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困っていれば人も犬も猫も助ける!昔の日本に置いてきた私たちの“忘れ物”とは?(宅老所 いしいさん家)

全国での活動 REPORT 全国 オンライン

物が溢れ、テクノロジーの進歩とともにあらゆることが便利になり、どんどん暮らしやすくなっていく日本。
その反面、昔の日本に我々は、ある“忘れ物”をしているのかもしれません。

2020年12月12日と13日に、全国介護・福祉事業所オンラインツアーと題し、全6事業者の取り組みを紹介するイベントを開催いたしました。

その5つめのツアー先は、千葉県の宅老所「いしいさん家」です。
案内してくださった代表の石井 英寿さん は、その“忘れ物”に気付かせてくださいました。

いしいさん家とは

民家を借りて小規模で運営している宅老所・デイサービスです。デイサービスは、現在2事業所あります。
ありのまま、その人らしく」、「今を楽しむ」、「その人の生活習慣を大切に」、「色々な人が居てていい」、「どんな深い認知症状の人でも受け入れる」や「家族と一緒に成長していく」といったことを大切にされています。

いしいさん家の日常

デイサービスと聞くと、どのような場所をイメージしますか?
高齢の方が多くいて、そこで職員が働く光景を思い浮かべるのではないでしょうか。

いしいさん家の日常の写真は、そのイメージとかけ離れています。

いしいさん家は、スタッフの子連れ出勤を歓迎しているので、子どもが多く集まっています。

真ん中にいらっしゃるのは、加藤八千代さん。現在は105歳とのこと。こちらの方は、登壇されている石井さんのおばあちゃんです。

毎日、おばあちゃんと楽しく過ごしています。『105歳の時薬。』というタイトルでYouTuberもしているので、是非ともチェックしてみてください。

『105歳の時薬。』は石井さんのYouTubeチャンネルでご覧いただけます。
https://www.youtube.com/channel/UCSW6XJLl3eFyWXLINgmMFxw/featured

海外の方からも「働きたいです」と問い合わせがあるそうです。ペルー、ネパール、ホンジュラスやカンボジア等様々な国籍の方が今まで働かれてきたとのこと。

win-winの関係を作る

石井さんは、あらゆるwin-winの関係を作ることを大事にしています。

win-winの関係を作る①子育て中のママ

まずは、子育て中のママです。

子育て中のママを応援したいということで、子連れ出勤OKにしています。僕らがレクを何かやろうとしなくても、おばあちゃんたちが勝手に子どもたちをお世話してくれるんですよね。
ママさんたちも助かっているし、現場の雰囲気も明るく柔らかくなります。

看取り期のおばあちゃんの吸引をナースがしていて、その周りで子どもたちが遊んでいたりします。
「おばあちゃん何しているの?」と聞かれたら、「痰がからんで苦しいから、痰を取ってあげてるんだよ」という命の授業もします。

こちらの写真は、日常のお昼ごはんの風景です。子どもたちやスタッフも一緒に食べていますね。

夏休みは、子どもの方が多くなったりしているそうです。

お風呂に入りたがらないおばあちゃんが、子どもに誘われてすんなり入ったこともあったそうです。

(子どもは)一番良い、ヘルパーですよね 笑

win-winの関係を作る②要介護の親を連れてくる

子どもだけでなく、「要介護状態になった親を連れてきながら働く」というのもOKしています。そうすると、「うちのお母さんだけ何でこんな風になっちゃったんだろうな」という思いが、他の認知症状を持つ方とかかわることで、気が楽になったりします。また、色んな人が関わってくれるので心身が楽になるといったメリットがあります。いしいさん家としても、利用者が増えることになるのでwin-winです。

win-winの関係を作る③障がいを持っている人を受け入れる、雇う

障がいを持っている人を受け入れたり、雇うこともしています。

低酸素脳症の子を受け入れました。
ダウン症の子は、僕らのマネをして、オモチャで体温を測ろうとしています。
特別支援学校を卒業した子も、役割を持てています。
お年寄りだけの生活の場ではなく、働き辛さを抱えている人たちの働く場も作りたかったんです。

このおじさんは、鬱で9年間引きこもってました。様々な就労支援を受けていたのですが、なかなか繋がらず、いしいさん家に繋がりました。最初は、「いるだけでいいから」と言っていたのですが、だんだんと自分から子どものお世話をしてくれるようになったのです。それに対し、「ありがとう」と言い続けていたら、内側から何かが湧いてきた様子が見られました。ボランティアから有償ボランティアになり、その後、雇用も結べるようになりました。人って許し合える場所や認め合える場所が必要なんだと学びました。今度は常勤になってくれたらな、と思っているんです。

win-winの関係を作る④家族を巻きこむ

いしいさん家は、「家族を巻き込むこと」も意識されています。

コロナで現在出来ていませんが、月1回家族会をしています。

看取る寸前のおじいちゃんの奥さんが、早朝から来てくれたり、昼に一度帰って夕方また来てくれたりして食事介助の手伝いをしてくれることもありました。私たちも助かりますし、奥様も気持ちが楽になった面もあったと思います。

win-winの関係を作る⑤地域を巻き込む

「地域を巻き込む」ということもされています。

近くの保育園や幼稚園に行って、落ち葉拾いや掃除をしています。

夏は流しそうめんをしたりすることも。

今は出来ていないですけど、地域の人を呼んでアルコールありで、夜ごはんを皆で食べたりもしました。地域の人にも日本の介護の現状を知ってもらったり、未来の話をしたり、いしいさん家を知ってもらえたら、といった思いで開催しています。

僕は、夜勤明け以外の毎日、朝に緑のおじさん(学童擁護員)をしています。

このように他の人に対して 「何か貢献したい」と考えていると、巡り巡って、いしいさん家に返ってくるんですね。(認知症のある方が)ちょっと大声出しちゃったり、近所の中に入っちゃうこともあるんですが、地域の人は「大丈夫、大丈夫」と言ってくれます。そういう意味では、リスクマネジメントにもなっているということです。

いしいさん家は、駄菓子屋さんもやっています。

子どもたちに、「おじいちゃんおばあちゃんと触れ合ってくれたら、クレーンゲーム1回やっていいよ」って言ってるんです。そうすると、みんないっぱい触れ合ってくれるし、いっぱい来てくれるんですよね。
駄菓子屋は利益を求めているのではなく、このようなきっかけづくりのために運営しています。
核家族化している社会において、子どもたちが高齢者とかかわる機会をつくれればと考えています。

いしいさん家の考え方

まず、目の前に困ってる人がいたら、「いいから来なよ」という感じです。犬でも猫でも良いです。
それから、「その人が介護保険制度使えるのかな?」等、制度についても考えます。
とりあえず、居場所を作っているような感じです。

昔の日本に忘れてきたこととは

いしいさん家はおじいちゃんおばあちゃんがいっぱいいるので、僕は「出会った人は最期までお付き合いしたいな」と思いながら日々を過ごしています。

こちらのおばあちゃんは看取った後です。一緒に写っているのはお孫さんとひ孫さんです。
子どもは「老い」と「死」と触れ合うことで、生活の中で自然に思いやることを学べるんですね。
昔は大家族で、生活の中で子どもたちが、「おじいちゃんおばあちゃんは耳が遠くなるんだ、だから大きな声で離さないといけないんだな」って自然に学べていたんですね。でも今は、そういうことを知る機会がなかなか無いですよね。だからこそ、思いやることを学べる場をつくって、発信していきたいと思ってるんです。

昔は、親、子、孫、ひ孫が一緒に暮らすことの豊かさがあり、生活の中で思いやりを育んできました。それは、日本全体が“忘れ物”をしてきたことだと思います。経済とか効率化とかグローバル化も大事ですが、そういった中で、「物を作ることだけが生産性がある」ということでは無いのです。
おばあちゃんたちは、「子どもたちに思いやりの心を生産する」という、人としての最後の役割があることを僕は実践で学んできたので、これからも伝えていきたいです。

これからのいしいさん家の取り組みの紹介もありました。

最後に、いしいさん家の新しいプロジェクトである「52間の縁側」のYouTube動画を鑑賞しました。
https://www.youtube.com/watch?v=6V8U9pmhP0I
(是非、チェックしてみてください。)

Q&A

ここからは、コーディネーターのまちがみや、参加者の方からの質問に答えていただきました。

まちがみ:介護の仕事をしていて、「宅老所をやってみたい」と思っている職員がたくさんいると思うのです。今、そう思う職員に対してどう考えますか?

 

石井さん:もともと僕は精神科や老人保健施設で働いてきたんですが、4,50代になって後悔したくないと思い、「失敗しても良いや」という気持ちで旅立ちました。

「大きい施設だから出来ない」とか、「小さいところだから…」といった様に凹んだり、一喜一憂するのも良いと思いますが、仕事は自分の内側次第で、楽しくもなるし、辛くもなります。だから、立ち上げることで気持ちが前向きになるのなら立ち上げればいいし、経済的に不安があるのなら、まずは仕事に対する視点を自分の中で変えていくことも大事だと考えます。

ナースコールが鳴って走っていきますよね。ナースコールを押したおばあちゃんからしてみたら、駆けつけた職員が社会の代表なんです。だから、その対応によって、「まだ生きてていいんだ」って思えるか、「死んだ方がいいかな」と思ってしまうのかどうかが分かれるんです。

毎回、真面目だと疲れちゃうからユーモアも取り入れていきます。自分から楽しむという意識づけも大事だと思います。

まちがみ:参加者の方からも質問が来ています。介護の専門性ってなんだと思いますか?

 

石井さん:「自分がやられて嫌なことはしない」ということかな。
あとは、解決しようとすると、利用者の行動が問題行動として捉えられてしまうから、「解決しなくてもいい」と捉える。問題行動も視点を変えてみたら、元気なおばあちゃんとして見られます。
そして、決して断らないことかな。

 

まちがみ:経営についてはどのように考えていますか?

 

石井さん:ずっと黒字で来ることが出来ています。介護報酬が下げられていく中で、スタッフにも還元していかなきゃいけないので、工夫をしています。例えば、家族を巻き込んでスタッフみたいにしたり、「子どもがいる」ということや、ここだったら家族と一緒に最期まできちんと看取れるということで、他の施設との差別化をしていったり…。
僕も月に7、8回夜勤もやってるので、そこも節約になっているかな。

 

まちがみ:難しいおじいちゃんおばあちゃんがいる中で、スタッフ・家族の境界を超えて関係性を作っていく、いきさつを知りたいです。

 

石井さん:色んな家族や本人がいるので、いきさつはわからないのですが 笑 「困っている人を助ける」ということ。
常に「いいよー!」という姿勢。ビンタされても「いいよー!」と笑いながら受け入れることです。

 

まちがみ:最後にメッセージをお願いいたします。

 

石井さん:笑うっていうのが、僕好きなんです。色々考えてもその場面は変わらないし、明日は来ちゃうので、とりあえず寝る。そして明日考える。「生きているなら、笑って生きたいな」と思います。でも、泣くときはおもいっきり泣いちゃっても良いんです。

「52間の縁側」プロジェクトがやっと着工に入るので、是非、遊びに来てください。

いっぱい関わりましょう。いっぱい繋がっていければ、ご縁が出来て、みんな勉強出来ると思うので。「日本の介護や医療の未来は暗くないんだぞ!」と発信していきたいので、スクラム組んでいきましょう。ぜひぜひよろしくお願いします!

 
いしいさん家の取り組みだけでなく、石井さんの生き方からも多くを学ぶことが出来ました。

ゲスト紹介

有限会社オールフォアワン 代表取締役 石井 英寿

宅老所いしいさん家代表/介護福祉士/ケアマネージャー
昭和50年3月19日生まれ 淑徳大学社会学部社会福祉学科卒
大学卒業後、介護老人保健施設に8年間勤務。認知症専門棟で、認知症の方達と多くの関わりを持つ。平成17年8月に退職。同年10月、有限会社オールフォアワンを設立。

イベント概要

日時:2020年12月13日(日)18:30~19:45

100名にご参加いただいた「全国・介護福祉事業所オンラインツアー」第2回の開催が決定しました!
2日に渡り、全国4か所の取り組みをご紹介します。

この記事を書いた人

森近 恵梨子 Eriko Morichika
twitter/note

株式会社Blanketライター/プロジェクトマネージャー
社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員
介護深堀り工事現場監督(自称)。正真正銘の介護オタク。温泉が湧き出るまで、介護を深く掘り続けます。
フリーランス 介護職員&ライター&講師。

 


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