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コロナ禍は、しんどくて当たり前。自分の心といかに付き合うか?(KAIGO LEADERS FORUM2020 イベントレポート②)

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KAIGO LEADERS FORUMとは、介護や高齢者支援・まちづくりの分野で様々な実践を進める若きリーダーたちが集い、参加者の皆さんと一緒に、これからの超高齢社会のあり方を考えるイベントです。

今年のテーマは、「WITHコロナ時代の介護を考えよう。

WITHコロナ時代の「介護」のあり方に悩んでいる方も多いと思います。
KAIGO LEADERS FORUM 2020は、ゲストのお話から共に考え、これからの社会を生き抜くヒントをつかむ時間を4週連続オンラインでお送りしました。

2回目は、7月11日に開催された『環境の変化が激しいときの自分の心との付き合い方』
その模様をレポートします!
登壇者は、内科医・心療内科医・産業医 鈴木裕介先生です。

なんだか最近元気が出ない…正直疲れたなあ…そんな気持ちを抱いていませんか?環境の変化の激しい今だからこそ、自分の不安な気持ちや感情とうまく付き合っていくことが大切です。しかし、利用者のために、仲間のためにと、責任感が強い人ほど自分の不調に蓋をして頑張りすぎてしまっている人も多いのではないでしょうか。新型コロナウイルスと長く付き合って行かなければならない状況だからこそ、自分の心との付き合い方を学んでいきました。

その様子をシェアします!

鈴木先生は、「コロナ時代におけるメンタルヘルス」についてお話される前に、「メンタルヘルスのあらまし」を教えてくださいました。

「医療・福祉」はメンタル的にハイリスクな業界


職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査(H23 労働政策研究研修機構)によると、メンタルヘルスに問題を抱えている社員(正社員・産業別)の割合がダントツで多いのは、「医療、福祉」です。

メンタル的にハイリスクな業界であることは押さえておきましょう。

メンタルヘルスが低下すると、労働生産性も下がります。

メンタルヘルス低下時の生産性は、健康時の53%と言われています。
もちろん、身体の不調でも生産性は下がります。

メンタルに加え、身体の調子も悪いと、より辛くなります。
例えば、常に30%生産性が低下した状態で10日間勤務すると、3日欠勤するのと同じ損失という計算になります。

ですから、なるべく症状が軽いうちに抑えていったほうが良いですね。

気分変調性障害

次に、うつ周辺の用語の定義について教えていただきました。

鈴木先生は、気分変調性障害について気に留めて欲しいと仰いました。

気分変調性障害を持つ方は、思春期くらいから抑うつ気分や自分に対する欠損感が継続し、まったりとした「死にたい」気持ちをずっと持っています。

以下のような項目に当てはまる場合、気分変調性障害に該当している可能性があります。

・自分は人間としてどこか欠けている
・自分は何をやってもうまくいかない
・何かを言って波風を立てるくらいなら、黙って我慢していたほうがマシだ
・人生がうまくいかないのは、今まで自分がちゃんといきてこなかったからだ
・人が「本当の自分」を知ってしまったら、きっと嫌いになるだろう
・何かを「したい」と思うことは、わがままなことだと思う。
・人生は苦しい試練の連続であり、それを楽しめるとはとても思えない
・これから先の人生に希望があると思えない

潜在的にこのような思いを持っている人は多いと思います。そして、性格のせいだと考えて、病気であるという意識を持ちにくいです。

人のケアをしている仕事に就いている人こそ、気分変調性障害の症状のようなことに苦しんでいる人が多いと思います。メンタルの問題は、基本的に命に関わる問題なので、自分のことや、周りの人のことも考えてほしいです。

コロナ時代のメンタルヘルス

コロナ時代のメンタルヘルスはどのような特徴があるのでしょうか?

二極化している」ということです。
基本的に皆悪くなっているのですが、良くなっている人もいる というのがユニークです。
例えば、「在宅でのリモートワーク、ラッキー!」と思う人もいるでしょう。

鈴木先生は、「外出が少なくなってメンタルに不調がありましたか?」という内容のアンケートをとりました。結果は、「落ち気味」が半分以上。「変わらない」が4分の1。そして、「良くなっている」と答えた人の割合が2割だったそうです。

患者さんを診ていると、良くなっている人も確かにいます。しかし、基本的に悪くなっている人が多いです。それは、悪くなる理由が多いからです。


コロナ時代において、メンタルが悪くなる理由とは何なのでしょうか?
ストレス学の観点からお話をいただきました。

ストレス学超入門

ストレスは物理用語で、「歪み」を表します。物体の歪みと同じようなことが動物や人間の心にも起こり得るのです。

ストレスは、ストレッサーとストレス反応という2つの相互作用によって成り立っています。
ストレッサーとは、自分にストレスを与える刺激や環境的要因のことです。
大きく3つに分けられます。
「生活環境ストレッサー」、「外傷性ストレッサー」と「心理的ストレッサー」の3つです。

「新型コロナウイルス感染症が感染拡大している現在の社会がなぜしんどいのか」
その答えについて、鈴木先生はこう語ります。

(新型コロナウイルス感染症が感染拡大した結果、)3つのストレッサー全てを受けることになるからです。生活環境の変化もあるし、社会的不安も大きいですし、「自分も感染してしまうかもしれない」、「感染したら、死んでしまうかもしれない」といった不安や恐怖を引き起こしてしまいます。

変化はすべからくストレスに

次に、生活環境ストレッサーについて詳しくお話してくださいました。

ストレス・マグニチュード」をご存知でしょうか。
日常生活で経験する出来事をもとにストレスを数値化した評価尺度のことです。
配偶者の死によるストレス→100点、結婚によるストレス→50点を基準値として数値化されています。

ここで注目したいことは、一般的に悲しいと捉えられる出来事だけではなく、「結婚」、「転職」や「配置転換(昇進も含む)」といったプラスに捉えられるものもストレスになるということです。

変化はすべからくストレスであることを知っておくことが大事です。

コロナ時代、調子が悪くて当たり前

外傷性ストレッサーについても、注目したいです。
外傷的トラウマになる前提条件は3つあります。

・予想・予測のつかなさ
・不動性、動けなさ
・人と繋がっているという感覚の欠如

いかがでしょうか?今、まさにそんな状況ではないでしょうか。

(新型コロナウイルス感染症が感染拡大してから)トラウマになるようなことが多いので、調子が悪くて当たり前。そのくらい大きなことが起こっているという認識でいたほうが良いですよ。

ストレッサーの力を受けると、どのような反応が自分自身に起こってくるのでしょうか。
ストレス反応も3つに大別できます。

「心理面」、「行動面」や「身体面」に色々な反応が起こります。

自分自身でこれらの反応に気付くことが大事です。

ストレス反応は、時間差で訪れることもあるそうです。

ストレスを受けている時に、どのような変化があるのかを説明します。

まずは、「ショック期」があり、急な不調が起こります。その後、だんだん慣れ、1〜3カ月は、安定した状態が保たれます。しかし、3カ月後ズドーンと、状態が悪くなってしまう。

このような状態を「過剰適応」と言います。急な不調の後、慣れてきたところで、「大丈夫」と思い込み、元気の前借りをし続けてしまうのです。新型コロナウイルス感染症が感染拡大してきた頃、安定しているように見えた人は、時間差でダメージが出てくるかもしれないですね。

自分を助ける呪文「コーピング」

誰もがストレスフルな昨今、私たちはいかにストレスに対応していけばよいのでしょうか。

鈴木先生は、「コーピング」という言葉を教えてくださいました。

コーピングとは、ストレスに対応するための「自分助け」の行動のことです。

コーピングは2つに分けられます。

課題焦点型コーピング
 自分がストレスを受けている本質的なものにアプローチします。

情動焦点型コーピング
 自分の感情にアプローチします。

具体的には、以下の通りです。

コーピングレパートリーは多彩であればあるほど良いそうです。
また、例えば「海外旅行」といった高コストのものは気力や体力が無いと難しいので、もっと小粒なコーピングでやり繰りできるようにした方が良いとのこと。

皆さんはこれから、どんなコーピングをしていこうと思いますか?

 

トークセッション

後半は、鈴木先生、KAIGO LEADERSの発起人秋本可愛とKAIGO LEADERSメンバーで障害者の入所施設で支援職として働いている叶世美奈の3人でのトークセッションが繰り広げられました。

秋本:コロナの影響でかなせちゃん自身、環境や気持ちの変化などありましたか?

 

叶世:一番辛かったのは、職員以外の外部の人が来られなくて、利用者さんが今までしてきた普段の活動が出来なくなったことです。利用者さんが混乱してしまい、職員も支援がうまくいかなくて、もどかしかったです。

 

秋本:そう感じている人は多いと思います。「自分が感染していたらどうしよう」という不安を抱えている人も多いですね。そのような正解のないストレスや不安と、どのように付き合ったら良いのでしょうか。

 

鈴木:「感染しているんじゃないか」「持ち込んでしまうんじゃないか」というのは、結局どっちなのかわからないこと。

「どっちなのかわからない」というのが一番不安なんです。
何か情報を得ることによって解消できる不安なのであれば、情報を得るためのアクションをした方が良いです。

そして、不安な気持ちをシェアすることも大事です。
その際、「ネガティブなことを言っても崩れない人間関係」があることは癒しになります。
誰かに伝えることで、不安の圧力は下がります。

 

秋本:現場の方たちは、自分の気持ちよりも利用者の気持ちに寄り添うことを優先的に考えていて、仲間で不安の共有をあまりできていないと思います。かなせちゃんはどう思った?

 

叶世:マニュアルが整備されているので、それに基づいて、できることをやっていくしかないという状況です。不安を共有することは勇気がいるし、難しいと思います。

 

鈴木:ネガティブ情報だもんね。ネガティブな情報を話して、しっかり受け止めてもらえる場が少ないと感じます。実際の人間関係のなかで言えないのであれば、カウンセリング等で話す機会を持って、言葉にする練習をするのもアリだと思います。

 

秋本:全員が知ってなくても、職場の中に1人でもネガティブなことが言える人がいると違いますよね。
新型コロナウイルス感染症が感染拡大しているなか、医療従事者や介護職員は「頑張らないと!」という空気感があると思います。そういったなか、「マイナスな感情を抱くことはダメなこと」と捉えられてしまう感覚がありました。
そもそも、自分のマイナスな感情に気付いたり、受け止めることができていないんじゃないかとも感じます。

 

鈴木:「自分より利用者さんの方が大変だから、自分どころじゃない!」と思いがちです。自分のケアをせずに人のケアをし続けることはできません。そこに気づくことが重要です!「相手も喉が渇いているけど、自分も喉が渇いている」という事実を認めてあげられるようになりましょう。どうしても、「自分だけは水を与えられるべき存在だと思えない」のだとしたら、そこには「認知の歪み」があるのかもしれないし、さきほどの「気分変調性障害」が関係しているかもしれないし、幼少期の環境とか、いろんな外傷的な体験が関係しているのかもしれません。いずれにしろ、そのことが、支援職をしていく上での、自身の課題となると思います。この先も継続的にケアの仕事に関わっていきたいのであれば、その課題に向き合う必要があると考えます。

フェアに接してくれる人間関係の中でこそ、自分も大事にする感覚が培われると思います。

 

叶世:自分自身の課題であると気づき、少しずつ認められたとき、その根本的な問題といかに向き合えば良いのでしょうか。

 

鈴木:開けていない感情の樽を開けるのは難しいです。生活が安定していないタイミングで開けるのは、ベストでは無いと思います。そのような時は、まずは生活を安定させた方が良いです。
そして、感情の樽を開ける作業は、1人ではやらない方が良いです。メンタルに悪影響を与えることもあります。「そこそこ信頼できる人がいるな」と思ったときがベストだと思います。

 

 

Q&A

ここからは、参加者の皆さんのご質問にお答えいただきました。


質問① 新型コロナウイルス感染症と向き合い、怖さからパニックになったり、大きな不安を抱えている職員への良い対応を教えてください。

 


鈴木:自分の周りの一番専門性の高い人に、自分の心配ごととして、その職員さんについて相談するのが良いと思います。「○○さんが心配」という話を専門性の高い人に聞いてもらえば、まず自分の心を落ち着かせることができます。

職員本人と接する際は、まずは身体の症状を聞きましょう。「しんどそうに見えるけれど、寝れてる?」「ご飯食べてる?」とか、具体的な行動に関する質問は答えやすいですね。 「大丈夫?」とか「調子どう?」みたいな聴き方だと、大丈夫じゃなくても「大丈夫です!」って言ってしまう人が多いので。

 

コーピングは、自分で見つけて、リスト化するのが大事


質問② 介護の仕事を始めた新人です。コロナに加えて、新しい仕事で疲れきってしまいます。オススメのコーピングはありますか?

 


鈴木:コーピングは、自分で見つけて、それをリスト化していくプロセスが大事なんです。効果が高いことが実証されていてオススメしやすいのは、マインドフルネス、瞑想、ヨガや有酸素運動等ですね。その他にも、料理、散歩や、自然環境に触れ合う…等。何が正しいのかではなく、自分の好みに合わせて見つけていくことが重要です。

 

対人関係の過敏さは対人関係によって改善する

質問③ 人からの評価が気になってプレッシャーになっています。まだ新人なので、これから経験を積んだり、自信を持てるようになれば気にならなくなりますか?

 


鈴木:残念ながら、評価が全く気にならなくなるということはないだろうと思います。ある程度できるようになればになるかもしれませんが、そもそも仕事の場というのは、労働の対価としてお金をもらう場だから、評価されることからは離れられないです。だから、「ジャッジされるのが怖い」という人であればこそ、プライベートでは、仕事とは関係ない、評価してこないタイプの人とのつながりを大切にしましょう。評価の世界にばかり居ると、対人関係の過敏性は良くならないのです。
対人関係の敏感さは対人関係によって改善します。だからこそ、対人関係を諦めないことが重要です。

 

 



秋本:最後に参加者の皆さんへ、一言お願いします。

 

鈴木:さきほど話した、「自分に水をあげられない」タイプの方の中には、これまでの間に「生きていても仕方ないかな」という気持ちになったことがある人も少なくないだろうと思います。ただ、そんな中で、ここまで生きてこれちゃったことには、きっと意味があると思うんですよね。だから、まずはここまで生き残ってこれたことが素晴らしいことなんじゃないかと思います。そういう人たちって、たぶん自分が思っているよりも、生きるエネルギーが強い可能性が高いです。

対人関係の過敏さが癒されるような、本当に安心できる相手を見つけたり、関係をつくることって、実際すごい難しいことだと思います。でも、サイコロを振ることを諦めないでほしいです。ずっと「1」ばっかりが出ることはないです。他の目が出ているにも関わらず、「1」だと思ってしまう考え方はあるかもしれないですが、これは自分の課題。世の中がこんなに変わっているのに、自分の「不幸」だけが変わらないというのは、それはそれでファンタジーだと思うんですよ。人間っていうのは、生きてたら細胞も入れ替わるし、放っておいても勝手に変わってしまうものだから。

 

鈴木先生のメッセージに心が暖まりました。

今がとても辛い状況にあったとしても、鈴木先生のアドバイスを参考に生きていくことで、多くの小さな変化が起こりそうです。しんどくて当たり前なコロナ時代だからこそ、他者だけではなく、自分と向き合い、大切にしていきたいですね。

 

ゲストプロフィール


鈴木裕介 内科医・心療内科医・産業医 
2008年高知大学卒。内科医として高知県内の病院に勤務後、一般社団法人高知医療再生機構にて医療広報や若手医療職のメンタルヘルス支援などに従事。2015年よりハイズ株式会社に参画、コンサルタントとして経営視点から医療現場の環境改善に従事。2018年、「セーブポイント(安心の拠点)」をコンセプトとした秋葉原saveクリニックを高知時代の仲間と共に開業、院長に就任。また、研修医時代の近親者の自死をきっかけとし、ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、産業医活動や講演、SNSでの情報発信を積極的に行っている。NPO法人soarなど複数の組織の産業医も務め、メンタルヘルス対策に務める。2020年1月に初の単著「NOと言える人になる〜他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法〜」をアスコム社より出版。同年4月に著書「メンタル・クエスト〜心のHPが0になりそうな自分を楽にする本〜」を大和出版より発売。ゲーム「スプラトゥーン2」を心から愛し、プレイ時間は2500時間超。

開催概要

日時:2020年7月11日(土) 19:00~21:00
場所:オンライン(Zoom配信)

 

この記事を書いた人

森近 恵梨子 Eriko Morichika
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株式会社Blanketライター/プロジェクトマネージャー
社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員

介護深堀り工事現場監督(自称)。正真正銘の介護オタク。温泉が湧き出るまで、介護を深く掘り続けます。
フリーランス 介護職員&ライター&講師。


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