活動内容 ACTIVITIES

介護技術で適切な「できる」を引き出す‐”生活の営み支援”の実践‐(株式会社NGU)

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オンラインツアー REPORT 全国 オンライン

「“生活の営み支援”って何?」とタイトルを見て思った方もいるかもしれません。

2021年11月27日に開催された「全国介護・福祉事業所オンラインツアーVol.3」では、「ひとりひとりの声を大切にした関係・生活づくりの実践」をテーマに2つの事業所にお話を伺いました。

タイトルにもある“生活の営み支援”について教えてくださったのは株式会社NGUの山出貴宏さん。4つの事業所を運営しながら、全国各地の事業所で「介護技術」や「認知症ケア」「じりつ支援」の講習やセミナー講師、事業所改善に入るなどされています

今回、山出さんからは、ご自身の事業所での取り組み事例をもとに、ひとりひとりと向き合う支援の実践についてお話いただきました。

株式会社NGUは「あきらめない心の応援団」

株式会社NGUは、Never Give Upの頭文字から取られていて、「あきらめない心を応援」という意味が込められています。

認知症になってしまうと、生活が閉ざされて、扉が閉じてきて、あきらめてしまうことがある。そうではなく「当事者の方、ご家族、介護職員や地域の方全体と、あきらめずにこれからの生活を一緒に歩ませて欲しい」との思いで株式会社NGUという名前がついています

株式会社NGUは、大切に日々の生活の支援を行うことで、利用者の方があきらめず自己実現へ向かう支援を行っています。その結果として要介護度の改善、さらにはご家族や地域の方との関係性の強化にもつながっています。

「潜在するもの」「言葉にできないもの」を引き出す支援

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山出さんの事業所では、福祉的な取り組みをいくつかされています。1つは、地域の公園でコロナウイルス感染拡大前には1年に1度行われていた「オレンジフェス」というお祭りです。このお祭りは模擬店などもありますが、プロレス団体を呼んで、事業所の職員や相談員がリングで試合を行うプロレスが特徴的です。

きっかけは、認知症をお持ちの利用者さんの「プロレスが好きだ!」という言葉でした。短期記憶が維持できないと言われている方でしたが、試合後にこんなやり取りがあったと言います。

私たちの試合を泣きながら見てくれて。1日挟んだ次のご利用日に「怪我なかった?」って会った瞬間に言ってもらえたんですよ。(短期記憶が維持できないとされていても)潜在しているものってやっぱりいっぱいあるんだなと。じゃあその福祉の取り組みをどう介護に持っていこうかな?」というところを考えていきました。その人の言葉にできない声をどう引き出し、すくい上げていくかということになるのかなと思っています

言葉にできない声を引き出した事例として、ほかにも紹介いただきました。

事業所で参加している地域のお祭りで使う灯篭は、利用者の方が灯篭の竹を切ったり焼いたり、絵付けもしたりしています。特に絵を描くのは、ほぼ1人の利用者さんがやっているのだそうです。なぜこの方が絵を担当することになったのでしょうか?

みんなで公園に行く時に、よく石に絵を描いている人がいました。その方は絵を描く人にいつも、何か描きやすそうな石を探しては持って行ってあげていたんです。私は「なんでこんな行動するのかな?」とずっと考えていて、たまたまマジックがあったので、その方のそばに置いてみたんです。すると自ら絵を描き始めたので、「あっ本当は絵を描きたかったんだ」ということに気づきました。

このエピソードからも、日常の行動から、利用者さんの潜在する能力や想いを引き出していることがよくわかります。山出さんは、支援のあり方について考えるヒントとして、次のようにも語ります。

利用者さんの中には、もともとできていたことも、きっかけがないからできなかったということがある。じゃあ私たちがその「できる」きっかけづくりをしようと、環境を作っていっています。多分「やりたい!」という利用者さんのアクションは、どこかに必ず出ているんですね。

活動に「ケア」を取り入れ、生活の営みを支援する

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有償ボランティアとして行っている門松づくりは、米作りから収穫、出た藁で縄を結う、という形で年間を通した活動になっています。

この門松づくりも、きっかけは「ああ、門松いっぱい作ったなあ」という利用者の方の一言でした。そこから門松づくりが始まり、事業所の前に出していたものを見た企業の方から依頼をいただくようになり、有償ボランティアとして発展していきました。

米の収穫や縄を結う工程も利用者の方が行っています。この活動に「介護技術」の考えを組み込んだ支援を行っている点が山出さんの事業所の特徴です。

(かま)を持って、どういう体勢で使うのか。認知症をお持ちでも、右手で鎌を持って左足を前に、斜交いに構えてを使っている状態であれば、私たちは何も言わずに「じゃあお願いします」となります。けれど、間違った姿勢で使っている人がいたら介入をして「こっちの方が安全ですよ」と。やりたいと思っていることを止めるのではなく、「安全に、かつ、できやすいことを伝えていく」ということをしています

ただし、山出さんは「できるからどんどんやってもらおう」というだけの支援については疑問を投げかけています。これは、できることをやってもらうことによって、過用症候群、誤用症候群を引き起こして逆に廃用に繋がってしまう危険性が高いからだと言います

縄を結うことで握力が維持されるため、自分でお箸を持って食事をし続けられる、また自分で荷物を持ってお出かけし続けられるという側面もあります。ただし、脳梗塞の既往歴がある方に、「できるからどんどんやってもらう」という支援をすると、逆に重度化してしまうことが実際にあると言います。

うちは「じりつ支援」の中に、過用・誤用の予防を取り入れることで、できていることを1分1秒でも長く続けてもらう“生活の営み支援”というものをしています。
「できるんだからやってもらおう」という支援だけだと、本人さんの声と真逆にいくことが多くあると思っています

脳梗塞の既往歴がある方が生活動作の中で、過用・誤用のため「拘縮」が進む事例として、包丁で野菜を切る動作についても解説をいただきました。

脳梗塞の既往歴がある方には、できるとしてもあえてゆっくりと切ってもらうと言います。

勢いよく切っていくと、野菜を抑えている側の指が、グーっと丸まっていっちゃうんですね。これを過用症候群といいます。元気な非麻痺側(包丁を持つ手)を一生懸命、努力性を高めて使うと、麻痺側(野菜を抑える手)の緊張が高まって拘縮に移行していくことがあるので、それはやめてもらっています。でも「料理はしたい」という気持ちは尊重したいので、努力性が低い動作でやってもらって自己実現をしてもらう、という支援をしています。

「持っている力(現有・潜在)を適切に発揮してもらう」ことが介護の在り方なのではないかと、山出さんは提言します。これを実践することで、利用者の方にも変化が見られるそうです。

それをやると、本人さんの声が変わってくる。「あきらめていた」のが、「やってみたいな」へと。

言葉にできない声を引き出す介護技術

山出さんは支援をするうえで「介護技術」を重要視しています。座っている姿勢から一生懸命立ち上がろうとする人に対しても、介助するのではなく、なぜ立てないのか介護技術の知識を踏まえて、座位姿勢から見直すとともに体の使い方を伝えていきます。食事介助についても、食べる動作ではなく、適切な座位姿勢から提供していきます。

これにより、1人で立てなかった人が立てるようになった、スプーンや手づかみで食べていた人が自らお箸で食べるようになった。という変化が実際に見られています。

この食事における変化の映像を紹介しながら、山出さんは伝えています。

適切な座位姿勢を提供するとあっという間に箸で食べるようになった。間違いなく、自分で箸で食べたかったことがわかりますよね。そういう声にならない声を引き出すこともすごく大切かなと思います。

介護技術の重要性について、こうも言います。

潜在している力が必ずあるんです。それを適切に引き出せるのって、根拠のある介護技術を用いてかかわる事なんです
私たち介護職は「活動」を提供するためにいるわけじゃないと思うんです。その人の「生活」をしっかりと見ていくことを大切にしているからこそ、うちの事業所は全パートナーが介護技術をしっかり身に着ける努力をしています

生活を少しでも豊かにできる関わりを

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介護技術を用いた“生活の営み支援”を行っていくと、成果として要介護度の改善や生活動作の改善が見られます。ただし、要介護度の改善はあくまで成果であり、介護職としてはそれだけが評価につながるものではない、と山出さんは言います。

これらのことをやっていくと、いろんな方が要介護度を改善していきます。関係をつくっていくことで考えると、ご家族との関係はもちろん、地域で「ちょっとあの人大丈夫かな」と心配されていた人がどんどん元気になっていくのを見てもらうと、地域との関係も良くなっていく。
これらはあくまでも成果です。要介護度の改善は成果であって、私たち介護職としての評価は、よくなってからの「生活」がいかに続けられるか。「生活」をどれだけ豊かにしていけるのかというところだと思っています。

今回のオンラインツアーのテーマである「ひとりひとりの声を大切にした関係・生活づくりの実践」。山出さんから、日常生活に目を向け日々のかかわりを大切にすることの重要性を学ぶことができました。

全体を通して、日々の生活を大切にし、関わることによって、相手の潜在する能力や言葉にできない想いに向き合うことができるということを具体的な事例を交えて教えていただきました。

最後に、介護に携わる人に向けてメッセージをいただきました。

今日初めて、過用や誤用という言葉を聞いた方もいらっしゃるかと思いますが、廃用症候群を予防するために、「できること支援」や「イベント支援」にならないように、そして誤用・過用についてアプローチをして生活不活発病・寝たきりにならないように、私の事業所では携わっています。

話を聞いた皆さんも、さんが向き合っている方の生活を少しでも豊かにできる関わりをしていただきたいなと思います。

山出さん、貴重なお話をありがとうございました!

ゲストプロフィール

株式会社NGU 代表取締役 山出貴弘

・介護福祉士・社会福祉主事・福祉用具専門相談員
・認定自律介護技術1級
・認知症キャラバンメイト
・認知症実践者リーダー研修修了
・横浜市多業種交流会 浜CHAN 事務局長
・NPO法人 認知症フレンドシップクラブ横浜事務局代表
☆著書『よくある場面から学ぶ 認知症ケア(中央法規出版)』

専門学校の医療福祉科で医療ソーシャルワークを学ぶ。卒業後、建築会社に就職し現場で一般建築・バリアフリーに携わる。その際、当時のCMとバリアフリー施工でのやり取りで「その人」に合った施工ではなく、決められた取付寸法でと言われることに疑問を抱き「介護の現状を知るため」25歳で介護社会に足を踏み入れる。
在宅・入所で介護の現状を知り・介護のかかわり方や在り方・おかしな常識・人間関係など「様々なことに強く疑問を抱き」「少しでも長く住み慣れた街で暮らし続けられる」ために歩めるキッカケを創ろうと35歳で独立し、神奈川県横浜市泉区に株式会社NGUを設立。
・地域密着型通所介護 生活維持向上俱楽部「扉」・「匠」
・訪問介護      生活維持向上俱楽部「心」
・居宅介護支援    生活維持向上俱楽部「栞」 を運営

イベント概要

11月27日(土) 13:30~16:30

この記事を書いた人

中島ふみか  NAKAJIMA FUMIKA
医療福祉関連企業の人事・広報/KAIGO LEADERS PR team


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