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イベントレポート

介護職はこれからどう働き、どう生きるのか? ウィズコロナ時代に求められるキャリアの描き方(CONA_04細川寛将レポート)

働いている中で、ふと思うことはありませんか?

“自分は今のままの働き方を続けていいのだろうか”

ほとんどの方が悩む人生の大きな課題だと思います。

現代は、“働き方”の選択肢もどんどん増えていき、さらに答えを見出しにくくなっています。

加えて、新型コロナウイルス感染症、感染拡大の影響で、テレワークの推進や比較的安定していると考えられていた業種の経営が急激に不安定になったり…といった状況のなか、多くの人が、「これからの働き方、生き方」を問い直しているのではないでしょうか。

そんな、今だからこそ、2020年5月24日にオンラインで開催されたCONA_04のゲスト、キャリアコンサルタントの細川寛将さんのお話をシェアしたいと思います!

細川さんは、大学卒業後作業療法士として回復期病棟にてリハビリ業務に従事していました。その後、株式会社メディカルエージェンシーを創業し、医療法人陽明会では在宅緩和ケア住宅まごころの杜の立ち上げを行い施設長として参画しました。

現在は、同法人にて在宅医療連携部部長を務める傍ら、様々な法人の重要なポジションを担われています。

医療・介護職の複業を推奨し、キャリアコンサルタントとして法人だけでなく個人に対してのキャリア支援を精力的に行っています。

様々な仕事を通して、色々な社会課題に挑戦し、課題を解決し続ける細川さんのお話は、
参加者1人ひとりが、未来の選択を描くヒントを掴める機会となりました。

CONAとは、KAIGO LEADERS OSAKAが手掛ける学びの場です。
いろんな食材をまぜこぜにして、食材と食材をつなぎ、美味しさを引き出す関西の名物“粉もん”のように、人の幸せな暮らしに関わるあらゆるものをつなぎ、掛け合わせることにより生まれる可能性を探求していくことを目指しています。

細川さんが登壇されたCONA_04の様子をレポートします。

きっかけは1人の後輩からのメール

医療介護系複業家として多方面に軸足を置いて働く細川さん。複業をすすめるキャリアコンサルタントとしても活躍されていますが、このような働き方をスタートしたきっかけは何だったのでしょうか?

24歳の後輩から相談をされたことがきっかけです。
相談内容は、病気を抱えてしまい、歩けなくなり、亡くなる可能性があるということでした。
結婚もしたいし、子供も欲しいし、仕事もどうしたら良いのか…という。
結果として、自分の家に来てもらい、一緒に暮らすことと、将来歩けなくなる時のために、インターネットのビジネスを一緒にやってみることを提案しました。
その彼とディスカッションをするなかで、「命の重さ」、「働けることの凄さ」や「環境の大切さ」を実感しました。

そして、「色々な課題を解決していきたい」という想いを抱くようになり、現在の働き方をしていくようになっていきました。

“キャリアデザイン”ではなく、“ライフキャリアデザイン”を考える。

“キャリアデザイン”という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。しかし、細川さんは“ライフキャリアデザイン”という概念の重要性を強調します。その理由についてこのようにお話されました。

「どう働くか?」だけではなく、「どう生きるか?」を自分の中で定義づけられるかどうかが大事です。そのためには、人生をかけて成し遂げたい社会課題を見つけられることは素晴らしいです。それを意識することは、自分の存在を肯定することに繋がります。その点、介護職員は“介護”という世界中で課題になっている大きなテーマに携われる意義はとても大きいと思います。

自分にとって正しいキャリアの選択をするために必要なこと

みなさんは、いままでどのようにキャリアを選択してきましたか?
キャリアの判断(決断)軸として、様々な項目が挙げられます。

細川さん曰く、これらの判断(決断)軸のうち、何か1つの側面に絞って決めることは望ましくないとのこと。多くの判断軸で分析し、合理的な判断をした方が良いと強調します。

合理的な判断をするためには、知識を増やし、今の職場のことをより深く理解することが重要です。なかでも、自分の感性を磨き、自分の価値観を見つめ、やり遂げたいことを見つけて、相対的な評価ではなく、「自分自身はこうだ」という在り方を定義づけて、客観的に捉えることが非常に重要です。そうすることで、働く意義を見つけられるのです。

副業?複業?幅業?伏業?

フク業は、以下の4つに分類されていると言われています。

図を見ると、ケイパビリティー(能力)も高く、収入も高いのが「複業」です。起業や共同経営など会社以外のもう一つの事業を立ち上げることです。

副業とは、本業の収入補完をするための仕事です。細川さんは、最初は「副業」でも、最終的には「複業」にしていくことがベストであると教えてくださいました。
また、ボランティアベースの「幅業」を準備段階において実践し、自分の幅をひろげ、最終的には「複業」に繋げていくことも大切な視点です。

「スキルアップ」・「視野を広げる」・「人脈を広げる」等を通して、本業との相乗効果を生み出し自分の新しい土台を多く築き、オリジナルで希少性の高いキャリアづくりに繋げていけると良いですね。

また、1つのセクターに偏らず、様々なセクターでバランスよく活動することで、深みのキャリアになっていきます。

介護職員も、自分たちの世代で、自分たちの働き方を模索し、自分たちで形づくり、実践していくことができれば素晴らしいですね。正解は無いです。自分が納得して満足のいくキャリアをつくっていくことができれば正解だと思います。

介護職員のウィズコロナキャリア

ウィズコロナキャリアにおいて、介護職員は、個人の価値を発揮して生きていくことが大事になります。“コミュニケーションが得意な介護職員”、“トランスファーの技術が優れている介護職員”といったスキルの高い介護職員が色んな組織に求められるような時代になっていくと思います。

1人ひとりの介護職員が「“自分株式会社”を運営している」という考え方を持った方がいいです。“自分株式会社”にはどのような資本が必要かを考え、自分の価値観を明確化していく必要があります。

一方で、組織のなかで役割をもつことも重要です。組織のなかで自分ひとりが生み出す提供価値をいかに最大化していくかに焦点を当てて働くのです。

つまり、個人として生きていくために組織を「軸」としてキャリア形成をしていくことが求められると思います。

介護職員のワクワクする可能性を具体的に想像できるお話でした。

グループワーク

細川さんのお話をふまえて、グループに分かれてディスカッションをおこないました。
具体的には、感想と、「自分自身の働き方を通して考えたこと」について共有しました。

【対談】

後半は、ゲストの細川さんとKAIGO LEADERS OSAKAの世古口さんの対談がおこなわれました。

テーマ1 介護従事者だからこその強み キャリアデザインの可能性

世古口:キャリアデザインを考えるためには、自己理解が大事だと思います。一方で、僕が介護職員や福祉職員の方とかかわってきて感じているのは、なかなか自己理解がうまくいかなかったり、自分のやりたいことがあっても、できないままモヤモヤしている人が多いような気がします。
介護職員の可能性を最大限に引き出すために、「自己理解を深めるためのコツ」や、「まず何から考えたらいいか」を教えてください。

細川:やはり、まずは自己理解から入りますね。自分自身が「どういったことを大切にしているのか」「どのような過去の体験を大事にしているのか」等を紐解いていき、その上で「仕事理解」や「マーケット理解」につなげていき、「こういう風にするのが良いのでは?」と提案を進めていきます。
自己理解のためには、「システマチックアプローチ」、「キャリアアンカー」等、様々な方法があります。

世古口:自己理解をしていく中で、客観的な理解とは異なっていることに気づくことも多いですよね。その場合、どのように価値形成し、決定していくべきでしょうか?

細川:客観的に見ることも必要ですが、だからと言って、他者の意見を全て受け入れるのが正解ではないです。合理的な判断をしていくことで、最終的には自分で意思決定していくべきです。

世古口:細川さんの立場から感じられる介護職の魅力や他分野に貢献できることは何だとおもいますか?

細川:介護職は可能性の塊だと思います。
日本におけるマーケットを考えるとシニア層が一番多いです。その層の生活に密着して、一番最前線で関わっているのが介護職です。今後、介護職が“ひとり代理店”となってシニアに商品を販売したりする時代がやってくるのではないでしょうか?
「介護×〇〇」という社会課題は多いので、ケアワーカーとしてだけではなく、さらにプラスの視点を持つと、可能性が広がっていくと思います。

テーマ2 ウィズコロナ・アフターコロナ「これからの働き方」

世古口:新型コロナウイルス 感染症の感染拡大の影響を受け、働き方を問い直す必要性が出ています。これからの働き方についてもう少しお話を伺いたいです。

細川:まず、介護業界でもオンライン化が進むと思います。紙ベースだったものも、どんどんオンライン化していくでしょう。
また、介護職員も潰しの利く、個のスキルが大切になっていきます。介護に軸足を置きながら、さらに別にコミットしていくものを持っていた方がいいと思います。

対談の最後に、細川さんが実施されているプロジェクト「一人ひとりの夢」企画の紹介がありました。
細川さんのTwitterアカウント(@hosokawa777)で、介護分野医療分野にかかわる人たちの夢を募集しているそうです。

対談の後は、グループワークと質疑応答を実施しました。

自分自身のキャリアについて十分に向き合ってきたと思っていた方も、「もっと深く考えてみよう!」と思える機会となりました。また、もっと自分のキャリアを広げていき、価値を高めていくことができる大きな可能性を強く感じることができました。

皆さんは、これからどのように働き、どのように生きていきますか?

ゲスト紹介

国家資格キャリアコンサルタント
作業療法士・保健学修士

2009年大学卒業後作業療法士として回復期病棟にてリハビリ業務に従事。大学院を経て2012年に株式会社メディカルエージェンシーを創業(取締役/リハビリメディアPOST副編集長として参画)。2016年より医療法人陽明会にて在宅緩和ケア住宅まごころの杜立ち上げを行い施設長として参画。現在は同法人にて在宅医療連携部 部長を務める傍ら、株式会社クリエイターズ取締役、一般社団法人 守破離代表理事、合同会社リハコン業務執行社員、NPO法人・社団法人の複数理事、ヘルスケアベンチャー企業のアドバイザーとして広く携わり「医療介護系複業家」としての顔を持つ。医療・介護職の複業を推奨し,キャリアコンサルタントとして法人だけでなく個人に対してのキャリア支援を精力的に行っている。

【著書「医療・介護職の新しいキャリアデザイン戦略-未来は自分で切り拓く-」は増刷(2刷)】

イベント概要

【日時】2020年5月24日(土)19:00~21:00 オンライン開催(zoom開場18:50)

CONAについて

CONAの由来は、大阪の伝統ある粉物から。いろんな食材をまぜこぜにして、食材と食材をつなぎ、美味しさを引き出す粉のように、人の幸せな暮らしに関わるあらゆるものをつなぎ、掛け合わせることにより生まれる可能性を探求していく場です。

この記事を書いた人

森近 恵梨子

森近 恵梨子Eriko Morichika

株式会社Blanketライター/プロジェクトマネージャー/社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員

介護深堀り工事現場監督(自称)。正真正銘の介護オタク。温泉が湧き出るまで、介護を深く掘り続けます。
フリーランス 介護職員&ライター&講師。

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