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インタビュー

東大卒の介護職。「東大行ったのに何で?」を超えて探る、“モテる介護職”とは?(早大生まっきーの高学歴介護職インタビュー)

東大卒業後、17年間介護の仕事を続けている人がいる。

今回インタビューを受けてくださった木場 猛さんを紹介してもらった時、「東大では、介護を学ぶ機会はほとんどないはずなのに、なぜ介護を選んだのだろう?」「17年間という長い期間、介護を続けられてきた原動力はどんなものなのだろう?」そんな疑問が私の頭の中に浮かびました。

東大という日本でもトップの大学を卒業して、介護の仕事を選んだのには、きっと、強い信念があったのだろう。そして、家族や周囲の人たちは、介護の仕事を選ぶことに反対したり、マイナスなイメージを持たなかったのだろうか?あったとしたら、それをどう覆したのだろう?

お会いした際に、ぶつけてみたい質問も山のように浮かびました。

でも、実際にインタビューをさせて頂き、木場さんのお話を伺っていると、私が元々持っていた「東大卒の介護職」のイメージとは全く違う人間像が浮かんできました。

単純に、介護は面白い。

木場 猛さん
木場 猛さん

元々、大学で学んでいたのはインドの歴史です。介護とは全く関係ないですね。
小学生の頃から、考古学者になりたいなという漠然とした思いもあったけど、インドに興味を持ったのは中学生くらいの頃。カースト制度とか独特の文化・風習があって面白いなぁと思ったのがきっかけでした。
介護と出会ったのは、一年生の時のサークルでの障害者ボランティアです。サークルを選んだのも、本当何となく面白そうだなぁ、くらいのきっかけでした。一人暮らしをしている障害者の方の家に行って、サポートをするボランティアで、途中からはアルバイトという形で入っていました。他にもアルバイトしていたんですが、結果としてこのアルバイトが10年くらい続いて、介護福祉士も取り、その流れで今に至るという感じです。

何でそれだけ続いたのか…。あまり明確な意思があった訳ではないのですけれども、続いているということは、単純にずっと面白いと思ってはいるということですよね。ふり返ってみると、介護の世界で会う人が面白かったんですよね。良くも悪くもぶっ飛んだ人が多かった。(笑)

もう一つ、これだけ人の生活の中に入って、価値観に触れられる仕事ってそうないと思っていて、そこがすごく面白いです。

歴史を学んでいると、どこからか異民族が入ってきて、戦争したり、貿易をしたりして、違った価値観がぶつかったり、混ざったりしている。そういうことに面白さを感じていたんですけど、介護の現場って人の暮らしの中で色んな文化や価値観がぶつかってるなと思えたんです。
目玉焼きに醤油をかけるかソースをかけるかみたいな、生活のちょっとしたこだわりの違いとかでお互い妥協しなかったりで、「別に海外行かなくてもここで、価値観の衝突をしているんですけど」みたいに思えて。(笑)
その差が、僕の中では民族や文化の違いと同じくらい面白いなと思ったんです。

「東大生が介護をする」ということ

「何となく面白い」という思いではじめて、気が付いたら17年間介護をしてきたわけですけれど、周りに認めてもらうというか、理解してもらうまでに10年かかりました。

学生の頃、アルバイトでしていた頃は、周囲も何も言わなかったですが、そのままフリーターで介護を続ける中で、「東大行ったのに何で?」みたいな反応をされることは少なくなかったです。

両親は「好きなことをやればいい」という風に思ってはくれていましたけど、自分の中では親に対して申し訳ない気持ちはありました。長崎出身で東大に通うとなると、「木場さんの息子が東大行った」と親ももてはやされるわけですね。周りの地元の人とかにも将来は医者か弁護士かって言われながら10年経って気付いたら「あいつ介護やってる」って。

でも、10年も辞めずに続けていると、「それだけ好きなんだな」と周りもようやく理解してくれた感じですかね。
そして、祖父が要介護になった時に、親ともすごいやりとりをして、「実務的なことを知ってるいから助かった」って言われたりもして、ずっと続けてきたからこそ、役立つことも出てきましたね。

東大生介護職インタビュー

東大卒が本気で考える「介護職がモテるためには?」

最近、よく考えるのは「なぜ介護職が合コンでモテないのか?」(笑)

合コンで「介護職です」って言った瞬間、眼中にない感じがひしひしと伝わってくるんですよね。

ネットで検索すると、モテる職業の条件にはいくつかあるらしいんですけど、「安定してる」「高い収入」「専門性」。どれも今の介護職には足りてないんですよね。とくに自分は「専門性」のところをもっと深く考えて高めていかないといけないと思ってます。

介護は「誰にでもできる」と思われがち。もちろん、資格を取れば比較的始めやすい仕事であることは間違いないです。介護の現場で働いている人の中でも、「そこそこでいいや」って思う人も多い。色々な価値観があるから、それはそれでありだと思います。

でも、介護をよりよくしようと専門性を高めようとしている知識・技術と熱い思いを持った人たちも、自分と同世代に結構いるなと思っていて、その人たちも全部一緒くたに「介護なんて誰にでもできる」なんて思われちゃうのは残念だな…と。

まだ自分自身どういう形でかかわれるか模索中ですが、想いを持った人たちと一緒に介護の「専門性」を考えて、高めていきたい。今はそんな風に考えています。

17年間、やってきて自分なりの介護の面白さ・かっこよさみたいなものを持ってます。そういうものを上手く取り入れながら、自分の思う介護の専門性を高めていって、「誰にでも簡単に始められる介護」と「高い専門性を持った介護」の二つを上手く分けて、イメージを高めていけたらいいなと思います。

その時に、「17年介護をやってきた」ということと、「東大出身」という自分の特徴を上手く活かせたらよいですね。

まあ、モテたいだけかもしれませんけどね。(笑)

東大生&早大生介護職

介護職のイメージを2つに分けて、専門性を高めていく。そこに自分の経験を活かしたい。

私がこれまで考えていなかったビジョンを語る木場さんのお話がとても新鮮でした。
介護に限った話ではないかもしれませんが、そこには長く一つの道を歩んできたからこそ生まれる、専門家としての誇りというものがあるように感じました。


「専門性が低い」「誰にもできる仕事」「高学歴がやる仕事じゃない」

残念ながら、介護の仕事は今はまだそんな風に思われてしまっています。

でも、諦めずにその道を究めていくことで、見えてくるもの・変えていけるものがあり、自分自身のそのアクションこそが、周囲の人の介護へのイメージを変えるきっかけにもなるのではと感じました。

4月を迎え、私も一人の介護士としてキャリアをスタートします。私自身がこの仕事を選んだことに自信を持ち、一歩ずつ進んでいくことこそ、周囲の介護のイメージを変えることになるのだと思います。

進んだ先に何があるのかは、まだ分かりません。でも、信じて進んでいけば、木場さんのように何かを掴む瞬間があるのかもしれない。そう思えたインタビューでした。

5月19日、「東大卒・介護士」の「物語」をお貸しします。

5月19日に開催されるHEISEI KAIGO LEADERS5周年イベントにて、人の図書館「HUMAN LIBRARY」を実施します。

いろんな背景や思いで“介護”にたどり着き、いろんなカタチで“介護”に関わる人の「物語」をあなただけにお貸しするこの企画。
今回インタビューを受けてくださった木場さんにも、ご参加いただきます。
インタビューでは載せられなかったリアルな話もたくさん聞けるかもしれません!

木場さんのお話をじっくり聞いてみたい方は、ぜひ5周年イベントにお越しください!
(こちらのイベントは終了しました)

 

この記事を書いた人

柳田 真希

柳田 真希Maki Yanagida

介護士KAIGO LEADERS PRチーム

介護士/KAIGO LEADERS PRチーム
早稲田大学をこの春卒業し、4月から都内の有料老人ホームに就職。
中学の頃から介護職に興味を持ち始めたが周囲からの同意を得られなかったことに課題認識を持ち、KAIGO MY PROJECTへの参加を通して、在学中に「高学歴介護職インタビュー」を開始。

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