活動内容 ACTIVITIES

認知症当事者と社会を変える!介護保険サービスを受けながら“はたらく”ことを当たり前に。(DAYS BLG!)

全国での活動 REPORT 全国 オンライン

日本各地には、ワクワクする介護・福祉の実践がたくさんあります。
2021年717日と18日に全国介護・福祉事業所オンラインツアーと題し、佐賀県、京都府、神奈川県、東京都の全国4事業者の取り組みを2日間にわたりご紹介いたしました。
昨年おこなわれた第1弾のテーマは「福祉からの地域づくり」でした。

今回の第2弾のテーマは「はたらく」

高齢になったり、障害があって誰かのサポートを受けることがあっても、誰かのために”はたらく”ことで、活躍できる機会が生まれます。

紹介する事業所で”はたらく”人々の暮らしは、人生100年時代における新たなロールモデルになることでしょう。

その1つめのツアー先、東京都のDAYS BLG!の代表前田隆行さんのお話をレポートします。
認知症当事者と一緒に想いをカタチにした実践を伺いました。

DAYS BLG!とは?

DAYS BLG!に通う、要介護の方や、認知症を持つ方々はお世話される対象ではありません。仕事場で労働する姿・地域社会や人の役に立つボランティア活動をする姿・家や施設など所属している場で役に立つ姿がそこにはあります。

現在は、はたらくことを通じての仲間づくり・居場所づくりにも力点を置き活動しながら、社会的課題を共有し解決していくアイデアも実践中です。

いろいろな”はたらく” 

“はたらく”とは、お金を稼ぐ”はたらく”だけではありません。人の役に立つ”はたらく”や社会の役に立つ”はたらく”だったり、いろいろな”はたらく”があります。

これからもっと認知症のある人たちが地域社会で生活していくことになります。認知症を受容して、自分が苦手なことは周りにヘルプを求め、できないこと、苦手なことを埋めていきながら、まだまだ人生を楽しんでいく実際の姿や活動をもっと多くの人たちに知ってもらわないといけません。だからこそ、認知症であってもそうじゃなくても、はたらきたい人が、はたらける社会になったらいいなと思っています。 

“はたらく”だけでは不十分

前田さんは誰もが”はたらく”ことができる社会を目指しています。
しかし、”はたらく”だけでは足りないとのこと。

上記のスライドからは、「生きがいが有る方」と「生きがいが無い方」を比較すると、「生きがいが有る方」の方が寿命が長いということが読み取れます。

また、人生の目的を持っている人の方が長生きをするというデータもあります。

「孤立/引きこもり」ではない人は長生きするというデータも。

孤立はタバコやアルコールと同様に人を殺すとも言われています。

今後、超高齢社会において、社会的つながりは健康で文化的な生活を送る上で必要不可欠な要因であり、年齢等関係なく社会参加が求められるということです。

超高齢社会では、認知症と診断される方が増えていきます。

一番の認知症の要因と言われているものは加齢です。「年齢を重ねれば誰もが認知症になる可能性がある」というのは皆さん耳にされたことがあると思うんですね。ということは、認知症と共に生きることは前提でもあり、誰もがなる可能性が示唆されている現在、「認知症の人を変える」のではなく、社会や私たちが変わることによって、誰もが生きやすい社会へとシフトチェンジしていく必要があります

どのように変えていけば良いのでしょうか。

認知症の人を「困った人」といったステレオタイプのイメージを持つのではなく、「新しいチャレンジをすることができる」「得手、不得手はあるけど、役割を担うことができる」というイメージを広げていく。そうすることで、「認知症=終わり」ではなく、「認知症であっても認知症とともに生きていく社会」が求められるようになります。周りが“障害”なので、周りを変えることによって、その人たちが生きやすい社会になることを望んでいます。みんなやりましょうよ、がんばりましょうよ。

認知症当事者が謝礼を受け取れるように

実際に、前田さんは認知症当事者と共に、“周り“を変え、社会を変えています。
例えば、認知症当事者が介護保険制度の中でサービスを利用しながらもはたらけるよう、行政や企業と交渉を重ね、現在は認知症当事者が謝礼を受け取れるようになりました。

2006年頃、とある介護保険サービスの事業所を利用する認知症当事者が町田市内の保育園の方から依頼を受けてボランティア活動に出掛けていました。介護保険のサービスを使いながらも、保育園のペンキ塗りやワックス掛けなどを担っていたのです。そこで、やはり「対価がほしい」という意見が出ました。現役の頃のようなお金を貰えないのはわかっているけど、社会に認められるというのが目に見えるのが“お金”でした。

しかし、当時は、「認知症を持つ人が働けるわけがないだろう」という認識がひろがっていました。

行政からも「働けるなら介護保険サービスを使わなくて良いのでは」「働けるなら雇用契約を結んで働けば良い」といった意見を最初は言われたそうです。

前田さんは、認知症当事者の方と一緒に厚生労働省に出向いて考えを共有しました。

医療保険を活用して医療サービスを受けながら働いている人はいっぱいいます。障害福祉では、障害を持ちながらも働いている人もたくさんいます。では、どうして、介護保険の制度だけ、介護を受けながら働いてはいけないのでしょうか。何も悪いことをしているわけではなくて、本人の目標を達成するために介護保険というツールを使って働いて、謝礼を受け取ることのお手伝いをする。それは介護保険サービスになり得るのではないか?

このように声を発していくことで、 “周り”や社会は変わっていったのです。

2012年に、介護保険を受けながらも「有償ボランティア」として活動することができるようになりました。労働基準法に規定する賃金という形ではなく、“謝礼“を受け取ることが認められたのです。
(当時は、「若年性認知症の方」という年齢制限がありました。)

「制度のせいで出来ない」ではなく、少しずつ制度を変えて、“周り“を変え、社会を変えていけるのですね。
そのような過程を経て、DAYS BLG!がスタートしました。

「介護する側」「介護される側」という線引き無しに、皆が“メンバー“

DAYS BLG!は、定員13名の地域密着型通所介護事業所です。スタッフは3名とのこと。
前田さんは、その通われている方13名とスタッフ3名を総称して「“メンバー”が16名います。」と説明されました。

“メンバー”という呼び方にはどのような意味が込められているのでしょうか。

「介護する側」、「される側」というような線引きをせずに、そこに1日集まった仲間で時間を過ごしていき、活動を共にしていく。そういう立ち位置という意味合いです。誰しも得手不得手があるわけです。我々も助けてもらうことがたくさんありますし、助けることも沢山あります。でもそれって、人との付き合いのなかで当然のことだと思います。

また、この“メンバー“には、地域の人たちも含まれるとのこと。

駄菓子屋さんの運営をしています。そこに来ている子どもたちもメンバーです。小学生も、じいちゃんばあちゃんに色々教えてもらうわけです。

駄菓子屋では、子どもたちの「こんなの欲しい」というリクエストを聞いて、それを問屋さんに仕入れに行って、値付けや商品陳列をする等全てメンバーさんが担っているそうです。

また、駄菓子を買いにくる子どもたちが、お手伝いをしてくれることもあるとのこと。

大切な地域との窓口の1つになっています。

全てを専門職がやらなきゃいけないわけではありません。地域の人たちにも力を貸してもらいつつ、こちらも何か力を貸しつつの「支え、支えられの関係」ができるわけですよね。いかに地域をデザインしていくか、地域を作っていくかというのが目指すべきことなんだと思います。

「ボランティア活動」から「社会参加活動」へ

DAYS BLG!が活動を続けていると、平成30年に、介護保険を受けながらも「有償ボランティア」として活動することができる対象についての年齢制限が撤廃され、「若年性認知症の方」に限定されなくなりました。また、できる活動が、「ボランティア活動」から「社会参加活動」へと、範囲が拡大されました。

国の方針も「社会参加活動」を通じて、充実した人生を過ごせるように働きかける動きになっていきました。

DAYS BLG!と連携している企業は以下の通りです。

謝礼が発生する形で、このような色々な企業をサポートしています。HONDAは洗車、キャノンは骨伝導イヤホンづくり、富士通は「生活のしにくさをお手伝いするアプリ」づくり、こどもの国では、ベンチを拭いています。

それぞれほぼ毎日、このような活動の依頼が来ています。それら数種類の活動の中で、「今日はこれをやろう」と皆さん選んで出掛けています。やらされるのではなく、自分が「これだったらやりたい」もしくは「仲間がやっているからやってみようか」そういう想いから選ばれていくわけですね。

DAYS BLG!のハブ機能とは?

DAYS BLG!は、ハブ機能を持っているとのこと。

本人が「どのような生活を送っていきたいか」、「どのようになりたいのか」その“想い“をDAYS BLG!に持ってきて、場所だったり、仲間だったり、サービスを利用するわけですね。あくまでも、本人にとっては「ツール」。そのツールを利用して、“社会“ “地域“ “企業” というところにつながり、その“想い“が実現していくわけです。

多くの介護事業者ではまだまだその“想い“が、“家族の想い“になってしまっているケースが多いと前田さんは指摘します。

まずは、“本人の想い“を実現するために介護保険のサービスがあるんです。

自分が得意なことを持ち寄ってやれば、負担感を抱かない

ここからは、DAYS BLG!のメンバーの皆さんがどのように、はたらいているのかを紹介してくださいました。

例えば、ショッパー(地域新聞)をBLGの周り350世帯にポスティングしています。
洗車の活動の様子はどのような雰囲気なのでしょうか。

みなさん仕事が丁寧ですよね。窓ガラスの汚れを認識しにくい方の代わりに「俺に任せとけ!」とその役割を担ってくれる人がいたり、「屋根は私に任せといて!」とか、色んな人が“できること”、“得意なこと”をシェアしてみんなの力で洗車を成し遂げていきます。1人で全部1台を洗車するって考えると「嫌だな」と感じますが、自分が得意なことを持ち寄ってやれば負担感も感じないかなと思います。

「社会の役に立ちたい」という想いを叶える

「お金はもういいんだ」、だけど、「誰かの役に立ちたい」「社会の役に立ちたい」、そのような想いをカタチにする活動もあるそうです。

町田市内の学童保育14箇所において、子どもたちに向けて、認知症を持つおばあちゃんと僕を主人公にした『やさしさはおくすり』という紙芝居の読み聞かせの活動をメンバーさんがおこなっています。8年くらい活動し、延べ6000名を超える子どもたちに読み聞かせをしてきました。

この紙芝居、読み終わった後に必ずメンバーから子どもたちに「僕たち認知症なんだよ」とカミングアウトします。すると、子どもたちは驚きます。その後、「道に迷った時はどんな気持ちなの?」とか「家族の名前を忘れちゃうの?」とか色んな質問をされます。それに1つひとつ丁寧に答えるのです。

メンバーさんの顔を子どもたちに覚えてもらい、道でもし会ったら挨拶してもらいたいという目的もあるとのこと。

メンバーさんから子どもたちへメッセージとして「挨拶をした時に、もしかすると私は道に迷っているかもしれません。だけど、挨拶をしてもらえるとホッとします」。そんな挨拶が自然と生まれる地域づくりの1つのツールになればとメンバーさんと一緒に考えています。

「自分が認知症なんだ」と言える環境

メンバーさんが認知症について語る動画が流れました。認知症を受容し、周りに認知症当事者が多くいるから「慣れてきた」と仰ったり、自分が認知症であることを「知られたくない」のではなく、「知ってほしい」と発言されていました。

DAYS BLG!は、認知症ということを全員の方が受容しています。「認知症になったら怖い」、「認知症になりたくない」、「認知症を認めたくない」、「認知症になったら何も出来なくなる、ダメだ、もう終わりだ」といったようなイメージではなくて、「自分は認知症なんだ」と言える環境がそこにあるわけですね。活動を通じて、「あっ、この人まだまでできるんだね!すごいね!」と認め合うことができるわけです。そんな場所なんです。

DAYS BLG!が特別な場所ではなく、社会全体がこうなったら良いなと強く感じました。

ゲスト紹介

DAYS BLG NPO 町田市つながりの開 理事長 前田隆行

1976年、神奈川県生まれ。
University of Canterbury卒
アルファ医療福祉専門学校卒
老年精神科ソーシャルワーカー
在宅介護支援センター
第三セクターのE型デイサービス
DAYS BLG! 代表
特定非営利活動法人町田市つながりの開 町田市つながりの開 理事長
株式会社100BLG 代表取締役社長
特定非営利活動法人 若年認知症サポートセンター 理事
特定非営利活動法人 認知症フレンドシップクラブ アドバイザリーボード
一般社団法人 日本認知症本人ワーキンググループ 理事

認知症当事者と一緒に「想いをカタチ」へと実現すべく、認知症当事者が介護保険制度の中でサービスを利用しながら働けるよう、行政や企業と交渉を重ね、現在は認知症当事者が謝礼を受け取れるようになった。
最近は働くことを通じての仲間づくりや、居場所づくりに力点を置いて活動をしつつ、社会的課題を共有することで解決していくアイデアを実践中。
https://www.facebook.com/DAYSBLG

イベント概要

【日時】
2日連続オンラインにて開催しました。
❶7月17() 13:3016:1516:30〜交流会あり)
❷7月18() 13:3016:1516:30〜交流会あり)

この記事を書いた人

森近 恵梨子 Eriko Morichika
twitter/note

株式会社Blanket ライター/プロジェクトマネージャー
社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員
介護深堀り工事現場監督(自称)。正真正銘の介護オタク。温泉が湧き出るまで、介護を深く掘り続けます。
フリーランス 介護職員&ライター&講師。


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