だからこそ語れるエピソードや視点があるか」を審査基準の一つにしていた中田さんは、本作が単なるインタビュー記事に留まらず、読み手との接続点を意識した構成が非常に優れていたと評価しました。

また、「相手がいるからこそ書く苦労もあったかと思いますが、出会いの記録としての熱量と、ご自身の意見が重なり合った、非常に読み応えのある記事でした」と語りました。

中田麻友さん:今回の講座を通じて、書くことは本当に勇気がいるのだと改めて実感しました。そんな中で、インタビューをさせていただいた宮澤さんの思いをお伺いし、「この方の熱量をしっかり伝えたい」という強い気持ちが私の中に生まれました。その思いに背中を押されるようにして、書き進めることができたと感じています。

中田麻友さん:この記事は、私と同じように「今の仕事に誇りはあるけれど、モヤモヤしている」という方に届いてほしいと思って執筆しました。どうすればその方の心に届く言葉になるだろうかと、おこがましいかもしれませんが、宮澤さんの言葉を「翻訳」するような感覚で向き合いました。講座での学びや、チューターの方のアドバイスなど、本当にたくさんの方に支えられて形にすることができました。このような素晴らしい機会をいただけたことに、感謝しています。

【ライティング講座講評】「書くこと」を、自分を支えるお守りに。

受賞作品の発表後は、ライティング講座のプログラム設計やサポートを担当された垣花つや子さんより講評をいただきました。

「現場で働きながらプラスアルファで講座に参加されたことと思います。まずは自分で自分を褒めてあげてほしいです」と温かな言葉から始まった講評。

垣花さんは、受講生全員の原稿を読む中で、「皆さんが『その人にしか書けない大事なこと』を熱量を持って書いてくださったので、じっくり読み耽ってしまいました」と振り返ります。

「書くことは表現の一側面でしかありません。喋るのが苦手な人もいれば、絵や身振りで伝えるのが得意な人も、英語や中国語、手話など異なる言語で伝えるのが得意な人もいます。今回学んだ『書くこと』に固執しすぎず、でもそれを自分の生活や誰かを支えるため、守るための『お守り』にしてもらえたらうれしいです。生活はこれからも続きますが、講義はここで一区切り。本当にお疲れ様でした」と、受講生たちの背中をやさしく押す言葉で締めくくられました。

場づくり講座(朝日新聞「これからのKAIGO」賞)

場づくり講座は、介護の仕事の魅力を「場」や地域の人との関わりを通じて届けていくための力を養う講座です。

「そもそも場とは何なのか」という問いを起点に、ゲスト講師による事例紹介や、場づくりに欠かせないファシリテーションのスキルを実践的に学んできました。

コロナ禍を経て地域とのつながりが希薄になった今、改めて人が集まる場の価値を見つめ直し、受講生は「誰のために、何のために場をつくるのか」という本質的な問いと向き合いました。その集大成として、自らの施設や活動を地域に開いていくための企画書を作成しました。

受講生による企画は全22企画。

朝日新聞「これからのKAIGO」賞として、株式会社朝日新聞社が運営する、新しい介護のイメージを伝えるポータルサイト「これからのKAIGO」の視点から3企画が選ばれました。

受賞作品①織原大さん「ラブ・ハザマ―Project」

介護の現場で生まれる、言葉にできないモヤモヤや狭間の感情がある中で、それらを否定せず「愛でる」という視点から生まれた本企画

制度の狭間で困っているという、目に見えにくい存在を「ハザマ」と名付け、可視化した着眼点が非常に優れていると評価されました。

また、介護職側からもアプローチが難しく、当事者自身もどう動けばいいのか分からないという実態がある中で、誰もが参加しやすい「気軽な取り組み」だといいます。

自然とメッセージに目が向くような仕掛けとなっており、この取り組みが息長く続くことで、狭間で困っている人たちが少なくなっていく未来への期待を込めて、本賞が贈られました。

織原さん:私は福祉の仕事をする中で、制度の狭間で困っている方々や、その影響を受けてしまうご家族の姿を目の当たりにしてきました。制度の狭間で立ち往生してしまうことは、誰の身にも起こり得ることだと考えています。だからこそ、家族関係を軸に、「誰もが人とのつながりを維持できるような地域や場所を作っていきたい」という思いがあります。

織原さん:この「ラブ・ハザマ―Project」は、大切な人を思い浮かべてもらいながら、「制度の狭間で困っている人がいる」という事実を知ってもらうための、小さな問いかけの活動です。この活動が、今後「狭間を生まない」地域づくりや場づくりにつながるよう、これからも一生懸命頑張っていきたいと思います。

受賞作品②水野健太郎さん「engawa」

介護施設を高齢者と職員が過ごす場所ではなく、「関わるすべての人が自然と集まれる場所」に変えていくというビジョンのもと生まれた本企画

介護の仕事をより身近に感じてもらうための大きな可能性を秘めている点が評価されました。

マルシェの開催という馴染みのある手法をベースにしながらも、子どものダンス披露といった保護者が必ず訪れる仕掛けを具体的に組み込むことで、確実な集客を見込める企画になっているといいます。

この場が開かれた先にどのような景色が広がるのか、今後の展開に大きな期待が寄せられ、本賞が贈られました。

また、水野さんは、当日ご欠席だったため、受賞のメッセージをいただき代読しました。

水野さん:私は今回、施設に関わるすべての方の「楽しみ・安心・役割」を増やすことを目的に、この企画を検討しました。現在の施設は、主に高齢者と職員が過ごす場となっていますが、これをご家族やケアマネジャー、そして地域の方々が自然と集まれる場所へと変えていきたいと考えています。そこで最も重要視したのが、現場の職員に負担をかけすぎない第一歩を踏み出すことです。理想だけでは現場は動きません。まずは持続可能な形からスタートし、職員と協力しながら、少しずつ地域に開かれた施設づくりを進めていけたらと思います。

受賞作品③林田尭之さん「みんなで一緒に場をリデザインする」

参加者と共に「場」をリデザインし続けていくという視点から生まれた本企画

介護の枠組みを超え、関心のない層にも届くような「とっつきやすさ」と洗練されたビジュアルの企画書が印象的だったといいます。

「地域に住み続ける」という本質に着目し、単なる介護事業所の活動に留まらず、まちづくりの視点を持って地域の特色を有機的につなげようとする姿勢が明確に示されていました。

今後、この事業所がある地域がどう変化していくのかという高い期待も込めて、本賞が贈られました。

林田さん:今回は施設で実際に行っていることをまとめ直して発表させていただきましたが、日々実践してくれているのは現場の職員たちです。まずこの場を借りて、職員のみんなに感謝を伝えたいと思います。本当にありがとうございます。

林田さん:私たちの施設では、職員一人ひとりが自分の思いや活動を自由に投稿するnoteを運営しています。今回の講座を通して学んだのは、場づくりとは何か一つに絞られるものではないということです。地域に開くだけでなく、SNSやライティングなど、多様なアプローチが必要だと感じています。大切なのは、その場を作り続け、あり続けること。これからも職員と一緒に、その場所を大切に育んでいきたいと思います。

【場づくり講座講評】コミュニケーションを豊かにし、自分と向き合う「場」をつくる

受賞作品の発表後は、場づくり講座のメイン講師とフィードバックを担当された、株式会社ここにあるの代表取締役・藤本遼さんより講評をいただきました。

藤本さんが今回の講座で最も大きな成果だと感じたのは、受講生同士のコミュニケーション量の多さ。

アワード当日のこの瞬間もオンラインチャットが動いていることから「場づくりとは、施設を開いたり、イベントをしたりすること以上に、コミュニケーションをどう豊かにしていくかということが重要です。皆さんはそれを学んですでに実践されているんです」と語ります。

日々の業務や研修の中に「みんなで喋る時間」や「横の人と共有する時間」を少しずつ取り入れる。そうした小さな積み重ねこそが、施設の空気を変え、外側とのつながりを作っていくのだそうです。

また、場づくりのあり方について、「外に開くことばかりに意識が向きがちですが、実は今目の前にいる利用者さんやスタッフとどう向き合うのか、もっと言えば『自分自身とどうコミュニケーションをとるのか』ということが大切だと思います」と語る藤本さん。

最後に「場づくりがある意味で現状からの『逃げ』にならないよう、自分自身の内面や目の前の人との関係性を踏まえた上で向き合っていくと良いのではないでしょうか。きっとすべての講座にもつながっていくことだと思います」と講評を締めくくりました。

【一般投票】あなたの一票が、ケアの未来をつくる

今回のアワードでは、「社会の広告社」賞、「こここ」賞、「これからのKAIGO」賞以外にも、SNS講座で制作したショート動画と、ライティング講座で執筆した記事の一般投票も実施しました。

約2週間の投票期間中、寄せられた票数はなんと2,264票。

この膨大な数の中から、最も多くの支持を集めた作品を「みんなが選ぶショート動画部門」、「みんなが選ぶ記事部門」として表彰しました。

【みんなが選ぶショート動画部門】村上卓也さん「寄り添うことから始まる介護の仕事」

みんなが選ぶショート動画部門では、村上卓也さんの「寄り添うことから始まる介護」が選ばれ、社会の広告社賞に続きダブル受賞となりました。

映像のクオリティはもちろん、介護の仕事の本質である「人の暮らしに寄り添うこと」の価値を描き出した作品だと語るKAIGO LEADERS SCHOOL校長の秋本。

利用者が慣れ親しんだ地域や自宅を離れて暮らしているという背景を丁寧に伝えたことで、その日常に寄り添うことがより深く伝わってくるといいます。

秋本からは「介護を描写する際によく見られる笑顔の切り取りではなく、移乗の瞬間に見せる表情などを捉えており、日常の暮らしを支えていることが表現されています。とても心が満たされる作品でした」とお伝えしました。

村上さん:先ほどの賞に続いて、一般投票でも選んでいただき、本当にありがとうございます。正直なところ、申し訳ない気持ちでいっぱいです。私はただ、構成を考えて撮影し、編集しただけ。本当に頑張っているのは、介護の現場で働いている職員たちなんです。

村上さん:でも、その現場で働く職員たちの温かい気持ちが、動画を通じて見てくださった方々に届いたのだとしたら、これほどうれしいことはありません。この賞は、モデルになってくれた職員にあげたいと思います。

【みんなが選ぶ記事部門】富永千春さん「私たちはバラバラの経歴のまま誰かの人生に触れていい。」

多様なバックグラウンドを持ちながら、その「バラバラの経歴」を生かして、目の前の誰かの人生に触れていくことの肯定感を描いた本作

秋本は「私たちはバラバラの経歴のまま、誰かの人生に触れていい」というタイトルがとても秀逸だと語ります。

キャリアを単なる「履歴書上の評価」として捉えるのではなく、悩みながら歩んできた一人ひとりの多様な人生そのものを全て肯定してくれる、そんなやさしい眼差しが記事の入り口から感じられるのだそうです。

また、「富永さんは、記事をきちんと届けるために自作のイラストを添えたり、執筆の最終段階において『誰も傷つけない表現』を模索し原稿と丁寧に向き合っていました。その書き手の姿勢が伝わる作品だったからこそ、選ばれたのだと思っています」と秋本からお伝えしました。

富永さん:今回は、吉本さんのお話をもとに記事を書かせていただきました。吉本さんの歩んでこられた多様な経歴は、看護師としてバラバラな経歴を歩んできた私自身のことも、やさしく肯定してくれるようなもので、執筆中もまるで吉本さんと一緒に駆け抜けているような感覚でした。

富永さん:現場には、医療者に限らず同じ経歴の人は一人もいません。この記事を通して、一人ひとりが持つ背景や、その方の魅力が少しでも伝わればうれしいです。

【総評】「揺らぎ」の中にこそある、介護の本質

受賞作品が全て発表され、いよいよアワードも終わりが近づいてきます。

総評として、本事業を所管する厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室 介護人材定着促進専門官の金山峰之さんよりお言葉をいただきました。

受講生の作品のほとんどが「介護は楽しい」とストレートに表現されたものではありません。むしろ現場での葛藤やモヤモヤ、苦しさといったリアルな感情に触れた上で、それでも介護の仕事にやりがいや魅力を感じているものが多かったといいます。

金山さん:当初は、なぜもっと直接的に魅力を発信しないのだろうかと考えたこともありました。しかし、皆さんの作品に触れるにつれて、感情の「揺らぎ」の中にこそ介護の本質があるのだと思いました。

金山さん:この「揺らぎ続けるということ」をどちらか片方に振り切ってしまうと、いわゆる正義の名のもとに利用者の尊厳や自立を支配するパターナリズムになってしまいますし、反対に振り切ると痛ましい形になってしまうかもしれない。どちらか一方に振り切るのではなく、苦しみや葛藤を抱えながら揺れ動き続ける。そのプロセスを丁寧に言語化し、視覚化したからこそ、人々の心に届く表現になったのだと腑に落ちました。

また、プロの力を借りて自らの思いを形にした受講生たちへ、次のような期待を寄せました。

金山さん:国の力だけで介護の魅力を伝えるには限界があります。現場で働く一人ひとりの発信こそが、介護や福祉に関心のない層や知らない層に届けられる一助となります。皆さんが揺らぎながらも見出したその魅力を、これからも発信し続けていただけたらと思います。

【挨拶】あなたの「言葉」がたった一人の心に届き、救いとなる

最後に校長の秋本より、締めくくりの挨拶をお伝えしました。

提出された全ての課題に目を通した中で、何度も心が動いた瞬間があったといいます。

秋本:もし「校長賞」のようなものがあったとしたら、今回受賞された作品とはまた別の作品を選んでいたかもしれません。それは受賞作に劣るという意味ではなく、読む人の人生のフェーズや価値観によって、心に刺さる作品は異なるからです。だからこそ、皆さんが今感じていることをそのまま表現することには、大きな価値があると思います。その表現は、もしかしたら、たった一人の誰かにとっての救いになるかもしれないからです。

また、今回のスクールを通じて、発信や表現することは、自分たちの仕事の意義や価値を言語化し、関係性を含めて捉え直しすることにもつながると感じたといいます。

秋本:仕事の価値を発信することは、結果としてより良いケアにつながりますし、残念ながら社会の中にまだある偏見などを癒す力にもなる。介護福祉の仕事に携わる人たちの発信には、それほどの可能性があるのだと、私自身も多くの気づきをいただきました。

最後に、「今日でスクールは一区切りですが、まずは身近な人に届けていくということを続けてほしいです」と、プログラムを締めくくりました。

現場の葛藤やモヤモヤ、その揺らぎもありのままに表現することに向き合ってきた受講生たち。この経験を力に、これから先も、介護・福祉の魅力を自分の言葉で届けていくのではないでしょうか。

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※場づくり講座受講生による「場づくり実践事例集

写真撮影

近藤 浩紀/Hiroki Kondo
HP  HIROKI KONDO PHOTOGRAPHY

 

この記事を書いた人

谷部 文香

谷部 文香Ayaka Yabe

介護業界にて介護職員として従事。介護福祉士と旅行介助士資格を保有。その後、異業種での転職を経て、現在はフリーのライター・編集者として活動中。発信の観点から介護・福祉業界と関わり続けている。