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“看取る文化”を生活の中に!施設がまちの中で“いのちを学ぶ場“になるには?(ライフの学校)

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”看取る文化”を、介護施設から生活の中へ

“看取り”という言葉から、どのようなシーンを思い浮かべますか。
そして、そこはどのような場所でしょうか。
病室や介護施設で、誰かを看取るシーンを思い浮かべる方、あるいは実際にそのような経験をした方が多いのではないでしょうか。

かつては、家をはじめとした普段の生活に近い場所で“看取り”はおこなわれていました。
しかし現在では、核家族化が進み、さらには自治会等の地域住民がつながるきっかけの場も少なくなってきています。

そのため、“看取り“は生活の一部から切り離され、病院や施設の中で初めて触れることが多くなっています。

宮城県仙台市にある 社会福祉法人ライフの学校 は、「”看取る”という文化を生活の中に取り戻す」ことの実現に向けて「Re:project」という挑戦をスタートさせました。

どのような挑戦なのでしょうか。

医療にできないことを叶えたい -介護のフィールドで目指すこと

2020年12月12日と13日に、「全国介護・福祉事業所オンラインツアー」と題し、全6事業者の取り組みを紹介するイベントを開催いたしました。

その2つめのツアー先は、ライフの学校です。
案内してくださったのは、理事長の田中伸弥さんです。

田中さんは、「“看取る文化“を生活の中に取り戻すこと」を目指したきっかけを教えてくれました。

これ、なんの写真か分かりますか?

スライドに表示されたのは、病院のベッドに横たわる人と、寄り添う馬の写真でした。

アメリカのホスピスで撮られた写真です。余命宣告された患者さんの「相棒に会いたい」という希望で、かつての相棒だった馬と再会できた様子なんですよ。
この写真を見た時、「これだ!」って思ったんです。僕は介護というフィールドで、目の前の人の希望に対してどう向き合うかを考え、実現したい。それって医療だけではなかなか難しいことだと思うんです。医療では難しいことを叶えるのが、介護の仕事だと思っています。

目の前の人の希望に向き合い続ける。

一見、田中さんが目指す「看取りを生活の中に取り戻す」こととはあまり関連性がないように感じるかもしれません。
しかし、希望を叶えるためには多くの人との協力が必要な場合もあります。
介護施設の中だけでは、希望を叶え続けられないという可能性もあるのです。
「目の前の人の希望に向き合い続けること」は、まちづくりにつながると田中さんはお話してくれました。

まちづくりは、目の前の人の希望に向き合い続けた結果の上に成り立っていると思っています。だから僕は、ライフの学校が地域と接点を持ち続けることが大切だと思っています。

ライフの学校で始まった「Re:project」は、地域との接点を持ち続け、目の前の人の希望に向き合うことで“看取る文化“を生活の中へ取り戻していくプロジェクトです。

ポイントは、
地域に開く
目の前の人に向き合い続ける
の2点であることが、お話しを伺っていくとわかりました。
具体的にどのようなことに取り組まれているのかを、田中さんからご紹介頂きました。

「地域に暮らしを取り戻す」ための挑戦、Re:project

法人のコンセプトは、「地域に暮らしを取り戻す」ということ。
その実現のためには、地域住民に向けて、施設の中で起こる様々な“暮らし”のシーンを開いていくことが大切ではないか。
そのような思いから、「Re:project」は動き始めています。
このプロジェクトで掲げられているのが「8つの”Re:”」です。

今回のイベントでは、「Renewal(更新)」、「Restore(復元)」、「Resourse(資源)」の3つについてお話を頂きました。

Renewal-法人の在り方を見直す

看取る文化を地域に戻したいとはいえ、看取りにはゴールがないんですよね。死ぬことは千差万別。どうすれば、地域がこの課題について考えられるのだろうと思索した結果、まずは法人名を変えることから始めました。

法人名のコンセプトを地域の人がより分かりやすく、そして親しみやすくなるように、法人の名前、理念や基本方針を見直し、更新しました。
取り組みとして最初にメスを入れたのは、法人名。
以前の法人名「ウェル千寿会」から「ライフの学校」に改名しました。

福祉に寄り過ぎず、誰でも親しみやすい名前にしたかったんです

Restore/Resourse-人の歴史も、まちの歴史も知ってこそケアが完成する

法人名を改め、再出発したライフの学校。それにあたり大切にしていたことは、「まちと人を知ること」でした。

目の前の人が紡いでいる人生の歴史も大事。だけど、地域のことを知らないとケアは成立しないのではないかと思っていて。だから、ライフの学校では、人の歴史を知ることはもちろん、ゼロベースからまち歩きやフィールドワークをしています。

自分の足でまちを歩くことで、まちの中で様々な資源と出会うことができました。その資源から、ライフの学校が地域に開いていくきっかけが生まれています。
資源について、田中さんは“モノ”と“ヒト”の2つに分けてお話してくださいました。

“モノ”の資源から生まれた「嫁入りの庭」、薄れた“まちとの境界線“

まち歩きやフィールドワークをするうちに分かったのは、東北最大の都市である仙台市でも、郊外ではすでに過疎化が始まっていること。
それによって、住民がかつて植えた植物や樹木等も、まちから姿を消していたのです。

そういうものが壊されていくのではなく、丁寧につないでいきたいという思いをこめて庭を作っています。

「嫁入りの庭」と名づけられたライフの学校の庭。そこには、利用者が自宅から持ってきた記念樹や花が寄せ植えされています。中には、井戸を嫁入りの庭に移した方も。

さらに、庭のウッドデッキを拡張しました。それによって、ライフの学校とまちの境界線が薄まりました。通りがかる地域住民と自然に挨拶が交わせるような環境づくりにも取り組んでいます。

ライフの学校沿いを通るように散歩コースを変えられた住民の方もでてきました。

お顔をほころばせながら田中さんは教えてくださいました。

“ヒト”という資源は“いのち”に触れるきっかけになる

ライフの学校では、利用される方の人生録を聞き書きの手法でまとめた「ライフストーリーブック」を作成しています。ケアマネジャーを中心に、居室担当者が作っています。
介護施設では通常の場合、まず既往歴などの聞き取りをするんですが、それらの医療情報だけでは、良いケアができないので、その「人」の歴史を知る機会を設けています。

ライフの学校では、利用者の人生を一冊の本にまとめるだけでは終わりません。
それを活用し、地域住民へ開いた多様なプログラムも実施しています。
https://gakkou.life/program/

ライフの学校に入居する高齢者、つまり、人生の大先輩から、その人のキャリアやこれまでの人生について話を伺う「ライフストーリー学」。
誰でもふらっと立ち寄れて、ライフストーリーブックを読むことができる「ライフの図書館」。
さらに、福祉や看取りなどについて、テーマに沿ったゲストを呼んで、お酒を飲みながら語り合う「LIFE BAR」等。

これらすべてのプログラムに共通する思いは、「地域住民が”いのち”に触れるきっかけを作ること」

ライフの学校は特別養護老人ホーム、デイサービスや居宅介護支援センターなど、様々な方の”くらし”や”いのち”に触れる場所を運営しています。

ライフの学校をまちに開放することで、スタッフでなくとも、様々な人の営みに触れ、自分自身や交流した人の”いのち”や”生きる”について再考する場をつくることを目指しています。

“看取る文化”を地域に取り戻し、“いのち”が豊かになる場を目指す

2019年、法人名を改めるところから始まった「Re:project」という挑戦。

ライフの学校を利用する高齢者が幼稚園で、雑巾縫い教室を開催するようになったり、近所に住むダウン症の女の子が「人の役に立ちたい」と手伝いに来てくれるようになったり…。

地道なフィールドワークや利用者への聞き取り、そして地域住民との関係性づくりによって、「看取る文化を地域に戻す」ための最初の一歩、「いのちにふれる」機会をつくりはじめることが出来ています。

なかでも、田中さんが介護の仕事を続けてきた道のりの1つのゴールだと思った出来事があったと言います。

ライフの学校の利用者だった男性が亡くなった時、家族が葬式で映すスライドショーに、スタッフがさんまを焼いている写真を選んでくれたんですよ。

田中さんが見せてくださった写真には、利用者だったその男性の姿はありません。写されているのは、男性の好きな「さんまを食べたい」という最期のリクエストに、『せめて匂いだけでも・・・』と真剣に応えるスタッフの姿でした。
※実際に「匂い」が功を奏したのか、男性はその後、実際に4口ほど召し上がったそうです。

ひと昔前だったら、「家族を介護施設に通わせていたことを知られたくない」なんていう風潮もあったのに、うちのスタッフしか映っていない写真を、葬式で流す映像に入れてくれている…。感動しました。

目の前の人に向き合い続けることが介護の仕事だ

介護の仕事を始めたころから田中さんが抱いている想いが実現した瞬間でした。

そして大切なのは、目の前の人の希望を叶える介護の仕事が、介護施設の中だけで完結するのではなく、地域の中に浸透していくこと
それが、”看取る文化を地域に戻す”ことにつながり、地域住民一人ひとりが”いのち”や”暮らし”について触れ、”生きる”について考えるきっかけにつながっていきます。

いま、ライフの学校はスタートラインに立っています。これからも変わらないのはあくまで「対象は目の前の人である」こと。
目の前のじいちゃんばあちゃんに向き合い続け、希望を叶えるためには、地域へ「ライフの学校」という場を開いていく。そして、じいちゃんばあちゃんという”いのち”に触れたまちの人が、”生きること”や”いのち”について考え、自分自身の”いのち”が豊かになるような場を作り続けられたらと思っています。

”看取る文化”は、日本のあらゆる場所から消えています。
ライフの学校を皮切りに、まちに住む1人ひとりが自分自身や周りの人の”いのち”、そして”いきる”ことについて触れて、考えられる機会が増えていってほしいと感じました。

ゲストプロフィール

社会福祉法人ライフの学校 理事長 田中伸弥

1981年 秋田県生まれ。40歳。仙台大学体育学部健康福祉学科卒。大学卒業後、社会福祉法人経営の介護老人保健施設で介護主任を3年半、医療法人社団経営の病院併設の老健,デイケア等で相談員等を経験したのち、2011年に現法人の特養萩の風,施設長に就任。2013年同法人常務理事 兼 施設長に就任し、2019年6月より現職。

現職
・社会福祉法人ライフの学校 理事長 兼 統括施設長      
・宮城県社会福祉法人経営者協議会 理事             
・宮城県経営青年会 理事
・仙台市老人福祉施設協議会 理事
・特定非営利活動法人まちあす 監事
https://gakkou.life/

イベント概要

日時:2020年12月12日(土)16:30~17:45

この記事を書いた人

渡部真由  WATANABE MAYU
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株式会社あおいけあ ケアワーカー/KAIGO LEADERS PR team


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