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イベントレポート

仕事の枠を超えて、見たい世界をカタチにする 〜若手鍼灸師の挑戦「必要としている人に、選択肢が届く社会へ」〜

現状に対する違和感や、もっとこうなればいいのにという問題意識を、思いや意見に留めず、未来をよりよくするアクションへと変えていくためのプログラム、「KAIGO MY PROJECT(以下マイプロ)」。
これまで全13期、121名が参加し、それぞれの問題意識や違和感を、主体的に変革していくためのアクションへと変えてきました。

毎月開催するマイプロ体験イベントでは、これまでマイプロに参加をしてくれたOB・OGを迎え、プロジェクトや、実践に至る背景や想いについてお話しいただいています。

6月8日に開催した体験イベントでは、鍼灸師として仕事をする傍ら、鍼灸が必要な選択肢であることを、人の力で伝えていく循環型コミュニティ「次世代はりきゅうレボリューションズ(以下はりレボ)」を運営している5期メンバーの伊藤由希子さんにお越しいただきました。

「仕事の枠を超えて、見たい世界をカタチにする ~若手鍼灸師の挑戦 必要としている人に、選択肢が届く社会へ~」と題し、伊藤さんの団体結成の背景と活動を通して見つめてきた自分の想いの変化をお話し頂きました。

「受療率5%」の衝撃

私は幼いころから、あまり他人を信じられず、自分のことなんかみんな好きじゃないんだと感じていました。いつしか人の心の中を知りたいと思うようになり、大学で心理学を専攻しました。しかし、臨床心理を学ぶうちに、優しくないというか、ちょっと刺激が強すぎるように感じ、あまり勉強に身が入らない時期がありました。

そんな時、東洋医学の授業を受けてみたところ、身体と心は繋がっているという人との寄り添い方に触れ、感動し、卒業後は鍼灸学校へ進学しました。鍼灸学校で、東洋医学を学びながら、鍼灸・マッサージ師の資格取得を目指す中、卒業する間際に鍼灸院の受療率が5%しかないことを知り衝撃を受けます。人の心にも体にも良いものが、選ばれていない事実を知ったとき、 これはなんとかしなきゃいけない、と思い様々なイベントやセミナーに参加するようになりました。

あるイベントでKAIGO LEADERSの発起人である可愛ちゃんと出会い、私と同じ思いを持っている鍼灸師がいるよと紹介されたのが、はりレボの副代表のてっちゃんこと白石哲也(マイプロ4期メンバー)でした。初めて会った日に、意気投合して一緒に活動を始めることが決まり、その場で「はりレボ」と名前を決め、初回のイベント会場を予約したのです。(笑)

はりレボ副代表の白石哲也さん(左)と伊藤さん(右)

はりレボ結成と同時に、マイプロ5期に参加しました。プログラムの中で、これまでの自分を振り返り、仲間と共有する時間がありました。それまでうまく言えなかった自分の想いをメンバーに話したことで、たった3カ月でこんなにも信頼し合える感覚が不思議でした。そんなメンバーと過ごしている時に、「あ、いま “わたし” だ!」とやっと自分らしくいられている瞬間と出会い、ようやくスタートラインに立てたように感じました。

KAIGO MY PROJECT 5期の最終発表会の様子

なんとかしなきゃいけない、この感覚を放ってはおけなかった伊藤さんが、最初にとった行動はイベントやセミナーへの参加という誰でもできる一歩だったかもしれません。しかしその場で自分の想いを語ったからこそ、大きな転機となる出会いにつながったように感じました。この出会いから、彼女の想いは加速し始めるのです。

 

小さな一歩の先に、生まれた新たな壁

 

はりレボ副代表の白石さんやマイプロ5期生など、仲間を得た伊藤さんの行動力は留まることを知らず、団体結成した年には鍼灸師や医療、介護領域の人たちと、鍼灸の可能性を探る「鍼灸×○○」と題したイベントや、鍼灸師の学びの場「“BE”REVO」を開催など、その活動は 鍼灸業界誌から取材されるなど注目を集めながら、拡がりを見せます。イベントの成功と団体の注目度が高まる中、意外なことに伊藤さんの胸中に暗雲が立ち込めていました。

はりレボを通して、魅力的な鍼灸師の方々と出会う中で、鍼灸の受療率を上げるためには、ただイベントを開催しているだけではだめだと感じていました。鍼灸をもっとたくさんの人に届けたいという想いは強くなるのに、何をしたら良いか解決策を見い出せていなかったのです。

走り始めてもなお、現状に満足せず問い続ける中で、自分の見たい世界を描けるようになった伊藤さん。実践の中での葛藤も包み隠さず話してくれる彼女の姿に、当日の参加者もひき込まれていました。

向き合った先に見つけた、見たい世界とは?

走り続けながらも、自分たちの方向に迷いが生じた昨年NPO法人ETICが運営するソーシャルスタートアップ向けのアクセラレータープログラム「SUSANOO」の5期メンバーとして参加しました。念願のSUSANOOに参加して、苦しくも熱い毎日を送りながら、自分たちの活動、可能性を考え続けていました。ある時メンターから、「鍼灸を広めるって目的じゃなくて手段だよね?ゆっきょはどんな景色が見たいの?」と問われた時、ふと自分の周りにいる人達の顔が浮かんできたのです。

はりレボとして共に歩んでくれる仲間のてっちゃん、2年前に出会った5期メンバー、私の前を歩み続ける憧れの可愛ちゃんを始め、私の周りには、誰かのために頑張っている人たちがたくさんいます。

その誰もが、楽しみたいときは楽しめて、悲しみたいときは悲しめて、頑張りたいときは頑張れて、自分の「今」をめいっぱい生きることが出来る世界がみたい!と思いました。

これからはそういう人たちが、頑張った自分を癒しながらまた頑張れるように、 はりと東洋医学で自分で自分の100%を引き出す、それが私の新たなマイプロです。

伊藤さんの講演後は参加者とマイプロワークを行いました!

周りの人々が信じられず、自分の価値さえ見い出せずにいた幼い頃を経て、自分の価値観や周りの人々を大切にしながら生きている伊藤さん。加速する活動の中でも、自分の想いに向き合い、問い続けてきた彼女は、歩みを止めず行動し続けることで、いくつもの自分の枠を超えてきたのだろうと思いました。

伊藤さんのお話しを聞きながら、自分の小さな思いをも見逃さない「虫眼鏡」と見たい世界に向けて未来を覗く「望遠鏡」、そのふたつの視点を持ち仲間とつながり自分の枠を超えてゆく場として、KAIGO MY PROJECTも歩み続けたいと思いました。

▽KAIGO MY PROJECT14期参加者募集中!

伊藤さんも参加したKAIGO MY PROJECTは間もなく14期がスタート。(8月19日~) ただいま、参加者募集中です!


 

この記事を書いた人

矢尾 真理子

矢尾 真理子Mariko Yao

介護福祉士 介護支援専門員KAIGO LEADERS team TOKYO /KAIGO LEADERS KAIGO MY PROJECTチーム

マイプロ「介護が幸せな人生経験となるための家族介護者支援」の実現のために活動中。
目指すは、チームメンバーの叔母!

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