MAGAZINE 読みもの

click me!
インタビュー

「僕が介護にはまったのは…」慶応卒介護職の中庭さんが語る介護の魅力とは? ~早大生まっきーの高学歴介護職インタビュー~

介護の仕事を始めたのは論文のため。本当は、現場とアカデミックな場をつなぐために大学院に戻ろうと思っていました。
でも、いざ介護の仕事を始めたら、「この仕事面白い!」と思い、気がつけばもう8年も経っていました。

私が介護職を選ぶ理由〜早大生まっきーの高学歴介護職インタビュー、1回目は、慶応義塾大学 総合政策学部を卒業後、介護の現場で働き、今年(2017年当時)から看護小規模多機能型居宅介護〔※〕 (以下看多機とする)の施設長を行っている中庭秋人さんにお話を伺いました。

「経験ゼロから介護の世界にわざわざ飛び込むなんて、私と同じようにずっと介護をしたい思いがあって、この世界に入ったのかな?」

お話を伺う前に、私はそんな予想をしていました。
しかし中庭さんの口からは、私の思っていたこととは違う答えが返ってきました。

介護の世界に入ったきっかけは、卒業論文のためだったはずの中庭さん。
その中庭さんが、いったいなぜ介護の現場に魅せられたのか?お話しを聞かせて頂くうちに、私もその魅力に惹き込まれていきました。

※看護小規模多機能型居宅介護とは?
通所介護・ショートステイ・訪問介護・訪問看護全てが複合された地域密着型サービスのこと。

元々介護に興味があった訳ではなかったけれど…。

実は、大学では特に介護に関わることはありませんでした。
大学では東南アジアのことを勉強していて、卒業論文のテーマに外国人介護士を取り上げたことが、一つのきっかけでした。

論文を書き終えた頃にふと「介護の『か』の字も知らないやつが書いた介護の論文なんて、いったい誰が読むんだろう?」と思ったんです。

そこで、自分の「介護の現場を知らないやつ」という状況を変えようと思って介護職を始めました。

「慶応まで出た人がなんでここにいるの?」とかよく言われたりもしましたが、慶応を出て介護職として働いている人って中々いないと思うので、かなりニッチなところを攻めた気分でした。そんな思いで始めたので、そのうち研究のために大学院に戻ろうと思っていました。

でも、実際に介護の仕事を始めたら、人生の先輩方の生活に深く入り込み、関係性を築く介護の仕事の魅力にはまり、8年目を迎えています。

人生の大先輩達と、深く語り合う贅沢な時間

社長のじいちゃんと雑誌の記事を読みながら、「これからの介護施設経営と時代の流れとは…」と熱い議論をしたり、「家に帰りたい」というおばあちゃんが、泣きながら怒りながら話すので、最終的にこちらも泣きながら1時間話し合って握手してみたり…。

介護の仕事では、人生の大先輩の方々の生活に深く入り込んで、お話を聞いたり、自分の話を聞いてもらったりすることが多くあります。

私にはそういった時間がとても贅沢なものと思えて、介護の仕事の一番の魅力ではないかなと思っています。人生を長く生きている方たちだからこそ、その言葉から学ぶことも多く、これほど勉強になる仕事は他にないと思っています。

“地域のあり方”を、地域の人と共にデザインする介護

私が今、介護の仕事を通して行いたいと考えているのは、地域に住む人たちが、もっとその地域を好きになれる環境を、地域の人と一緒につくっていくこと。

地域には様々な世代の、様々な立場・環境で暮らす人がいます。

その中で、自然発生的にそれぞれの得意なこと・できることを活かして、教え教わりあい、支えあう大きな教室みたいな地域ができたら、居心地がいいだろうなと私は考えています。

 

こんなエピソードがあります。

長く一人暮らしをされていたおばあちゃん。介護が必要になり、私の施設を利用することになりました。
出会った頃は、背負っている過去もあり、人との関りも少なくなっていて、「私がいても周りに迷惑をかける…」と話され、暗い表情でいることが多くありました。

でも、施設の中で、他の利用者とお手伝いをしたり、雑巾を縫って近くの小学校に届けに行ったり…と、地域の様々な人とのつながりが生まれる中で、徐々に笑顔が増えていき、今ではとても生き生きと過ごされています。
「誰かとつながっている」「誰かの役に立っている」という実感が、この方の元気を取り戻したのだと思います。

看多機やグループホームなど、介護施設というのは、おじいちゃんおばあちゃんという地域の人的資源が集う場所です。この資源を活用しない手はないと思っています。

誰にでも、いくつになっても、地域とつながり、輝ける場所があるはずです。「介護と出会うこと」、そして介護をきっかけに「新しいつながりが生まれること」がそのきっかけのひとつになれると思っています。

そういった環境をつくるために、まずは自分自身が地域で色々な人とつながり、関係性を深めていって、できることはないかと模索しています。

地域は、おじいちゃんおばあちゃんの世代だけでも、若者だけでも成り立つものではありません。

一番高齢者に関わることのできる介護職は、高齢者の人・若い人たちも生き生きと過ごせる地域のこれからの姿をデザインしやすい気がしています。好きな場所のために、地域の人たちと一緒に、そんな場所を作っていきたいです。

中庭さんはHEISEI KAIGO LEADERSのイベントPRESENTの運営メンバー/ファシリテーターとしても活躍されています。

“介護の仕事の魅力・おもしろさにもっと触れてもらいたい。


おじいちゃんおばあちゃんたち、スタッフの人たち、地域の人たち…。

この仕事を通してたくさんの人と出会い、その人生に触れました。「そういった人との出会いやつながりは、介護の世界に入らなければ出会えなかった人たちだよな」と思うと、感慨深くなります。

私の中で、介護への入り口は論文だったんですが、いっしょに過ごしたいなと思う人とたくさん出会えるようになったのが、大きなことだったと思います。

 

介護について悪いイメージも多いですが、私は実際に見てみないと分からないなと思っていました。

噂やイメージを信じて介護から遠ざかるより、少しでも興味あるのであれば、まずは介護の現場を見てみるとか、介護施設に限らず、様々な世代が集う場所にもっと行ってみたらよいのではないでしょうか。私自身が実際に現場へ行って、たくさんの出会いを通して介護という出会い方にはまった人間なので、そう感じています。

 

一方で、介護の仕事を辞めていく人たちの中には、介護をしていて、周りから否定される自分に耐えられなくなり、辞めてしまう人も多いのだと思います。介護の仕事は魅力を感じられるまでに、色々な障害や難しさもあることも事実だと思います。

だから、私はその障害を取っ払って、より多くの人がきちんと介護の魅力や面白さを感じられるようにしていきたいです。

【私の感想】

元々介護に関心はなかった中庭さんがどんどんと介護の世界にはまっていき、介護の魅力を楽しそうに語って下さり、「早くこの魅力を多くの人に届けたい」と思いながらインタビューをしていました。

中でも最後の「介護をイメージで判断せず、自分の目で見て確かめて欲しい」という言葉は、本当にその通りだと思います。それまで悪い噂を聞いていた、中庭さん自身が自分の目で見て感じたことを話して下さったからこそ、この言葉に説得力が増すのだと思いました。

私もこれから介護現場で働くようになったら、同じように介護を志した人たちが、環境のせいで介護をあきらめてしまわないように、中庭さんと同じく実体験を持って魅力を発信していける一員になっていきたいです。

私が本企画を始めるきっかけになったKAIGO MY PROJECTには、中庭さんをはじめ介護の魅力を語ってくれる先輩がたくさんいます。ぜひ一度そんな場に遊びに来てみてくださいね。

この記事を書いた人

柳田 真希

柳田 真希Maki Yanagida

介護士KAIGO LEADERS PRチーム

介護士/KAIGO LEADERS PRチーム
早稲田大学をこの春卒業し、4月から都内の有料老人ホームに就職。
中学の頃から介護職に興味を持ち始めたが周囲からの同意を得られなかったことに課題認識を持ち、KAIGO MY PROJECTへの参加を通して、在学中に「高学歴介護職インタビュー」を開始。

この記事のタグ