大学生が考えた「超幸せな高齢社会」をつくるためのアイディアをおじいちゃん、おばあちゃんにぶつけてみた。反応はいかに?!
「学生が介護に興味を持つためには、どうすればいいのだろう?」
現在日本は、現役世代2人で1人の高齢者を支える時代になっています。そして2035年に向けて85歳以上の世代が急速に増え、介護の需要も高まります。しかし成長産業にも関わらず、未来を担う若者世代の多くは介護に関心がありません。
そのような課題意識を持った1人の学生が立ち上げた株式会社Blanket(KAIGO LEADERS運営会社)とともに、私たち専修大学の学生5名で学生に介護に興味を持ってもらうためのイベントを企画しました!
実は、企画を運営した私たち学生も介護に全く興味がない状態から始まりました。大学の授業の一貫で「福祉に関係ない学生が介護・福祉に関心を持つための企画を考えてください!」というお題を与えられ、考える中でだんだんと介護に興味を持ち始めるようになりました。
介護に興味がなくても「お題」を与えられ、真剣に考える機会があれば、学生が介護に関心を持つことができるのではないかと考えました。そこで、11月1日に大学生向け「私たちでつくっていこう!超(幸せな)高齢社会 ~未来を描くアイディアワークショップ~」を開催しました!
このワークショップでは、
・自分に好きな分野から介護の問題を考えていただくこと
・初対面の方とグループを組んでもらい、そのグループでアイディアを考えていただくこと
・実際におじいちゃんおばあちゃんに聞いていだいてアイディアに対してコメントをいただくこと
などを盛り込み、「自分なりの介護」について大学生の皆さんに考えていただきました。
私たちで作っていこう!超幸せな高齢社会
ワークショップの流れを紹介したいと思います。初めに秋本さんから2040年における介護の問題や問題解決のための取り組みに関してお話を頂きました。
その後、秋本さんのお話の軸になっていた「一人暮らしの高齢者」、「在宅介護」、「人材不足」という課題から参加者を3つのチームに分けて活動を行いました。
自己紹介を兼ねたアイスブレイクの後、それぞれ与えられた上記の課題について話し合っていただきました。
まずはチームの全員で大きな模造紙に課題から連想される言葉を付箋に書き、貼り付けていきました。
(模造紙を使ったチームワークの様子)
運営側としてもアイディアの書き出しがうまくいくのか心配していましたが、いざ書き始めるとすらすらとアイディアが湧いてきました。参加者それぞれの経験や意見を話しながら作業を行っていました。
チーム全員の意見を参考にしつつ、次はシートを使って個人のアイディアに落とし込んでいく作業です。具体的には模造紙に書き出した単語同士の掛け算をして問題解決のためのアイディアを出しました。掛け算で出したアイディアの中から一番いいものを1つ選びます。
その後、別のシートを用いて選んだアイディアが「誰の」「どんな悩みを解決できるのか」など簡潔に記入を行いました!
(シートを使った個人ワークの様子)
その後チーム内でアイディアを発表し(ユニーク、ユーザーの満足度、与えられた問題をどう解決できるかの3つの観点から)各自15点の45点満点(発表者を除く)で総計点が最も高かったものをチームで1つ選びました。
(でてきたアイディア)
各チーム選んだアイディアをもとにユーザーの年齢層や背景悩んでいること、そして問題を解決するための企画案などを話し合って深掘りしていく作業を行いました。
アイディア発表
最後にチームで深掘りしたアイディアを全体に向けて発表しました。
ここでサプライズゲストのおじいちゃん、おばあちゃんの登場です!
今回はよりリアルなコメントを頂くために、運営メンバーの祖父母にご協力いただき、オンラインでイベントにコメンテーターとして参加して頂きました。
ここで孫にあたるメンバーより、お2人のご紹介です。
お一人目どいひろみさん、77歳。地元の介護施設でハーモニカを演奏したり、ダイビングをして魚の写真を撮ったりとても多趣味で毎日アクティブに生活しています。
もう一人は奥さんである、どいあきこさん。趣味はステンドグラスが作ることです。おばあちゃんの家には作業部屋があり、窓や卓上のランプはおばあちゃんの作品たちです。
2人とも仲が良く、祖父母家に親戚が集まる時間が私は大好きです。将来こんな生活をしたいと思わせてくれるような素敵な毎日を過ごしています。
zoom上でおじいちゃん、おばあちゃんにも発表をリアルタイムでお届けをし、コメントを頂きました。
各チームそれぞれ面白いアイディアを共有していて、聞いているおじいちゃんおばあちゃんもとても楽しそうでした!
おじいちゃんの反応はいかに?超幸せな高齢社会の実現のためのアイディア発表
Aチーム:ファミリートラベル
Aチームでは「在宅介護」の課題解決のアイディアとして「ファミリートラベル」というバリアフリー特化の旅行サービスを考えました。
ターゲットは、在宅介護をすることされることに疲れた家族や身体面に不安を持つおじいちゃんおばあちゃんです。サービスの内容の1つ目は、バリアフリーや移動手段の充実などが保証できる旅行内容であること。2つ目は、価格、場所、好みに訴求するバラエティさに富んでいること。3つ目は、家族との特別な日を祝うようなイベントを行うことがあげられました。このサービス内容により、身体面の不安を持っていても気にせず旅行を楽しむことができることや、家族との絆を再確認する機会の提供となること、そして家族の一生の思い出になる等を期待することができます。
おじいちゃんからのコメント:
Bチーム:おじじおばばの青春クラブ
Bチームでは、「一人暮らしの高齢者」問題を解決するためのアイディアとして「おじじおばばの青春クラブ」というYouTubeチャンネルのプロデュースを考えました。このアイディアのターゲットは70歳一人暮らしの男性で、定年退職して何か新しいことを始めたい、仲間を増やして学生時代を追体験したい、気持ちは永遠の18歳となっています。YouTubeの動画内容としては、アクティブな高齢者を集めて地域の宣伝や趣味です。これにより、動画を投稿する側は同じ趣味の人とつながることができ、視聴者側には高齢者や介護の偏見をなくすことなどが期待できます。
おじいちゃんおばあちゃんからのコメント:
Cチーム:出張! スケット力士
Cチームでは「人材不足」問題解決のアイディアとして、「出張!助っ人力士!」という、介護施設に現役力士さんがきて、介護施設の仕事の手伝いをするサービスを考えました。
このアイディアのターゲットは2人います。1人目は、相撲好きの高齢者です。介護が必要で直接相撲を見に行くことが難しく、また若い男性と関わってトキメキがほしいと思っている人を想定しています。そして、2人目のターゲットが女性介護スタッフです。毎日の力仕事と人手不足によって体力の限界を迎えています。
このサービスを提供することで、おじいちゃんおばあちゃんが非日常を感じ、介護施設での生活を楽しむことができると考えました。そして介護施設スタッフの方は、普段の力仕事を力士さんにお願いすることで、負担を軽減することができます。また、介護スタッフ、おじいちゃんおばあちゃんたちとのコミュニケーションで相撲が共通の話題になり、会話が増えると思いました。そして、介護と相撲のコラボをきっかけに介護と関わりを持とうと考えてくれる他の業界、職種が増えるのではないかと考えています。
おじいちゃんおばあちゃんからのコメント:
結果はいかに?福祉系以外の学生は介護に関心を持つことができたのか?
今回の参加者を対象としたワークショップのアンケートでは、5段階評価における満足度(平均)が4.9、参加者12人中9人が介護への関心が強まったという回答結果となりました。実際に参加いただいた方の声を紹介します。
①1日を通して思ったことは?(Aチーム なっちゃん)
②おじいちゃんおばあちゃんとやってみてどう思ったか?(Cチーム ののちゃん)
③介護への印象はどのように変わりましたか?(Bチーム あるりな)
おじいちゃん・おばあちゃんへのインタビュー
Q1、学生のワークショップに一緒に参加してみてどうだったか?
最近で、これほど待ち遠しいと思った出来事はありませんでした!このワークショップが始まるまでの時間はまるでデートの時のようにドキドキわくわくしていました!
スカイプも経験がないのに今時のオンラインで、それも孫の世代の若い人達とどんな話し合いが出来るのかと心配でした。しかし始まってみると、こちら側の感想が言いやすいように段取りよくまとめられていて安心しました。若い人達が、今現在心配されている高齢化社会について関心をもってくれていることが嬉しかったです。
Q2、おじいちゃんおばあちゃんとって新たな発見や気づきはあるか?
このイベントに参加するために、少し自分なりに介護について色々調べてみました。その際まず今後の介護、すなわち私達老夫婦が受ける介護はどうなるのかということが心配になりました。20年後まで私達はなんとか生き延びたいですが、大学生が40歳になる頃にどれ程介護で世話になるのか、またならないでさよならできるのかということが気になりました。学生の皆さんにお願いしたいことが1つだけあります。それは、いまある老人ホームを、実際に訪問して、そこのスタッフの方や入居しているおじいちゃんおばあちゃんと話をしてみて下さい。きっと介護とは何かということが更に深く分かってくると思います。参加させていただきありがとうございました。
私たち2人は、70代で色々なことを通り抜けて今は少し落ち着いていますが、学生さん達はこれから自分達の両親が迎えるであろう60代の生活を心配しているのかなと思いました。例えば健康相談、生活相談、趣味のサークル等の紹介、1日のスケジュールの決め方っといったような(50代、60代、70代などの年代別に)悩み事のカウンセリングをしてくれる制度があると嬉しいなと思いました。
最後に運営を終えて
1から企画を考え・実施することは初めての経験であり不安な部分が多かったです。
それだけに、参加者の方々が自分なりの介護の関わりについて考えている様子を見ることができてとても嬉しかったです。このイベントは参加頂いた方々のみならず私たちにとっても学ぶことが沢山ある貴重な経験になりました。またこの記事から、介護への関わり方には介護職に就くだけでなく、他分野との掛け合わせで生まれるものがあることを知って頂けたら嬉しいです。そしてこのことを心にとどめ、各々が「自分なりの介護への関わり方」を見つけるヒントとして頂けたら幸いです。
最後までお読み頂き本当にありがとうございました。
※映像制作:奈良祐也