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お年寄りを困窮と孤立から救う!75歳以上が主役の「ばあちゃん食堂」(うきはの宝株式会社)

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“お年寄りの生活”と聞いて皆さんは何をイメージしますか。

自宅や老人ホームでゆったりと過ごし、家族や介護ヘルパーにお世話になりながら暮らす。

そんな風に考える方も少なくないでしょう。ましてや「年をとってから働く」なんて想像しづらいかと思います。

しかし、今回紹介する「うきはの宝株式会社」で働くのは、なんと平均年齢75歳以上のおばあちゃんたち!なぜお年寄りの働く場所を作ったのでしょうか。

2020年12月12日と13日に、「全国介護・福祉事業所オンラインツアー」と題し、全6事業者の取り組みを紹介するイベントを開催いたしました。
その3つめのツアー先は、うきはの宝株式会社です。
案内してくださったのは代表取締役の大熊充さんです。
会社設立のきっかけから、具体的な取り組みまでのお話をうかがいました。

「ばあちゃん食堂」とは?

福岡県うきは市を活動拠点とするうきはの宝株式会社。「75歳以上のおばあちゃんたちに生きがいを創出すること」「おばあちゃんたちの収入増(年金プラスαを目指す)」を目的とし、2019年に設立されました。

平均年齢75歳以上のおばあちゃんたちが約20名働いており、次のような事業を展開しています。

・飲食店「ばあちゃん食堂」経営
・おむすびや漬物、惣菜の製造、販売
・編み物ブランド など

ばあちゃんたちを働かせるのではなく、ばあちゃんたちがやりたいことを僕が組み立てていく、という感じですね。例えば、「今から新しいことを覚えるのは大変だから、ご飯を作りたい」って言われて、「ばあちゃん食堂」を始めました。ばあちゃんたちの料理、美味しいんですよ!

「ばあちゃん食堂」は、改装した古民家で経営しており、まるで実家に帰ったかのような安心感のある空間。マニュアルはなく、おばあちゃん1人ひとりの味を楽しめるんだとか。

孤立を救ってくれたおばあちゃん

なぜ大熊さんは「75歳以上のおばあちゃん」が働く場所を作ったのでしょうか。大熊さん自身が触れたおばあちゃんの優しさと、うきは市の高齢化問題に大きな理由がありました。

20代の頃にバイク事故を起こし、約4年間入院生活を送っていました。退職を余儀なくされ、入院中は自暴自棄になっていたんですが、夜間にばあちゃんと一緒にナースステーションで待機させられていたんですね。ばあちゃんたち、すごく話しかけてくるんですよ。廃人みたいでロクに話せない僕に、毎日飽きずに話しかけてくれる。最終的に、ばあちゃんたちに笑わせてもらって、笑顔を取り戻すことができました。

先が見えず、孤独の中を生きていた大熊さんを救ったのはおばあちゃんたちでした。この経験をきっかけに、ある決意を固めます。

僕が明るく生きていられるのは、当時ばあちゃんたちが励ましてくれたおかげ。だから、「今度は、僕がばあちゃんたちを笑顔にする番だ!」と考えました。さらに、「ばあちゃんたちに頼られる人間になろう!」という思いもあります。

うきは市の高齢化問題を救うために

退院して間もなく、大熊さんはお年寄りの困り事の調査を始めました。その中で、車がなくて買い物にも出歩けなくなったおじいちゃん、おばあちゃんが大勢いることを知ります。

そもそも、うきは市は福岡のすみっこ、「陸の孤島」と揶揄できるほど田舎で、高齢化問題もかなり深刻なんです。20年後には人口のほぼ半分が高齢者になると予測されており、「超高齢化社会の先進地方都市」と呼ばれています。

うきは市の現状を知った大熊さんは、お年寄りの無料送迎サービス「ジーバー」を始めました。買い物や病院だけではなく、友達の家への送迎まで幅広くお手伝い。たちまち評判が広がり、お年寄りに引っ張りだこのサービスとなります。

ジーバーをやっていく中で、「昔、近所に住んでいた2人の少女が、60年の月日を経て再会した」というドラマも生まれました!ばあちゃんたちからもすごい感謝されて、「やってて良かった」と思いましたね。今はコロナでサービスを一旦ストップしていますが、お金と時間が続く限りやっていきたいです。

おばあちゃんの生活の困窮と孤立を救う

ジーバーの取り組みの中で、「買い物に行きたいけど行けない」「生活に困っている」というたくさんのお年寄りを目の当たりにした大熊さんは、「生活の困窮と孤立を救いたい」と決意します。しかし、ただ手を差し伸べるだけではなく、「おばあちゃんたちが活躍できる場所」が必要であると気づきます。

ばあちゃんたちによくよく話を聞くと、「年金に加えて月に2~3万円あれば暮らせる」という声が多かったんですね。もっと実態を知りたくて、身体が元気な75歳以上のばあちゃんたち300人に調査したら、6人に1人が「働きたい」と回答。個人的には「働きたいばあちゃんが多いんだな」と感じました。

「月に2〜3万円の収入があれば良い」「働きたいおばあちゃんが多い」という事実は明らかになりましたが、75歳以上のおばあちゃんが働く場所は全国的に見てもほぼゼロです。

「良い方法はないだろうか」と考えるうちに、デザイン事務所を経営していた経験からあることを思いつきます。

若い人を1人採用すると、月20万円くらいかかります。「それって、ばあちゃん10人を1人2万円で雇うことと一緒だな」とシンプルな発想から問題が解決していきました。ばあちゃんを雇って、「保護よりも機会を作る」「協力して働く」ことをやっていこうと考えたのです。

こうして、おばあちゃんたちが働く会社を設立した大熊さん。具体的には、「ばあちゃんそれぞれの特性を活かした、価値の高い商品・サービスを生み出す会社」です。下請けではなく、あくまでおばあちゃんが主役の会社を目指すと決めたそうです。

おばあちゃん主体で回る会社

おばあちゃんたちがやり甲斐を感じて働けるように、うきはの宝では独自のビジネスモデルを構築しています。

(上の画像が)うちの会社の仕組みです。上4人が75歳以上のばあちゃんで、真ん中のばあちゃんが75歳以下の「ばあちゃんジュニア」。そして、一番下の若者は、うきはの宝の職員で、マネージャーとしてサポートしています。皆さんお分かりだと思いますが、ジャニーズJr.方式です(笑)

おばあちゃん同士が仕事を教え合って、コミュニケーションを取りながら業務を進めていく仕組みは福岡県でも大きく評価されており、「福岡よかとこビジネスプランコンテスト2019」で優勝した経験も。「自分がいなくなった後もおばあちゃんたちがやり甲斐を持って働けるように」という大熊さんの想いが多くの方に認められいる証拠です。

おばあちゃん同士での揉め事もあるそうですが、状況に応じて対応し、働きやすい環境作りに努めています。うきはの宝は、地域のおばあちゃんたちにとってかけがえのない存在となっています。

ばあちゃんたちに給料を日当で渡しているんですが、その場では全然喜ばないんですよ。不思議に思っていたんですが、近所の人から、「大熊くんのところで働いているおばあちゃんたち、とても喜んでたよ!」と聞きました。「働いて稼ぐ」ことがばあちゃんたちへの良い刺激になってるのかもしれませんね。高齢化はどんどん進みますが、1人でも多くのばあちゃんが生きがいを持って働ける地域・社会を作っていきたいと思います!

Q&A

取り組みに関するお話を伺った後、参加者を代表してファシリテーター・佐々木から質問させていただきました。

佐々木:働いた前と後でおばあちゃんたちに変化はありましたか?

 

大熊さん:80代にもなると足腰悪いばあちゃんが多いけど、働く時は杖を投げ捨てて元気になるんですよ。働くことで活き活きする人って結構多いんです。人間って誰かのために動き出すと力が出てくる。それが幸せなんですよ。

 

佐々木:全国的に高齢者の「年金だけだと生活できない」問題が出てくると思いますが、どういう視点を持つべきでしょうか。

 

大熊さん:「いくらあったら足りる」ではなくて、「活躍できる場を作る」方向に考えを変えたほうが良いと思います。今って、じいちゃんばあちゃんたちの居場所が少ないんですよ。だから病院に集まったりする。生きがいを感じられる場を作る必要がありますね。

 

佐々木:なぜ、「ばあちゃん」にこだわるのでしょうか?じいちゃんの仕事はどうでしょうか?

 

大熊さん:じいちゃんを外したい訳ではないですが、特性の違いなのか、じいちゃんたちは乗ってこないんです。やりたくないことをやらせるのは違うので、ばあちゃんたちの会社でうまくいったら、じいちゃんたちの会社を作るって宣言しています。マネジメントをじいちゃんに頼めないかなと考えています。

 

佐々木:基本的には介護認定されていない方が対象なのでしょうか?また、安全面で気をつけていることがあれば教えてください。

 

大熊さん:介護認定を受けてない方が基本です。事故は今のところゼロです。座りながら作業してもらったり、今はコロナ対策にも充分配慮しています。

 

佐々木:おばあちゃんたちとどんな関係性を築いていますか?

 

大熊さん:社長と社員というより、かなりフランクな関係ですね。「足が痛い」「段差をどうにかしろ」って、結構ばあちゃんに怒られています(笑)

 

佐々木:35年後に大熊さんご自身が75歳になられますが、日本はどうなっていると思いますか?

 

大熊さん:びっくりされるかもしれませんが、うきはの宝の「宝」はばあちゃんたちじゃなくて、子どもだと思っています。「子どもたちのために、じいちゃんばあちゃんたちも働こうぜ!」「世代間で争っている場合じゃないよ!」って。多世代で協力し合えば色んな問題が解決できると思うんですよ。お年寄りが適度に働くと地域にも関われるし、稼いだらお金も使うし、経済も回る。世代間で抗争を煽るような風潮を感じますが、皆で協力し合える社会になっていてほしいですね。

 

グループダイアログ

イベント終盤では参加者が「自分の事業所で活かせそうなこと」「共感したこと・印象に残ったこと」を共有しました。その一部を紹介します。


元気なおばあちゃんがたくさんいるなら、働く場作りをどんどん進めた方が良いと思います。収入が増え、生活が安定する方も多くなるでしょう。お年寄りがお金を稼げる場所はまだまだ少ないので、制度も含めて整備していく必要があると思いました。



おじいちゃん、おばあちゃんはもっと豊かに生活できそうと考えました。地方だとお年寄り同志の繋がりが強いので、働く場所が活性化しやすそうだな、と。都市圏に住むおじいちゃん、おばあちゃんだと、少し環境が違うので働く場作りは難しいかもしれません。でも、オンラインでの趣味講座とか食事会とかを開催して、全国のお年寄りと繋がれば何か発展の可能性がありそうだと思いました。

 

まとめ

うきはの宝株式会社の取り組みや想いをうかがいました。

「お年寄りは動くと危ない」「年金暮らしで贅沢なんてできない」というネガティブな理由によって、お年寄りは静かな暮らしを余儀なくされているのではないでしょうか。しかし、うきはの宝で多くのおばあちゃんたちが、自発的に「働きたい!」と思い、仕事をしているのを考えると、「動くと危ない」も「贅沢できない」も私たちの思い込みなのかもしれません。

うきは市だけではなく、日本全国に元気なお年寄りはたくさんいらっしゃいます。超高齢社会において、世代を超えて共に生きることを意識していきたいですね。

ゲスト紹介

うきはの宝株式会社 代表取締役 大熊 充

1980 年福岡県うきは市生まれ。デザイナー。 バイク関連業界に従事したが、20 代でバイク事故を起こし約 4 年の入院生活を送る。 長期間に及ぶ入院の中で、おばあちゃんたちに励まされながら社会復帰を果たす。 退院後、2014 年 1 月未経験ながらデザイン事務所を起業する。 起業して以降、故郷であるうきは市という農村で事業を営むも都会の仕事を中心に受けていた。 事業所在地であり暮らす地域、うきはのことうきはの人たちに携わることがないことに このままで良いのかと、違和感やもどかしさを感じる。 高齢化、少子化、人口減で疲弊する故郷うきはの地域課題を解決したいとデザイン事務所として 間接的にではなく、直接的な問題解決をしたいと実業に乗り出す。入院生活から社会復帰の キッカケを与えてくれた、おばあちゃんたちに恩返し、頼られる存在になりたいと 2019 年 10 月にばあちゃんたちと共に働く会社、うきはの宝株式会社を設立。

イベント概要

日時:2020年12月12日(土)18:00~19:15

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