1冊のアルバムから見えてくる、介護現場での写真の使い方
2020年、新型コロナウイルスによって日本のみならず世界中が未曾有の危機に陥りました。感染リスクの高い高齢者と接する介護職にとって心身共に辛かった1年。そして、ご利用者様の生活のため、笑顔のため、本当に頑張った1年。
未知の状況下で、皆で知恵を出し合い協力した日々を「あの時、頑張ったよね!」といつか振り返れるようにKAIGO FUTURE主催で「介護事業所向け アルバムギフトキャンペーン」を実施しました。
複数の介護事業所に写真活用サービス「フォトシェア」をお試し利用していただき、2020年に撮影した写真をまとめ、努力の軌跡を詰め込んだアルバムを作成。出来上がったアルバムは、コロナ禍でも楽しく日々を過ごすご利用者様や職員さんの笑顔で溢れていました。
今回、ご協力いただいた事業所の中から、今回は3つの事業所にインタビューを実施しました。アルバムを通してコロナ禍での取り組みを振り返るだけではなく、介護現場での写真活用についてお話をうかがいました。
KAIGO FUTUREとは
現場の声からITのチカラで新しい介護の未来をつくる、オープン・イノベーションコミュニティです。
今後、コミュニティ活動を広げていく予定です。
日本中の介護の現場にいる方、現場の声を聞かせてください!
▽WEBサイトにて情報発信中
https://kaigofuture.jimdofree.com/
①社会福祉法人 芳洋会様
東京都西多摩郡日の出町と練馬区で特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護など多くの介護事業所を運営する社会福祉法人 芳洋会様。ご利用者様だけではなく、ご家族や地域との繋がりを大切にし、心に寄り添ったケアを行っています。
インタビューにご協力いただいた関澤様(左)・今様(右)
写真好きの多い現場
フロアにデジカメを常備し、イベントがあれば職員さんが自前の一眼レフやミラーレスカメラを持ってご入居者様の表情を撮影するという芳洋会様。思い出の写真はたくさん残っているそうですが、そのほとんどがパソコンにしまいっぱなしになっていたといいます。
アルバムには、昨年施設内で開催されたイベントの写真がズラリ。夏祭り、運動会、ラーメン屋さんやおでん屋さん……コロナ禍でも「ご入居者様の生活の場である」ことを忘れずに、できる限りのイベントを開催した記録が残っています。
写真好きな職員さんが多いからでしょうか。運動会で皆で盛り上がっている場面、美味しそうにおやつを食べるご入居者様の表情、など切り取られた一瞬一瞬から施設の温かい雰囲気や楽しげな様子が伝わってきます。しかし、ただ楽しんで撮影しているだけではない、と関澤様。
撮られる側も気持ちよく、という意識があるからこそ、ご入居者様の素敵な表情を写真に収められるのかもしれませんね。また、良い写真が多いからこそ、アルバムの写真を選ぶにもご苦労されたそうです。
誰が見る写真なのかが重要
アルバムを作成するにあたり、介護事業所向け写真活用サービス「フォトシェア」をご利用いただきました。「写真をクラウドにアップロードして管理する」だけではなく、介護事業向け機能が搭載されたサービスですが、率直な感想を関澤様にうかがいました。
顔認識機能とは、写真の人物の顔を特定して管理する機能。関澤様の仰る通り、日常ケアマネジャーへの状況報告、共有にも役立ちそうですね。ただ、ケアマネジャーが見たい写真はご家族様とは全く別物だといいます。
ご家族様視点と現場視点、両面でのフォトシェアの可能性を提示してくださったお二人。ただ写真を撮影、管理するだけではなく「誰が見るのか」の意識は重要ですね。
写真だけではなく動画にも挑戦!
思い出の写真をアルバムという形に残した芳洋会様。今後のアルバムの活用方法についてもうかがいました。
さらに、「施設の見学者向けの資料としてもいいかも」とのお話も。たくさんの方と自分たちの想いや取り組みを共有したい、楽しそうにページをめくるお二人の表情からそんな気持ちを感じました。
アルバム、写真の活用に加え、新たな取り組みも考えているそうです。
「制限」「自粛」などマイナスイメージの強い言葉が飛び交うコロナ禍で、芳洋会様は決して歩みを止めません。インタビュー終盤での
の一言には感服しました。
筆者もアルバムを拝見しましたが、特に印象的だったのが、夏祭りで職員さんの浴衣の帯締めを手伝うご入居者様のお写真。まるで、本当の「おばあちゃんと孫」のようで、コロナ禍でも決して心の距離を忘れない、という気持ちが伝わってくるようでした。
関澤様、今様、貴重なお話をありがとうございました!
後日、実際にご入居者様にアルバムを見ていただいたそうです!
職員さんとお話しながら、ご入居者様も楽しそうな様子。アルバムを眺めているこの写真もまた、思い出の一瞬ですね。
②社会福祉法人 優心会様
社会福祉法人 優心会様は、大阪府大阪市にて特別養護老人ホームを運営、ショートステイやデイサービスも行っている事業所です。ご利用者様の人格を尊重し自立を支援する、ユニット型の強みを活かしたケアを行っています
インタビューにご協力いただいた辻本様
写真は日常業務の一部
デジカメだけではなく一眼レフまで施設に常備しているという優心会様。普段から積極的に写真を撮影されているそうです。昨年はコロナの影響で大きな行事は中止となったものの、ユニット・フロアごとのイベントは開催し、そこでも多くの写真を撮ったのだとか。
イベントの写真だけではなく、ケアの面でも写真を活用されているとのこと。
施設運営においてカメラは欠かせない存在で、写真撮影はすっかり業務の一部。そんな優心会様だからこそ、学生インターンシップでも独自の取り組みを行ったそうです。
気になった風景や設備を写真に撮る、というインターンシップは介護をあまり知らない学生に現場を知ってもらう良いきっかけになりそうですね。写真を使った斬新なアプローチ方法です。
思い出を残すための工夫
イベント・ケアの記録用として頻繁に写真を撮影し、インターンシップにも写真を取り入れている優心会様。さらには、辻本様は趣味でもよく写真を撮られるのだとか。カメラをプライベートでよく触っているからこそ、施設での写真の撮り方で気になることがあるそうです。
撮影担当が決まっているわけではなく、職員さんほぼ全員(70〜80名)がカメラを使うそうなので意識の浸透がなかなか難しい、とも仰っていました。また、写真を撮る機会が多いからこその悩みについても語ってくださいました。
イベントでは楽しくなってどんどんシャッターを切ってしまうことも多いかもしれませんが、「ご入居者様がどう感じるか?」「自分が同じ状況で写真を撮られたらどうか?」の意識でより気持ちよく思い出を残せるかもしれませんね。
「フォトシェア」を使ってみて
「とにかくたくさんの写真がパソコンに保存されている」という優心会様ですが、アルバム作成にあたってフォトシェアサービスをご利用いただいた感想をうかがいました。
普段はあまりご家族様に写真を見せることはないそうですが、顔認証機能がコミュニケーションにもつながるかも、とのお話も。
また、写真がたくさんあるからこそアップロードでは少し苦労した部分があったそうです。
結果として楽しくご利用いただき何よりです!
実は、ご入居者様に写真を見せる機会が少ないそうですが、今回作成したアルバムを早速見せていただいたそうです。「ええやん」とお褒めの言葉をいただいたとのこと!
写真をたくさん撮ることは重要だが、決して現状の体制・意識で満足せず、もっとご入居者様へ寄り添ってブラッシュアップする必要がある、今回の辻本様のお話からは写真を通した介護施設の在り方を学びました。
辻本様、貴重なお話をありがとうございました!
③株式会社ケアメイト様
株式会社ケアメイト様は、(看護)小規模多機能型居宅介護を運営する他、居宅介護支援や訪問介護・訪問看護を行う在宅ケアに特化して展開している法人です。「最期まで自宅で過ごしたい」という方の生活のサポートし、地域に密着した活動を続けています。
インタビューにご協力いただいた板井様(上)・谷川様(下)
ご家族様に安心していただくためのツール
事業者全体で日常的に写真を撮影しているというケアメイト様。洗い物の片付けや毎日の体操、ちょっとした散歩など、何気ない毎日を切り取った写真が多いそうです。
昔からデジカメでたくさんの写真を撮影されているそうで、「もうバッテリーも古くなっちゃってます(笑)」と谷川様。施設のパソコンでデータを管理、整理するだけでなく、写真の編集や加工まで職員さんが行っているといいます。こだわって写真を撮影する背景には、どういう理由があるのでしょうか。
「ご家族様の安心のため」という目的が共有されているからこそ、写真を撮るという文化が昔から継続できているのかもしれないですね。ご家族様に見せる以外にも、施設の見学者や新卒採用にも活用するなど、写真を使う機会の多いケアメイト様ですが、「フォトシェア」を試した感想もうかがいました。
これまではアルバムを手作りしていたけれど……
アルバムギフトキャンペーンで今回アルバムをお送りいたしましたが、なんとケアメイト様は普段からアルバムを手作りされているそうです!ご利用者様向けだけではなく、退職される職員さんへプレゼントすることもあるのだとか。
普段からたくさんの写真を撮っているケアメイト様。多くの中からアルバムに使う写真を選ぶのは大変だったのではないでしょうか?
そんな素敵なアルバムの中で特に思い出深い一枚についてお話をうかがいました。
コロナ禍だからこそ撮影できた写真、と言って良いかもしれません。昨年は外出のイベントを中止せざるを得なかったそうですが、施設内でも楽しめる工夫を続ける姿勢にケアメイト様のケアに対する想いを垣間見たようでした。
今回作ったアルバムの中に使われた1枚
デジタルとアナログの融合
インタビュー終盤には、板井様より今回のアルバムギフトキャンペーンを通じて見えた今後の介護業界についてお話いただきました。
介護は人と人が接する仕事であり、そこを魅力に感じている現場の職員さんも多いそうです。「だから、全てをデジタルに振り切る必要はないと思う」と板井様。
昨今、介護業界のICT利用促進が叫ばれていますが、板井様の仰る通り、使い所を見極める必要がありそうです。今回も「フォトシェア」というデジタルツールを使って、アルバムというアナログなアイテムを作成しましたが、介護業界において何を大切にするべきかをもっと深く考えなければならないですね。
ご利用者様、そしてそのご家族様のために写真を撮り続けるケアメイト様だからこそ説得力のあるご意見でした。
板井様、谷川様、貴重なお時間ありがとうございました!
まとめ-ご利用者様の生活のために写真を活かす
今回、アルバムギフトキャンペーンをご利用いただいた3事業所にお話をうかがいました。ご協力いただいた皆様に、改めて御礼申し上げます。
いずれの事業者様においても写真は欠かせないツールであり、闇雲に撮影するのではなく「何のために撮るか」の目的を明確にしており、撮られたご利用者様がどう感じるか?を意識されていました。
ご家族様にイベントや日常の様子を伝えるために写真は大事ですし、健康の管理にも活用できます。ただ、ご利用者様の楽しんでいる姿を撮影するのと、怪我の状態を撮影するのでは用途が全く違います。誰に何を伝えるために撮るのか、介護現場の写真撮影においては必ず意識しなければならないポイントです。
さらに、「ご利用者様は、今の状態を撮られて気持ちが良いか?」にも注意しなければなりません。もし自分が同じ状況で写真を求められたらどうかを考える必要があります。
デジタル化が進む中で、今後写真の在り方が変わる可能性もありますが、時代が移り変わっても「ご利用者様の生活・健康のために写真を活かす」という意識だけは忘れないようにしたいですね。
「フォトシェア」とは?
今回写真をまとめるために使っていただいた、「フォトシェア」の紹介です!
介護事業所で撮影する写真を管理するクラウドサービス。「ご家族へご利用者様の暮らしぶりを伝えたい」「写真を通してケアマネジャーにより明確な情報を共有したい」など、さまざまなシーンで活用できます。
スマホアプリも提供しており、カメラを持ち歩いていなくてもすぐ撮影できるのも便利なポイント。顔認識機能や検索機能など、パソコン上での管理も簡単です。
※アルバム作成はアルバムギフトキャンペーン限定のサービスです。フォトシェアにアルバム作成機能は搭載されておりませんので、ご了承ください。