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不動産業界の常識を壊す!高齢になっても好きに家を選び、豊かな暮らしを実現させるために必要なこととは(KAIGO LEADERS FORUM 2019イベントレポート⑤)

OTHERS REPORT 東京 KLF2019

イベントレポート⑤『いくつになっても豊かな暮らし』
登壇:山本 遼

KAIGO LEADERS FORUM 2019イベントレポート第5弾は、前回に引きつづき、新しい時代をつくるU35KAIGO LEADERSのピッチを1人ずつ紹介します。3人めは、R65不動産(株式会社R65)代表取締役社長 山本 遼さん です。

はじめに 山本遼さんとは?

 愛媛大学卒業後、愛媛県の不動産会社に就職、転勤のため上京。
東京でお会いした80代女性との出会いをきっかけに、高齢期の賃貸住宅の問題に直面。

25歳の時に高齢者の賃貸問題を解決したいとの思いからR65不動産を設立。
R65不動産を立ち上げたのは、小さい頃見たかっこいい祖母の背中が、きっかけでした。
私の祖母は亡くなる2年前まで、自分の薬局で働き、高齢者、と呼ばれる年齢でも、自分らしく自立した暮らしを送っていました。そんな祖母の、自分らしい暮らしをいつまでも続けている様に、いつしか憧れを抱き、R65不動産を始めました。

 

“これで、不動産会社5軒めです”

R65不動産とは、一言で言えば、65歳以上の方に向け賃貸物件を提供する不動産会社です。

もともと僕は、愛媛県の不動産会社で働いていて、入社1年めで売り上げ1位になりました。成果を認められたため、東京の支店に行くことになりました。

その、とても調子に乗っていた時に、ある1人のお客様との出会いがありました。

お客様は80代の女性でした。

80代女性に対して、「どうせ大家さんに断られるだろう。」とか、「本人も決めるまでに時間がかかるだろう。」と、当時の自分は認識していました。

先輩からは、「売り上げの良さは効率の良さから来るよ。」と教わってきました。
先輩の意図とは違ったかもしれませんが、僕は、その教えから、「効率の悪いお客様は断ろう。」という発想を持っていたので、80代の女性が来店されたら、すぐに断ろうと思いました。

しかし、そのお客様が最初に発した言葉にびっくりしました。

 これで、不動産会社5軒めです。ほとんど、門前払いでした。

その言葉を受けて、さすがに断ることができず、仕方なく探すことにしました。
部屋が見つかるまで200件不動産会社や大家さんに電話しました。

どこも言うことは全部同じでした。

いやー、うちには取り扱いないですね。他をあたってください。

これが不動産会社の常識でした。

さらに、ショックだったことがあります。
こちらは、「高齢者は決断に時間がかかる。」と認識していましたが、そのお客様は、テレビを担いで歩いちゃうくらい、とても元気だったんです。

その時、自分の将来とか、親の将来について考えました。

元気なまま歳を重ねても、住まいが無いかもしれない。

この危機感から、取り組みはじめたのが、「R65不動産 いくつになっても豊かな暮らし」です。

 

なぜ高齢者だと貸しにくいのか

「なぜ、高齢者だと貸しにくいか。」の理由を説明します。
簡単に言うと、若い人と比べてリスクが高いからです。

一番のリスクは孤独死です。亡くなった結果、物件の価値が下がります。
そして、「他の人が亡くなった部屋なんて嫌だよ。」ということで、募集に時間がかかるようになる。
結果、入居者を選べなくなり、管理が大変になる。

大家さんが、このように認識すると、不動産会社が問い合わせをしても断ります。
断られ続けると、不動産会社は、「大家さんに言ってもどうせ断られる。」と学習します。
そして、「高齢のお客様は、効率が悪く、売り上げに繋がらないので門前払いしよう。」という考えに至ってしまいます。

 

 一方で、賃貸を借りる65歳以上は約600万人いると言われています。

 高齢者世帯に限定すると、6人に1人が賃貸を借りていて、一人暮らしの世帯だと、3人に1人が賃貸を借りているという現状はあります。
そういった現状はあるのに、なかなか高齢者が借りにくくなっているというわけです。

R65不動産が取り組んでいること

 R65不動産が取り組んでいることは、3つです。

 ①リスクを減らす

 ②事故物件の定義

 ③貸してくれる大家さんを増やす です。

 

①リスクを減らす

まず、「リスクを減らす」ための取組を説明します。

・物件価値が下がるのであれば、保険をかける。

・募集に時間やお金がかかるのであれば、募集サイトをつくる。

・入居者の健康状態を把握し、緊急時対応をはっきりさせる。

管理が大変ということに対しては、入居者を見守る仕組みづくりをする。
行政、薬剤師、新聞社やメーカー等と手を組む。
そうすることで、「本当は貸したいんだけど、孤独死が怖い。」と思っている、管理会社を何とかしようと働きかけています。

 ※今までの見守りの課題解決へ

見守り機器は色々なタイプのものが出ています。

今までの見守りの課題は、

月額(初回)コストが高い

家賃は都内でも5万から8万です。そこに、見守りの機器(例:月5000円のもの)を導入すると、大家さんの売り上げはほとんど無くなってしまいます。不動産会社もそこに厳しさを感じています。

大家の取り外しが大変

壁にとりつけるタイプは、大家さんが大変です。

入居者さんに嫌がられる

電話での見守りといったサービスもありますが、「生活を見張られるのは嫌だ。」といった声が挙がっています。

そういった声を受けて、

・新聞配達をして、新聞がたまっていないかを確認。

・電力流量の流れをみる。

・NECと提携して見守り付照明器具を発売し、照明のON・OFFをみる。

といった、見守りに力を入れています。もちろん、本人の同意を得ています。
見守りで大事なのは、生活動線を邪魔しないということです。
今後は、人とのつながりで見守りができるようにすることに挑戦したいです。

 

②事故物件の定義

「孤独死=事故物件」みたいな話しは結構あるのですが、そもそも事故物件の定義は何でしょうか。
他殺・自殺は、事故になります。しかし、不動産業界に病死の定義がないのです。事故物件は定義化できていないです。

亡くなられた状況によりますが、「病死の場合は通告していない」不動産会社は、全体の約半分くらいと言われています。

僕個人の意見としては、亡くなられた人が住んでいたとしても、自然死だとしたら、きちんと不動産屋さんが、どういう状況だったのかということを最低限伝えてくれるのなら良いのかなと思っています。

ポックリ物件.com

最近、自然死のあった賃貸物件でもニーズがあるのかを確かめています。

社会実験的に試みているのが、ポックリ物件.com 前入居者が、最期まで住みたかった部屋、集めましたというプロジェクトです。

これを立ち上げたら、Twitterでバズって、お問い合わせが月100件来ました。

ただ、名前が良くなかったのか、物件がまだ3つしか無いんですね。

このような取組みを通して、「自然死=事故じゃない」というところを頑張って広げていき、死後長期発見されないということを防いでいこうとしています。

民間の賃貸住宅だと、大体発見されるのに残念ながら2週間かかります。
ひどいケースだと、家賃が入らないということで気づくので、40日くらい発見に時間がかかったりすることもあります。

40日発見されないことは、入居者にとっても本位でないです。
そうなって、迷惑をかけたくないからと、見守りをお願いしたいと仰る高齢のお客様がすごく多いです。

大家さんも、「ここで、ぽっくり亡くなってもいいですよ。亡くなられたら、ポックリ物件.comに掲載されるだけなんで。」と言ってくれるようになったら、社会は変わるんじゃないかと思っています。

 ③貸してくれる大家さんを増やす

ありがたいことに、現在までの取引大家さんは広告無し、営業無しで、500名前後に増えてきました。

500名のなかにはこんな大家さんがいます。

・介護や医療の仕事をずっとやっていて、おじいちゃんおばあちゃんのために何かしたいと思っていた大家さん

・親が大地主だったこともあり、地域貢献のために「高齢者に家を貸したい」と、元々思っていたが、不動産会社に止められていた大家さん

そんな大家さんたちがどんどん集まっています。 

高齢者は若い人の3倍くらい物件を決めるのに時間がかかります。

物件を決めるのはスピードが勝負なので、若い人はLINE等を活用して、申し込みができたりするところを、高齢者は全て郵送で対応しているので、先に他の人に物件を決められてしまうといったことが課題になっています。

少しでも解決できるよう、他の不動産会社でもできるようにしようということで、パートナーとして20社ほどが一緒にやろうと手を挙げてくれています。日本全国でやれるようになればいいなと思っています。

R65不動産がなくなる未来」が理想

僕たちの最終的な理想像は、「R65不動産がなくなる未来」です。

・どこの不動産会社でも、高齢者を受け入れられる。

・自立した高齢者は、好きな住まいを選ぶことができる。
極端な話、らせん階段の物件でも、「危ないから貸さない。」とかではなく、本人が良ければ貸せるようになると、いいと思います。

 ・自分で選んだ家に住み、豊かな暮らしをするかっこいい大人が溢れる社会になれば良いなと思っています。

僕たち、R65不動産は、「いくつになっても豊かな暮らし」の実現に向け、日々奔走しています。

業界の常識をそのままにせず、いかに常識を変えていくかに挑戦する姿勢に、参加者は刺激を受けました。

「どうせ、変わらない。」と思っていることは、本当に変わらないことなのでしょうか。

山本さんのように少しずつ変化を起こしていくことで、変わっていきます。

「自分も一歩を踏み出したい。」そんな思いを抱けるピッチでした。

 

次回のレポートは、新しい時代をつくるU35KAIGO LEADERSのピッチ4人めを紹介します。4人めは、株式会社ウェルモ代表取締役CEO鹿野 佑介さんです。

KAIGO LEADERS FORUM 2019写真撮影

近藤 浩紀/Hiroki Kondo(Hiroki Kondo Photography)


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