年齢や障がいを理由に、旅をあきらめない。LET’S EXPOが敬老の日に届ける「誰もが行ける万博」
\ 敬老の日は万博へ!KAIGO LEADERS特別枠・100組200名ご招待 /
9月15日「敬老の日」、LET’S EXPOでは、移動が難しい高齢者や障がいのある方を大阪・関西万博に無料でご招待するイベントを開催します。
今回、介護・福祉現場で働く皆さんが「あきめていた人」と一緒に万博に行っていただける、100組200名分のKAIGO LEADERS特別招待枠をご用意いただきました。
申込期間は8月26日(火)まで。
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大阪・夢洲(ゆめしま)を舞台に開催されている「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」というコンセプトのもと、国内20館・海外162館、合計182の魅力あふれるパビリオンが軒を連ねています。
すでに足を運んだ方もいれば、「これから行ってみたい」と思っている方もいるかもしれません。しかしその一方で、障がいのある方や高齢の方、そしてそのご家族の中には、移動や費用、介助の不安から「行ってみたい気持ちはあったけれど、あきらめた」という方も少なくありません。
そんな“行きたくても行けない”思いに応えるために生まれたのが、ユニバーサルツーリズムプロジェクト「LET’S EXPO(レッツエキスポ)」です。コンセプトは、「行こう。あきらめていた人と。」。LET’S EXPOは、会場での手厚いサポートに加え、遠隔からでも万博を楽しめる体験を提供し、誰もが万博に参加できる社会の実現を今まさに形にしています。
今回は、このLET’S EXPOの発起人でありプロデューサーを務める東京トラベルパートナーズ株式会社 代表取締役・栗原茂行さん、そしてプロジェクトパートナーとして関わるKAIGO LEADERSの発起人で、株式会社Blanket 代表取締役の秋本可愛のお二人に、プロジェクトが生まれた背景や想い、そして9月15日の敬老の日に開催されるイベントについてお話を伺いました。
バーチャルもリアルも。“行きたい”を叶えるLET’S EXPO
出典:LET’S EXPO
LET’S EXPOでは、誰もが楽しめる万博の実現を目指し、大きく3つのサービスを展開しています。まず、現地で提供されるのが「万博会場内サポート」。介助が必要な方向けに、介護有資格者と研修受講者の3名以上の体制で、車いすの移動や視覚障がい者の誘導サポートを行います。
そして、自宅や施設などから楽しめる「バーチャル体験サポート」と「オンラインツアー配信視聴」の2つ。「バーチャル体験サポート」は、実際の会場映像とバーチャル万博アプリを組み合わせることで、自宅や施設にいながら万博会場を体験することができます。
さらに、プログラムには1970年に開催された大阪万博を振り返る「1970年回想体験」も組み込まれており、過去の記憶を呼び起こすことで、脳トレ効果や主観的幸福感の向上も期待できます。そして「オンラインツアーの配信視聴」では旅介TVを通じて、パビリオンの様子を誰でも無料で視聴することが可能です。
行けない悔しさから、みんなでつくる喜びへ。LET’S EXPOの原点
LET’S EXPOの構想が始まったのは万博開催の約2年前、2023年8月のこと。栗原さんが発案しました。
栗原さん:私が代表を務める東京トラベルパートナーズでは、「一生涯、旅を楽しめる社会」を目指し、高齢者向けの福祉車両を使ったリアルツアーや、2018年からはバーチャルツアー事業にも取り組んできました。2025年に、55年ぶりとなる大阪・関西万博が開催されることが決まり、旅行業界全体が盛り上がると感じたんです。
万博と当社の事業を結びつけて考えたとき、まず浮かんだのが、オンラインとバーチャルでの体験。そして、リアルツアー事業で培った知見を活かして、会場へ行ける方へのサポートも同時に実現できるのではないか、と構想が広がっていき、一般社団法人関西イノベーションセンター(MUIC Kansai)、住友電気工業株式会社の3社で一緒に進めてきました。
この構想を知り、早い段階からパートナーとして参画したのが、介護・福祉に関する多様な事業を展開する株式会社Blanketの秋本です。
秋本:栗原さんから「介護や介助が必要な人も万博を楽しめる取り組みを考えている」と連絡をいただいたのが、2023年10月のこと。当時は、LET’S EXPOという名前もコンセプトもまだありませんでした。しかし、万博のような国際的イベントが日本で行われることは、日本の介護・福祉のあり方を発信できる大きなチャンスだと感じたんです。
日本は点字ブロックやスロープなど、ハード面のバリアフリー化はかなり進んでいますが、一方で心理的なハードルはまだまだ高いまま。栗原さんの熱い想いに共感し、パートナーとしてご一緒することになりました。
LET’S EXPOがプロジェクト立ち上げに際して行った「身体的不自由を抱える高齢者の万博参加意向調査」では、回答があった全国の60歳以上の男女471名のうち、外出を諦めた経験がある人が90.9%にのぼります。
出典:LET’S EXPO
中でも最も多かった理由は「外出先までの移動が難しい」(59.7%)というものでした。また、86.4%が「万博に行きたい」と回答した一方で、98.1%が「実際には行けないと思う」と答えるなど、「興味はあるのに行けない」現実が浮かび上がりました。
こうした現状を踏まえ、LET’S EXPOの実現に向けて具体的な活動が動き出しました。その一つが4回にわたって開催された「TEAM EXPO 2025」のテーマセッションです。高齢者や障がいのある方も万博を楽しめるようにするには何が必要か。その問いを軸に、さまざまな立場の人々による議論が交わされました。
秋本:バリアフリーツアーを企画・主催している方や、実際に車椅子を利用されている当事者の方などにも登壇いただき、どういうサポートがあれば「行ってみたい」「行けそうだ」と思ってもらえるのか。そうしたリアルな声を集めて、LET’S EXPOの具体像をつくっていきました。
また、このテーマセッションを通じて関係者の輪が広がったことも大きかったと私は思っています。参加者の中には、後にボランティア登録をしてくれた方もいて、LET’S EXPOが本当に誰もが楽しめる万博を実現するのではという期待感が高まっていきましたね。
こうした動きとともに、プロジェクトの中核となるコンセプト「行こう。あきらめていた人と。」が誕生。幾度となく関係各所と調整を重ね、ついにLET’S EXPOは、万博の公式事業としての歩みを始めました。
「行けるかも」が「行けた!」に。想定外から生まれた気づきと出会い
万博が開幕してから約4ヶ月。LET’S EXPOを通じて多くの利用者や支援者に出会うなかで、「本当にいろんな景色を見ました」と栗原さんは振り返ります。
栗原さん:たとえば、「バーチャル体験サポート」では、学生ボランティアが介護施設などを訪問し、バーチャル万博や会場映像の視聴体験を届けています。そのなかでも、印象的だったのが「回想体験」です。
これは、55年前に開催された大阪万博を、当時の新聞記事や話題のトピックとともに振り返っていただくプログラムなのですが、ある90歳くらいの利用者さんが、「55年前の万博で、建築家の黒川紀章さんと一緒に施設設計に携わった」と写真を見せながら生き生きと語ってくださって。とても記憶が鮮明で、私も学生ボランティアも驚きました。
ほかにも、「三島由紀夫が亡くなった年でもあったね。久々に思い出したわ」と話してくださる方がいたり。そういう姿を見て、万博という大きなイベントが、世代を超えて人と人をつなぐきっかけになる場面を目の当たりにしたのは、うれしい瞬間でした。
現地での「万博会場内サポート」においても、心に残るエピソードがいくつもあったといいます。
栗原さん:1970年の万博に4回も行ったという方がいらっしゃったのですが、「今はもう足腰が弱っているから、2025年の万博には行けないと思っていた」と話されていたところ、LET’S EXPOのサポートを利用して、なんともう6回来場されているんですよ!本人もとても喜んでくださり、私たちにとっても励みになりました。
さらに「一つ、新しい発見もあったんです」と栗原さんは続けます。当初、LET’S EXPOでは高齢者や車いすユーザーなど、身体的な介助が必要な方を主な対象と考えていましたが、万博が始まってみると視覚障がいのある方々の利用や反響が寄せられ、想定以上のニーズがあることが見えてきました。
栗原さん:視覚に障がいはあっても体力はあるという方が多く、「サポートがあれば行ってみたい」と思ってくださる方が想像以上にいらっしゃいました。「LET’S EXPOのことを友人に聞いて来ました」という方もいて、よく聞くと視覚に障がいのある方同士でLET’S EXPOの口コミが広がっていたんですね。そのとき初めて、「視覚で情報を得ることが難しい方にとって、誰から聞いたかがとても重要なのだ」と気づかされました。
この経験を通して、栗原さんは「すべてをデジタル化することが、必ずしも良いことではない」とも感じたといいます。
栗原さん:今は、チケットや予約が電子化され、電光掲示板などの案内も増えました。もちろん便利ではあるのですが、視覚に障がいがある方にとっては、それがかえって情報を受け取りにくくしていることもあります。
たとえば、駅から会場までの点字ブロックを使った導線、視覚以外の情報を活かせる環境づくり。そして、本人ではなく支援者が代理で予約を行うケースもあるので、そこに対する配慮も求められます。マイノリティだからと見過ごすのではなく、障がいがあっても旅行や外出に意欲のある方に向けたサポートは、今後ますます重要になると実感しています。
「誰かの“行きたい”を支える」楽しむことを、あきらめないで
「LET’S EXPO」は、現地での「万博会場内サポート」から、自宅や施設での「バーチャル体験サポート」まで、さまざまな形で来場者をサポートしています。その取り組みを支えているのが、多くのボランティアスタッフの存在です。
バーチャル体験を届ける学生ボランティアをはじめ、「万博会場内サポート」には、現在700人を超えるボランティアスタッフが関わっています。立ち上げ当初のイベント運営をしていた秋本が話していたように、「関係者や仲間を増やせた」ことが今の活動につながっており、栗原さんも「多くの仲間のおかげで運営が成り立っています」と語ります。
栗原さん:ボランティアスタッフのみなさんのホスピタリティには、本当に頭が上がりません。実は「万博会場内サポート」の現場活動だけでなく、僕たち運営側のサポートまでしてくださっていて、LET’S EXPOがうまく稼働できている要因の大半は、ボランティアスタッフのみなさんのおかげだと思っています。
スタッフの顔ぶれは多彩で、学生や会社員、主婦、定年後のアクティブシニアなど幅広い年代が関わっています。また、約半数が介護福祉士などの有資格者や、医療・福祉分野での実務経験を持つ方たち。さらに、2021年の東京オリンピックでボランティア経験のある方も多く、現場での結束力の高さも特徴です。
そうしたボランティアスタッフたちの力に支えられながら、LET’S EXPOが社会に投げかける問いも、着実に広がりつつあります。秋本はこのプロジェクトの意義について、「年齢を重ねても楽しめる、という意識変容のきっかけになってほしい」と語ります。
秋本:旅行に限らず、障がいのある方や年齢を重ねた方が何かをしようとすると、「誰かに迷惑をかけてしまうかも」と不安に思ったり、「体力的に楽しめる自信がない」と感じたりしてしまうことがあります。本人だけじゃなく、家族や介護職など支援する側が「無理させたくない」と止めてしまうケースもあるかもしれません。
そのように、やりたいことを諦めてしまう現実がまだまだあります。だからこそ、「行こう。あきらめていた人と。」というコンセプトには、全部が詰まってるなと私は思っていて。障がいがあっても、年を重ねても、やりたいことを叶えられる社会があることは、未来への希望になると思うんです。
栗原:いざスタートしてみたら、乗り越えなければいけない壁もたくさんありましたが、それでも、「LET’S EXPOのおかげで万博に行けた」と喜んでくれる方がいることが、僕は本当にうれしいんです。最初は「こんなことできたらいいな」というある意味、自己満足から始まったところもありました。ですが当事者の方々や、支援する方、ボランティアスタッフの皆さんが、それぞれの立場で万博を楽しんでいる姿を見ると、「やってよかった」という一言に尽きますね。
“勇気の一歩”がつながる未来「行こう。あきらめていた人と。」
そんなLET’S EXPOの集大成となるのが、2025年9月15日(月・祝)の「敬老の日プロジェクト」です。この日は、高齢者や障がいのある方、その同行者を含む1000人(ペアチケット500組)を万博に無料招待する特別イベントが予定されています。
栗原さん:9月15日は三連休の最終日にあたるのですが、実は万博としては意外と狙い目なんです。連休最終日なので帰路に着く方も多く、比較的会場は空いているんですね。この国際的なイベントで、どんな方であっても万博に参加できることを、高齢化が進む日本から世界へ発信できたら、きっと新しい価値が生まれるのではないかと思っています。
秋本:「敬老の日プロジェクト」をきっかけに、体力面や経済的な理由、あるいは「迷惑をかけるかもしれない」という気持ちから、万博に行くことを諦めていた方々に、もう一度「行く」「行ってみる」という選択肢を手に取ってもらえたらと企画しました。
このイベントで私が作りたいのは、“ちょっと勇気を出す瞬間”なんですよね。本人からでも、周囲からでもいい。「一緒に行ってみよう」と、諦めかけていた誰かを誘ってくれたらうれしいです。その小さな勇気が集まり、当日会場でみんなが万博を楽しむ姿が見られたら、きっと想像以上の景色になるような予感がします。
そして、LET’S EXPOの挑戦はここで終わりではありません。
栗原さん:10月13日の万博閉幕で終わりではなく、2027年には横浜で「GREEN×EXPO 2027(国際園芸博覧会)」も控えています。LET’S EXPOで得た学びを、次の博覧会へとつなげていきたいですし、日本から生まれたユニバーサルツーリズムの成功事例として、もっと広げていければと思っています。
「行こう。あきらめていた人と。」というシンプルで力強い言葉に込められた、LET’S EXPOの挑戦。その根底にあるのは、誰かの「楽しみたい」という思いに、社会全体でどう寄り添えるか、という問いかけでもあります。
「誰もが参加できる万博」をかたちにすることは、未来の社会のあり方を示す一つの道しるべになるかもしれません。LET’S EXPOが描く風景は、今この瞬間だけでなく、これからの共生社会へとつながっています。
プロフィール
栗原 茂行(くりはら しげゆき)
LET’S EXPOプロデューサー
東京トラベルパートナーズ株式会社 代表取締役
高齢者・障がい者向け旅行サービス「旅介」、介護施設向けオンラインツアーサービス「旅介」を運営。観光庁ユニバーサルツーリズム推進事業の事務局業務、2020国際スポーツ大会の車椅子観客輸送アクセシブルシャトルの運営リーダーなどに携わる。
・LET’S EXPO公式サイト:https://www.lets-expo.jp/
・Xアカウント:https://x.com/letsexpo
秋本 可愛(あきもと かあい)
株式会社Blanket 代表取締役
KAIGO LEADERS 発起人
平成2年生まれ。山口県出身。大学在学中の介護現場でのアルバイトをきっかけに課題意識を抱き、2013年卒業と同年に、株式会社Join for Kaigo(現、株式会社Blanket)を設立。日本最大級の介護に志を持つ若者のコミュニティ「KAIGO LEADERS」発起人。2017年東京都福祉人材対策推進機構の専門部会委員に就任。第11回ロハスデザイン大賞2016ヒト部門準大賞受賞。第10回若者力大賞受賞。「Asia Pacific Eldercare Innovation Awards 2021」INNOVATION OF THE YEAR – CAREGIVER MODEL 部門にて最優秀賞。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。2021年よりNHK中央放送番組審議会委員に就任。2022年株式会社土屋 社外取締役就任。同年より厚生労働省「介護のしごと魅力発信等事業:事業間連携等事業及び情報発信事業」企画委員就任。












