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介護現場はどう変わる?報酬改定から考える、未来の介護(PRESENT26 斉藤正行)

PRESENT REPORT 東京 Archive オンライン

「介護報酬のことなんて経営層が知っていればいいんでしょう?」
「報酬改定で業務内容が変わったり、増えたりして負担が増えてしまう」
現場の介護職員の正直な本音かもしれません……。

介護現場では、介護業界全体がどこへ向かっているのか、私たちのケアの積み重ねがどのような未来像をつくっていくのかを考える機会は、それほど多くはありません。

介護報酬は、介護サービスに対する対価であり、国からの公的な評価といっても過言ではありません。介護報酬が変わったということは、大きくいえば、日本の社会が示す介護業界への評価と期待の方向が変化したということです。

介護報酬の示す方向性を理解することは、私たちのケアがどのように評価されているのかを把握することに繋がります。

2021年313日に開催されたPRESENT26のゲストにお迎えしたのは、一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長の斉藤正行さん。

『介護現場はどう変わる?報酬改定から考える、未来の介護』

このタイトルでオンライン開催されたPRESENT26では、介護報酬改定や改定に至る背景について学びました。
「これからの介護を考える際に何を大切にしていくべきなのか」を考える機会となりました。

その斉藤さんのお話をレポートしていきます。

斉藤さんは、当日のお話のゴールについてこのようにお話されました。

まず、介護報酬と皆さんとの距離を近づけたいです。介護報酬は自分たちの仕事にも関係があるということを理解してもらいたいです。そして、2021年度の報酬改定の方向を知ってもらい、それを踏まえた上で皆さんの仕事、明日からの行動や活動に結びつけてもらえたらと考えています。

介護報酬の改定率と介護現場は繋がっている

2021年度の介護報酬の改定率はプラス0.70%でした。

そもそもこの数字はどのように決まっているのでしょうか?

そのプロセスをまとめたのが以下の図です。

最終的に決めるのは国会の場です。
その前に、国会に法案を提出する最終段階の大臣折衝があります。
では、大臣はどのように決めていくのでしょうか。

厚生労働省には社会保障関連の様々な議論をしていく社会保障審議会があります。
この社会保障審議会には、介護保険部会介護給付費分科会があります。
介護保険部会では、制度全体の枠組みを決めていきます。
介護給付費分科会では、点数、各種加算やそれらに紐づいた様々なルールについて議論しています。
さらに、それぞれの下には、専門委員会や部会があり、それぞれのテーマについて深く話し合いがおこなわれています。

議論の根拠になるのが、老健事業の調査結果です。前回の報酬改定をふまえ現場にどのような影響が出たのかが示されています。

また、斉藤さんが設立した全国介護事業者連盟といった様々な団体の声も、ルールづくりに反映されます。

報酬改定のプロセスの話をすると、雲の上の話のように聞こえるかもしれませんが、老健事業の調査や各種関係団体の意見は、皆さんの声や、現場の状況を吸い上げて伝える仕組みになっているので、本来は繋がっているんです。

介護のルールは、介護で決めたい

一方で、斉藤さんは介護のルールづくりのプロセスにおける課題を指摘されます。

介護給付費分科会の委員の方の一覧を見ると、総勢25名の中で、介護関係の方は5名しかいません。介護報酬関連の情報のわかりにくさや、現場の認識との乖離等が見受けられる背景には、このメンバー構成となってしまっていることが大きいと考えています。介護のルールは、介護で決めたいと思うので、何とかしたいです。

この問題意識を抱いた斉藤さんは、全国介護事業者連盟を設立しました。
サービス種別ごとに分かれている介護の団体は、どうしても大きな声を上げることが出来ないので、政治力や影響力を発揮することが難しい状況です。
介護のルールを介護で決めるために、数多くある介護の団体に横串を刺すような横断的な組織を作ろうということで、全国介護事業者連盟を設立したそうです。

令和33月現在、会員数は1033社、8799事業所です。設立3年目にもかかわらず、日本で2番目に会員数が多い団体になっていて、あと数か月で1番になれる見込みがあるとのこと。

総理大臣や議員への直接的な交渉も重ね、コロナ禍で働く介護職員への慰労金の支給等が実現しました。

介護保険制度の基本的な仕組み

介護保険は、40歳以上の国民が介護保険料を毎月市町村に納めていき、いざ要介護状態になり、介護サービスを受けることになったら、基本的には1割もしくは所得に応じて3割までを自己負担して、残りの7割から9割に関しては、市町村から介護事業者がお金をもらうという仕組みです。

介護保険の財源は、税金が50%(内訳:国25%、地方25%)、保険料が50%となっています。

我々の事業のお金の大半は、保険料とか、国民の皆さんが払われている税金で運営が賄われているということです。だからこそ、適切な運営が求められ、そのエビデンスが求められるので、細かい書類や作業が出たり、様々な制約が生じるのです。

介護報酬改定とは、まさにその運営のルールが変わるということ。仕事の11つに結びつくので、私たちは、それをしっかりと理解した上でサービス提供する必要があります。

大改革は2024年に!

ここからは、介護報酬改定の内容についてお話がありました。

今回の改定は、見直しポイントが多くありますが、根本的な大改革では無いと考えます。おそらく、診療報酬との同時改定(医療・介護同時改定)となる2024年は厳しい大改革になると思います。新型コロナウイルス感染症収束後は、いかに社会保障費用を適正化するか。つまりは削減し、国の借金を減らしていくかという議論になると思います。そのための準備をしていく必要があります。

具体的には、2024年以降、どのような変化が起こるのでしょうか。

軽度者を介護保険給付外へ

「要介護12の人たちへの訪問介護、通所介護を総合事業へ移管する」という議論もありましたが、今回の2021年改定では見送られました。しかし、2024年改定では、「給付から外される流れになる」と斉藤さんは考えられています。

「大変な中重度の方には介護保険のお金をしっかりつけますが、軽度の方にはつけずに、自分でやってもらったり、市町村で調整してやっていきましょう」というのが国の大方針です。

訪問介護事業所や通所介護事業所等は、2024年にその改正がおこなわれた際に、どのようなことが起こり得るのかを今から予測し、備える必要がありますね。

自立支援やアウトカムの推進

高齢者の状態を少しでも良くするケアをしていく」ことが、大きなテーマとなっています。

これは、財政事情からも実施しなくてはならないことです。要介護度が高い方が増えると支出も増えるので、国は介護が必要な人を減らしたいし、要介護度を低く維持したいと考えています。
だからこそ、自立支援を推進していこうという方針なのです。

「自立支援」とは、機能訓練や高齢者のADLの状態を改善していくことのみを指すのではありません。

「水分補給、栄養管理、排便コントロール、口腔状態や運動などをパッケージとして管理する必要があり、機能訓練だけやっているのはダメですよ」と、国は強く訴えています。

アウトカムは、今回の改正のキーワードです。
介護保険は今まではプロセスが重要と言われてきました。例えば、加算は、「機能訓練する職員を配置して個別に機能訓練を実施すれば算定できる」といった仕組みでした。つまり、結果的に機能訓練がしっかり出来ているかどうかは問われないシステムだったのです。

しかし、アウトカムはそうではなくて、“結果”です。
「維持」や、「重度化を防げた」といった結果を残せて初めて点数をつけられる仕組みにしていくこと。
これが、「アウトカムの推進」です。今後、ますます重要になっていきます。

生産性の向上

高齢化率が高まるなかで、職員の人数が少なくても変わらずにサービスをおこなっていく必要があります。
そのために、ICT、ロボットやAIなどテクノロジーを使っていきましょう」という方針です。また、「不要な書類を少なくしていきましょう」という流れもあります。
コロナ禍の状況も相まって、この動きは加速しています。
また、先述した自立支援やアウトカムともセットになっていて、アウトカムの結果を重視していくなかで、高齢者の状態像の把握をしっかりするためにも、生産性の向上やICTの普及を徹底的に進める必要があると考えられています。

様々な意見が現場から出てくると思いますが、「より少ない人数で回していきましょう」という人員配置の見直しも、昨年の骨太方針で示されています。

2021年改定のポイント

ここからは、2021年の介護報酬改定の具体的内容についてお話いただきました。

2024年以降の改定のエッセンスが、今回の報酬改定でもたくさん散りばめられています。そのうちのいくつかのポイントを確認していきましょう。

感染症や災害への対応力強化

災害が起こって、事業所の環境が変わっても高齢者の命が守れるようにBCPという計画を作っておくということが、ルールで定められるようになりました。

地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステムを推進するために、「認知症対応に力を入れていこう」という方針が掲げられました。

今までは介護資格の無い人や未経験の方でも介護の仕事が出来ましたが、20214月からは人員基準のカウントに入れることが出来なくなりました。その代わり、資格の無い方は「認知症介護基礎研修」を受けておいてください、というルールに変更されました。

その他にも、看取りをしっかりおこなうためのガイドラインをルールとして決めていくことや、ケアマネジャーの囲い込み(サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームで過度なサービス提供をしていること)をしっかりとマネジメントするために情報公開するルールが定められています。

ケアマネジャーは、取扱件数が40件以上の場合、40件目から点数がグッと下がるという逓減制が適用されていましたが、一定のICTAIを含む)の活用又は事務職員の配置を行っている事業者については、逓減制の適用を45件以上の部分からとする見直しが行われました。

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の一体的な推進

ここからは、「自立支援や重度化防止」についてです。
リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する各種計画書を一体的に記入できる様式が設けられることになりました。

機能訓練、口腔機能、栄養に関する加算を算定したい場合、それぞれの計画書を作成する必要があったのですが、一体的に記入できる様式があれば、重複する基本情報等を記入する負担が減ります。

斉藤さんは、それだけの話では無いと主張されます。

2024年改定以降は加算自体もセットになると考えます。機能訓練の加算のみ算定し、口腔機能や栄養に関する加算は算定しない事業所も多くあると思いますが、将来的には、口腔機能向上や栄養ケアも含めて一体的に取り組んでいないと、算定できなくなる可能性もあるでしょう。

入浴介助加算については、基本の単位数は減りましたが、自立支援に関する取り組みをすればその分点数が上がる仕組みになりました。

今回の2021年改定では、デイサービスや特別養護老人ホームは、普通にしていたら点数は下がりますが、自立支援に関する取り組みを実施すればその分点数が上がる仕組みになりました。2024年改定以降はその他のサービスにおいても同じような仕組みになっていくと思います。

科学的介護

介護サービスの質の評価と科学的介護の取組を推進し、介護サービスの質の向上を図る観点から、通所・訪問リハビリテーションデータ収集システム(VISIT)と高齢者の状態やケアの内容等データ収集システム(CHASE)の一体的運用を41日から開始するとともに、名称を科学的介護情報システム(LIFE)としました。

ADL、栄養状態、口腔・嚥下、認知状態について、利用者の情報を入力し、分析結果のフィードバックを受けて、そのフィードバック情報をケアに活かしていくと、加算を算定できるようになりました。

今回の改正では、「まず情報収集をしましょう」「そしてフィードバックをケアに活かしましょう」ということなので、アウトカムには至っていないです。しかし、2024年度以降の改定では、結果として状態の改善が見られたら、より多くの加算が算定できるような仕組みになるのではないでしょうか。
経営者としては、現場に負担がかからないように、入力しやすいシステムを整えたりする必要があります。

アウトカムに伴う加算

ADL維持等加算という、ADLの維持・向上を評価する加算が拡充されたり、褥瘡マネジメント加算は、褥瘡の発生予防や状態改善(アウトカム)について評価をおこなう新たな区分が設けられたり、排泄せつ支援加算については、排せつ状態の改善(アウトカム)について評価をおこなう新たな区分がつくられたりしました。

アウトカムを重視する流れになっています。

介護事業所は、V字型へ

最後に、報酬改定をふまえて、これからの介護現場に求められることについてのお話がありました。

介護事業所は、現在、リハビリ型や認知症特化型といった様に、それぞれ特徴を作っていると思います。一方で、これからは、特徴を作った上で、幅広いサービスを提供するV字型(自立支援型)に切り替わっていくんですよ。

また、これからの介護はエビデンスが重要になってきます。気持ちや理念だけでなく、科学的介護をしっかりやっていかないといけないですし、ICT化や生産性の向上が求められるのです。

皆さんと介護報酬との距離は縮まったでしょうか?
令和34月の報酬改定だけでなく、もっと先の改定を見据えて今から準備していく必要性を強く感じました。

もっと介護報酬について勉強したい方は是非とも一般社団法人全国介護事業者連盟のYoutubeチャンネルもチェックしてみてくださいね。

介護チャンネル

ゲストプロフィール

斉藤  正行

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

1978年奈良県生まれ、2000年立命館大学経営学部卒業
2000年4月 飲食業のコンサルティングや事業再生を手掛ける
        株式会社ベンチャーリンクに就職
2003年5月 メディカル・ケア・サービス株式会社に入社
      「愛の家」ブランドでグループホームを全国に展開。
       自らグループホーム事業の立ち上げを行い、現在の運営管理体制、
       営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。
2005年8月 取締役運営事業本部長に就任
2010年5月 株式会社日本介護福祉グループへ入社
2010年7月 取締役副社長に就任
      「茶話本舗」ブランドでデイサービスを全国にフランチャイズ展開
2010年12月 一般社団法人日本介護ベンチャー協会設立、代表理事に就任
2013年8月 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立、代表取締役に就任
2018年2月 株式会社日本介護総研取締役会長に就任
2020年6月 一般社団法人全国介護事業者連盟理事長に就任

その他、一般社団法人日本デイサービス協会名誉顧問など、介護関連企業・団体の要職を歴任。

開催概要 

日時:2021年3月13() 19:0021:30
場所:オンライン(Zoom配信)

PRESENTについて

2025年に向け、私たちは何を学び、どんな力を身につけ、どんな姿で迎えたいか。そんな問いから生まれた“欲張りな学びの場”「PRESENT」。「live in the present(今を生きる)」という私たちの意志のもと、私たちが私たちなりに日本の未来を考え、学びたいテーマをもとに素敵な講師をお招きし、一緒に考え対話し繋がるご褒美(プレゼント)のような学びの場です。

この記事を書いた人

森近 恵梨子 Eriko Morichika
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株式会社Blanketライター/プロジェクトマネージャー
社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員
介護深堀り工事現場監督(自称)。正真正銘の介護オタク。温泉が湧き出るまで、介護を深く掘り続けます。
フリーランス 介護職員&ライター&講師。

 


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