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「僕らは介護施設じゃない」みんなが“ほどほど幸せ”になるために大切にしていることとは?(ぐるんとびー)

全国での活動 REPORT 全国 オンライン

僕らは介護施設をやりたいんじゃないんです。1人ひとりの“ほどほどの幸せ”を、地域の繋がりを通して実現していきたいんです。

そう話すのは、ぐるんとびーの代表を務める菅原健介さん。

超高齢社会に突入した日本。「どのように老いるのか」は他人事ではなくなりました。

2020年12月12日と13日に、「全国介護・福祉事業所オンラインツアー」と題し、全6事業者の取り組みを紹介するイベントを開催いたしました。
その6つめのツアー先は、株式会社ぐるんとびー案内してくださったのは代表取締役の菅原健介さんです。

ぐるんとびーの取り組みは、「どのように老いるか」を深く考えるきっかけになりました。

目指すのは「いい介護」ではなく、「ほどほど幸せな毎日」

ぐるんとびーは、神奈川県藤沢市にある介護事業所。
最大の特徴は、団地の一角がそのまま介護事業所になっていることです。

UR団地に小規模多機能、5階に僕と家族が住んでいて、4階に妻のお母さんが住んでいます。うちの利用者さん全員が住んでいると思われることがありますが、29人のうち9人がこの団地に住んでいます。共同生活をしているのでなかなか面白いですよ。

そう紹介してくださった菅原さん。

介護事業所ではあるものの、御用聞きや法律相談もできる地域の交流スペース、高齢者と若者のルームシェアなど、直接介護とは関係がなさそうな取り組みも広く実施しています。

その理由は、「いい介護の形」ではなくほどほど幸せな毎日に感動できる豊かな人と人とのつながりをつくることを目指しているからです。

大きなきっかけは、東日本大震災でした。

震災直後に現地へ赴き、ボランティアコーディネーターをしていた菅原さん。
地域の人と人との連携がうまく取れず、思うように支援が進まない状況に頭を悩ませたといいます。

菅原さんは当時、「平時における人間関係の構築」の大切さを実感しました。

僕たちは社会を変えたいとか、そんな大それたことは考えていません。僕と家族が幸せならそれでいい。ただ、僕の周りの人たちが困っていたら全然幸せを感じられない。専門知識がなくても、地域の誰でも介護に関わることはできます。大事なのは専門知識よりも相手との関係性だと思っているので。だから、ぐるんとびーをハブに地域住民を繋げて、団地を1つの大きな家族にしていきたいです。

地域の人同士が繋がりを通して、地域が血縁とはまた違うもう一つの大きな家族になっていくことを目指すぐるんとびー。
そのため、介護事業所の他にも地域交流スペースの運営、緊急時の見回りや、まちかど八百屋など、介護の専門職ではない人も巻き込んで取り組む活動を行っています。

菅原さんはデンマークで過ごした中学・高校生時代に得た視点をぐるんとびーの中で共有しています。

ケアにあたる際、特に意識をしていることは2つ。
人間関係を構築した上で専門性を活かすこと「正しさを固定化させないこと」です。

具体的にどのようなことなのか、ぐるんとびーを利用されていたお2人のを例に挙げてお話してくださいました。

真に「専門性を活かす」とは何か?深夜にラーメンを食べられるようになるまで


僕らだって深夜にラーメンを食べるのに、なんで高齢者だからってだめなんでしょうか。

そう言って菅原さんが見せてくださったのは、ある利用者さんが夜中の3時半にラーメンを食べている写真。
2020年5月、病院からペースト食の食事形態で退院した方が10日後にラーメンを食べるこの動画を、菅原さんはTwitterにアップしました。
当時、Twitter上では専門職同士の激しい議論が繰り広げられ、ネットニュースになったほど

退院してわずか10日後であったにも関わらず、ラーメンを食べられた背景には、「“食”が生きる意欲に繋がっている」と考えたスタッフと利用者さん自身の努力がありました。
ラーメンを口にできるようになるまで、ペースト食から固形食を徐々に食べられるように機能訓練を重ねていたとのこと。

彼の「食べたい」という気持ちが、彼自身の生きる意欲や機能回復に繋がりました。精神・肉体的なリスクがあっても、それを超えて「やりたい」と思うことがあれば手伝っていくことをぐるんとびーは大切にしています。

さらにぐるんとびーでは、相手と向き合う時に大切にしている視点があります。
それは「肉体・精神的な面」を捉える視点、そしてもう一つが「文化・社会的な面」を捉える視点です。
肉体的側面と精神的側面、そしてその人が今まで大切にしてきた文化や習慣、個人や社会との繋がり。
この4側面が成立することで、「その人らしさ」が守られるのではないかと、菅原さんは語ります。

この4側面を捉えた上での関係性の構築がない中で、スタッフの専門性を活かすことは難しいです。

メディアに出る機会が増えたこともあって、外から見たら「ぐるんとびーでは何でもやらせる」と思われるかもしれないのですが、タイミングによって違います。
4側面を見た中で、それでも医療職として「ほどほど幸せにその方が生きる」ことを考えた時、その方のこれからの文化・社会を守るために、「ちょっとまだ待ちませんか」という時ももちろんあります。
みんなで話し合いながら、一人ひとりが“ほどほど幸せ”になれるケアを目指しています

“ほどほどの幸せ”は、固定化された正しさだけでは生まれない

一人ひとりが“ほどほど幸せ”になることを日々追求するぐるんとびー。
そのケアの在り方によってはどこまでが介護なのか、範囲が曖昧になっていくこともあるといいます。
電動車椅子での生活をされていたある数学者の方が、ぐるんとびーを利用されていました。

彼の生きる上でのモットーは、「透析は受けない、好きなものを食べて好きに生きる」こと。

電動車椅子でも動きやすいように住環境を自ら整え、自分で電子レンジで温めたご飯を食べる。そして、「意識が失くなってしまうから」と止められていた映画館へ足を運び、意識消失。そして映画館へスタッフが迎えにいく……。

「好きなことをして生きる」ために生じるリスク。介護量も増える一方です。
スタッフたちは、「どこまで介護報酬で対応するのか?」と、話し合いを続けました。

話し合いを続けた結果、スタッフと彼の中で一致していた思いは「好きなことをし続けて、みんなの中で死んでいくこと」でした。

一緒に旅行に行ったこともありました。バリアフリーのホテルを本人がとったのですが、全然バリアフリーじゃなくてスタッフが枕を投げつけてましたね(笑)もうこれって、利用者とスタッフの関係じゃないですよね。あくまでも友達同士の旅行として行ったからこういう感じだったんです。

時にはスタッフとしてではなく“友達”として外食や旅行へ行く。

「介護報酬で全てやるべき」という“固定化された正しさ”を疑う視点がなかったら、この方にとっての“ほどほど幸せな状態”は実現しなかったかもしれません。

対話を重ね、“固定化された正しさ”だけの介護を超えることで、「好きなことをして生きる」という彼の気持ちを支えていきました。

ケアをするにあたり、一人ひとりの“ほどほど幸せ”な状態に近づくために、スタッフの中には多くの葛藤も生まれます。

その方が目指す“ほどほど幸せ”な状態によっては安全性との兼ね合いが難しかったり、介護保険制度では不可能なこともあるからです。

「その場、その瞬間に対話を重ねて悩みや葛藤を乗り越え、正しさを更新していくことを大切にしている」と菅原さんはお話してくださいました。

「心地いい」「楽しい」を高めていくと、安全性との兼ね合いが難しくなっていくのは当然です。その人が求める“ほどほど幸せ”な状態にとって優位になるのは、安全性なのか、心地良さなのか。スタッフや医療職など、いろんな人の視点を入れて対話を重ね、正しさを固定化させないことを大切にしています。

「成功例なんて全然ない」葛藤しながら“ほどほど幸せな毎日”を考え続ける


最近はいろんなメディアに取り上げられる機会が増えて、アジアの賞もいただきました。
でも、団地の人には「いいところばかり取り上げられすぎだろう」なんて言われることもあります。全然成功例なんてないんです。

「先駆者」「イノベーター」など、さまざまな表現でメディアに取り上げられるぐるんとびー。
そこにあるのはいわゆる「“キラキラ”とした介護事業所」ではなく、「団地に住む一人ひとりの“ほどほどな幸せ”を目指す地道な努力や対話を続ける活動体」でした。

転んでいる人を助けて家族に電話すると、「利用者として取っていくんですね」と怒られることだってある。「高齢者を食い物にする株式会社は出ていけ!」って怒られることもあります。

御用聞きやルームシェアなど、介護事業の他にも“ほどほど幸せ”になるために実施したことでも、沢山の価値観がある中ではうまくいかないことも多くあります。
たくさんの考えや価値観を持つ人が住む団地の中で、「その人にとって何が“ほどほど幸せ”になるのか?」
この問いについて考え続け、変化し続けるぐるんとびー。最後に菅原さんが考えるこれからのぐるんとびーについてお話をしてくださいました。

目の前の人の“ほどほど幸せ”な状態を考え続けると、範囲がその人だけでは止まらず、町や国と、どんどん広がっていきます。最近は本気でノーベル平和賞を取る気で僕は動いています。20年後、見ていてください。

ゲストプロフィール

株式会社ぐるんとびー 代表取締役 菅原健介

1979年神奈川県鎌倉市生まれ。
中学高校をデンマークで過ごし、学生時代は野宿をしながら各国を放浪。
東海大学卒業後、(株)セプテーニで広告業の営業職として勤務。
その後、理学療法士に転職。回復期リハビリテーション病院(鶴巻温泉病院)在籍中に東日本大震災が起こる。
全国訪問ボランティアナースの会キャンナスの現地コーディネーターとして石巻・気仙沼などで活動。2012年にマンションのひと部屋を使った小規模多機能型居宅介護『絆』開設。
要介護者の約6割の介護度が改善する事業所としてメディア等に取り上げられる。
2015年に『株式会社ぐるんとびー』を起業し独立。
日本初のUR団地のひと部屋を使った小規模多機能型居宅介護『ぐるんとびー駒寄』開設。
2017年に『ぐるんとびー訪問看護ステーション』開設。
また、藤沢地域を中心とした多業種・多職種の交流会『湘南きずなの会』『湘南大庭会』などを仲間とともに主催している。
2020年アジア太平洋地域「高齢者ケア・イノベーションアワード」にて最優秀賞を受賞。

イベント概要

日時:2020年12月13日(日)20:00~21:15

この記事を書いた人

渡部真由  WATANABE MAYU
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株式会社あおいけあ ケアワーカー/KAIGO LEADERS PR team

 


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