「介護をする人も、介護をされる人も温かい」ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表 志村真介氏が語る対話の可能性


「PRESENT」は、「live in the present(今を生きる)」という私たちの意志のもと、私たちが私たちなりに日本の未来を考え、学びたいテーマをもとに素敵な講師をお招きし、一緒に考え対話し繋がるご褒美(プレゼント)のような学びの場です。

1つの目標年数として掲げる2025年。私たちの欲しい未来は、今の積み重ねによってつくられます。その今の積み重ねが未来のプレゼントとなるようにと、想いを込めて企画しました。

前回のレポートは大変長文にも関わらず多くの方にご覧頂き、大変好評頂きました。(やっぱり)今回も、想いを込めすぎて長くなりましたが、どうぞ皆さん最後まで根気よくお付き合い頂けたらと思います。

333

2015年8月8日、「ダイアログで介護は変わるのか?」をテーマにダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの志村真介氏にお越し頂きました。株式会社ディスコ様に会場協賛頂き、飯田橋にある「神楽坂Human Capital Studio」にて、開催致しました。

メインコーディネーターは代表の秋本可愛、サブファシリテーターはPRESENT運営チームメンバー医師 田中公孝が務めました。

最初に秋本から、PRESENTのコンセプトと、なぜ「ダイアログで介護は変わるのか?」というテーマでイベントを開催することになったのか伝えられました。

11873458_299986263504919_2508773194446465929_n

『ダイアログで介護は変わるのか?』と、少し挑戦的なテーマではありますが、このテーマを設定したのは、私自身、「ダイアログで介護は変わるのではないか」と、可能性を感じているからです。

今、この超高齢社会において、様々な課題で溢れています。早期離職、介護うつ、虐待、介護離職・・・。今ある問題の全てと言っても過言ではないほどに、「人と人との関係性」が密接に関わっています。

例えば、介護人材の離職の問題。人材獲得、定着は介護業界にとって大きなテーマです。離職のその最大の理由、皆さんもご存知の通り、人間関係にあります。

私は若手に限らずこれまで多くの介護従事者とお話をさせて頂く機会がありました。1人1人話を聞いていると、とても素敵な思いを持っています。ですが、不思議と組織の中ではその思いは見えなかったり、活かされていない現状があるどころか、素敵な思いを持った人同士でも良好な関係を築けていなかったり、強いては問題を引き起こしてしまうのです。

他にも、現在高齢者を地域で支えましょうという方針の中で、多職種連携の重要性がうたわれていますが、個々人は同じ方向を目指しているにも関わらず、専門職としてや、組織の代表としてとなるとなかなか話が進まないどころか、本来ある同じ思いすら見えなくなってしまいます。

もっと1人1人がありのままに、対等に会話し関係を築くことができたら、もっと介護の世界は良くなるのではないかと思い、本日は志村さんをお呼びしました。

11898825_299988696838009_7241783339573198804_n

志村氏の講演は、「ダイアログで介護は変わるのか?」というテーマのもと、前半は人生をかけてダイアログを広めようとしている志村さんの想い・問題意識からダイアログの重要性を掴み、後半は実践に基づくお話の2部構成で行われました。

講演はスティーブ・ジョブズのこの言葉から始まります。

 

「Stay Hungly, Stay Foolish」

人生の時間は限られている。

あなた達は誰かが考えた結果に従って生きて行く必要はありません。

自分の内なる声が雑音に打ち消されないことです。

最も大切なことは自分自身の直感に素直に従い勇気を持って行動することです。

それ以外のことは全て二の次でいいのです。

 

「この言葉は、とても大切ですが、忘れがちです。例えば、今日のような学びの場では情報は外から入ってくると思いがちですが、話の中にヒントがあるのではなく、話を聞いたり、人と出会ったりする中で、自分の奥深くから湧いてくるものなんですね。答えはもう皆さんの中に既にあるのです。」と、冒頭お話しがありました。

11954813_299986370171575_5141916537665808871_n

志村さんは昨年2月22日、イベントでの講演中に背中に激痛が走り、病院に運ばれました。診断の結果は、大動脈解離。95%がその瞬間に死に至り、その後の対応が遅れるとその多くが命を失ってしまいますが、奇跡的に手術は成功し、後遺症が残ることもなく奇跡的に回復されました。

後遺症として目が見えなくなる可能性があると言われていた当時、不安に思っていた志村さんにダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下、DID)でアテンド(暗闇の案内役)を務める視覚障がい者は、「別にいーよ。目が見えなくなったら、アテンドすればいいから。見えないくらい、なんでもないんだから。」と伝え、例えば目が見えない夫婦は、2人の子育て中にも関わらず「代表が倒れて大変なんだから」と、子供を保育園に預けるなどしてDIDに復帰、多くの人がDIDを支えています。

志村さんがお一人での講演活動を再開したのは、まだ今年6月のこと。退院した当初は寝返りすら打つことができず、今日に至るまで懸命にリハビリに取り組んでこられました。

元気なときには思いもしていなかった介護生活を一番近くで支えてくれたのは奥さんである、バースセラピストの志村季世恵さん。志村さんは、倒れる前に100万回くらい季世恵さんにプロポーズをされていたそうなのですが、断られ続けていました。倒れたときにストレッチャーに乗って手術室に向かう途中、季世恵さんに「生きて帰ってきたら一緒になってもいいよ」と言われ、こうして戻ってくることができ今一緒にいると、恥ずかしそうにお話して下さいました。

そこから始まった、「バースセラピスト志村季世恵式リハビリ」!
(志村季世恵さんの著書「さよならの先」のFacebookページはこちら)

おにぎりを握ったり、みかんやりんごの皮を向いたり、夏には七夕用の笹を取りにいき、秋には落ち葉狩り。五感を開き、どんな時でも遊び心を忘れない。

1912281_10152261888054246_1653835977_n
志村さんのFacebookより 3月15日のリハビリ日記。

「みかんの皮を剥くだけでは面白くないので、指を突っ込んでどこが一番気持ちいいか確かめたりしていました。バカみたいなんですけどね。」と。日常の暮らしにある食や四季を楽しむこと、きっといつも以上に丁寧に楽しむこと、それが結果としてリハビリになっていたという印象を受けました。

1904092_10152274854684246_897243131_n
志村さんのFacebookより、倒れてから約1ヶ月・3月21日リハビリ日記より。写真に添えたコメントには、「さて5周年の乾杯は野菜ジュースに。林檎、人参、小松菜、蜜柑、檸檬。乾杯しようと季世恵さんにグラスを渡すとありがとうと言いながらにっこり笑い「はい、しんちゃん、もっと手を遠くまで伸ばして~!かんぱーい!!」リハビリ乾杯…。ううう、痛い、痛いよ。この乾杯、痛い」と記載。

季世恵式リハビリに取り組む中で、「これまでできないことばかり数えていた自分が、できることを少しずつ見つけていけばいいんだなということに気付きました」。


このあと、季世恵
さんが熱で倒れられたときにマスクに鼻と口を書いている写真をご紹介頂きました。相手が寝込んで、色々としてあげたいけど、またできないことを見つけ始めてしまう志村さんを気遣って行ったことのようです。

「こうやってやられると、こっちは笑うわけですよ。笑うと深刻さがだんだん溶けていくんですよ。きっと、明日死んでしまう、あと数時間で死んでしまうという中でその深刻さをいくら言っても、そこで笑ってても、きっと、変わんないってことを知ったんですね。

did-logo_s

DIDには、これまで様々なお客さんが来場されました。その中には余命10日と宣告されているがんの末期の方もいらっしゃいました。ダイアログの医療チームのバックアップによりDIDをご体験されていました。体験後、暗闇の中では、「がん患者」ではなく、”ただの自分”に戻れ、自由になれたと感想を話されていました。脳科学者の茂木健一郎氏は、「DIDの暗闇の中は胎内のような絶対な安心感がある」と言います。

「声帯を削除し声を出すことができない参加者のときは、丁寧に、丁寧にコミュニケーションを取り、暗闇の中でどうすれば良いか事前に話し合いました。暗い中で声が出せないとすごく怖いんです。じゃあ、手を何回叩いたら出ようというルールになったのですが、声が出ないと楽しい時に『楽しい』って言えないんですよ。ただ彼女に聞いてみると、口笛は吹けることが分かり、その時の参加者だけ、楽しいときは口笛を吹くというルールにしました。そうすると、暗闇の中で口笛が聞こえ、次第にハモってきて、終いには一曲口笛で演奏しました。」

何らかの障害をお持ちの方に体験して頂くためには、リスクも大きいためストレスを感じることもありますが、その方々を丁寧に受け入れるプロセスの中で、これまでよりも質が上がっていくことを教えられたと、志村さんは仰います。DIDには、このような特別なケースのためのマニュアルがあるわけではありません。「耳が聞こえ辛い」と言っても、低い音や高い音、左耳か右耳どちらが聞こえづらいのか、1人1人異なります。そのため、『全ての人に特別に』というコンセプトのもと、1人1人のできることに光を当ててサービスをつくっているのです。

現在日本には、年間3万人もの自殺者がいます。尊いかけがえのない命を自ら死を選択する前の過程で、「助けて」と声をあげることができないのです。DIDでは、暗闇のプロジェクトとして人と人とを繋ぐことを付加価値として提供しています。不思議と明るい中では、「ありがとう」という言葉も恥ずかしくて伝えられないことがあります。暗闇が生み出すその人らしく在れる対話の場は、社会問題解決の一助となるかもしれません。

ダイアログの社会課題解決への可能性を感じる中、志村さんから会場に次の問いかけがありました。

対話によってあなたは解決したい問題がありますか。
それはきっと、相手がいると思うので、誰との関係やどんな問題をご自身の中に抱いているのでしょうか。

このあと3~4人に分かれて志村さんからの問いのもとグループワークを行いました。

11887900_299994440170768_5876458121087995446_n
参加者が書いた「対話で解決したい課題」

後半はこれらの課題を解決するために、志村さんから具体的な実践に結びつくお話を頂きました。

「私どもダイアログ・イン・ザ・ダークの願いは、全ての人がそれぞれの個性を生かし、どちらかが無理することなく、誰もが生まれてきて良かったと思える、そんな社会を作ろうとしています。」

今年志村さんが出版された書籍「暗闇から世界が変わる ダイアログ・イン・ザ・ダークの挑戦」の帯には、次のようなメッセージが記載されています。

違いを知るということは、自分の世界を豊かにするということ。
ダイアログ・イン・ザ・ダークは、違いを知るための最高の装置だ。
───乙武洋匡氏

「皆さんが今、課題として出されたことはもしかしたら相手と融合することを意識されているかもしれません。例えば、相手に分かって欲しいとか、相手を分かりたいと。乙武さんは決してそうではなく、相手との違いをまず知ることだと仰っています。」

今、ヨーロッパではDIDだけでなく、耳が聞こえない状況のなかで聴覚障害者がアテンドする「ダイアログ・イン・サイレンス」と、70歳以上の高齢者がアテンドする「ダイアログ・ウィズ・タイム」も実施しています。耳が聞こえないこと、目が見えないこと、高齢であることは一般的にマイナスなイメージがありますが、彼らだからこそできることとしてポジティブに変換するプロジェクトが生まれています。

日本でも、2020年までにこの3つの対話のミュージアムをつくろうと始動しているとのことで、とても楽しみですね!!!

 

最後に志村さんが16年間DIDを運営する中で、具体的に日常で意識的に行っていらっしゃることをご紹介頂きました。

  1. 話しを最後まで自分の感情を入れないで聴く
    倒れる前は、先読みして自分の言葉を差し込んでしまい最後まで聞くことができませんでした。しかし、DIDの視覚障がい者のアテンドは、とても丁寧に話しを聞きます。決してその人の話しが終わるまで自分の言葉は差し込まず、丁寧に聞きます。今は最後まで聞けるようになりましたが、自分の感情が入ってしまい、ニュートラルに聞くことができません。そのため毎日トレーニングをしています。
  2. 朝、知らない人に挨拶をする
    毎朝誰かに絶対出会うと思うのですが、挨拶することってありますか。例えば掃除をしている人や、駅員さんなど、街中で色々なことをやってくれている人がいて、その人に「おはようございます」と挨拶をします。不思議と、100%返してくれます、朝は。(笑)日本の場合、無言の朝が多いので、知らない人に挨拶をします。
  3. 高速道路の料金所の人に微笑む
    私は車に乗ることが多いのですが、インターチェンジでETCがないところに遭遇する事ってありますよね。そのとき「なんで止まらないといけないんだろう」と思ってしまい、窓を閉めてガーンと行くと季世恵ちゃんに強烈に怒られるんですよね。何故かお金を出した方が、偉いと感じて対等でいられないときってありますよね。でも彼女は、もしかしたら料金所のおじさんは「事故が無いように」と思いを込めて声をかけていたり、お釣りを渡しているかもしれないと言います。その気持ちを無視せずに微笑むんです。些細な事ですがそのこで、暗闇をつくらなくても社会は段々と、良い方向に向かうかもしれません。

このあと後半のワークでは、志村さんから「社会や相手が悪いと決めつけるのではなく、私事として皆さんはどんな一歩が踏めますか」と問いかけがありました。

11951132_299993893504156_3253886481166566647_n

ご参加頂いた方の一歩は・・・

  • 1日1回必ず1人1人に感謝の言葉を伝える
  • 大切な人と対話をする
  • 自分のエゴが動いた瞬間を振り返る
  • 少し遠回りをして帰る
  • 電子機器に頼らず、対面で話す場をつくる
  • 1ヶ月に1回親父、お袋に会いに行きコミュニケーションをする

1人1人の思いの先にいる大切な人の顔が見えるような、とても暖かい対話が繰り広げられました。

11062932_299991100171102_4321267958168124313_n 11898942_299991313504414_67140162064187369_n 11902346_299991720171040_4886612692148275423_n 11904647_299991226837756_1298440948186949267_n

「ダイアログ」というテーマから、今回は「対話を生む食事」をコンセプトに東京の八百屋集団「Sunshine Grown」さんに素敵なお食事をご提供頂きました。

11870692_299985056838373_313444689236712950_n

一見食事なのかもわからない見た目に、「何これ」「どうやって食べるの」と参加者の会話を弾ませました。また、今回も参加者の方からお酒の差し入れを頂きました。ありがとうございました。

11873510_299991913504354_159772098065863561_n

イベントラストは、志村さんとのQ&Aへ。秋本がコーディネーターを務め、事前に参加者から寄せられた質問にお答え頂きました。

秋本:私は今日が志村さんと直接お目にかかるのは4回目なのですが、実は初めて志村さんとお会いしたのが昨年の2月22日、志村さんが倒れられた日だったんですね。今日1年半の時間を経て、こうやってお話を聞けるのがとても感慨深く思います。きっと1年半前とは全く違う話が今聞けていると思うのですが、介護される側になる前と、介護を受けた後、ご自身の中にどのような変化がありましたか。

志村:介護をされている人たちは自分の意思で選んでそうなったわけではなくて、いつの間にかそうなったという感じで言わば宿命なんですよ。その宿命を卑下するようなプロセスと、ゆっくりと受け入れていくという2つの選択肢があるでしょう。受け入れていくプロセスは柔らかい感性が重要なのです。そうすればこの宿命から、使命に変容させることも出来ます。

それが倒れる前は、A地点からB地点に早く行くのが効率的でいいと思っていたのですが、介護を受ける側になってそのプロセスをいかに楽しめるかという在り方に変わった気がします。例えば今日ここに飯田橋の駅からここまで皆さんは誰かと話されてきましたか?

参加者:誰とも喋っていません。

志村:誰とも話をせずにここにダイレクトに来られ、もしくはスマホを見たり、地図を見たりして、誰とも話さずに話をする場に来られたんですね。それがDIDのアテンドの場合、ここに来るまでに3人か4人、道を聞いたり、連れ添ってもらったりしながら来るんです。その間も無口だとお互い怖いんで「今日暑いですね」とか色んな話をしながら、全然知らない人に「ありがとうございました」と言って、ここに来ます。とても豊かな日常ですよね。

11947569_299992893504256_9039471368711298346_n

秋本:柔らかい感性を持てるまでの過程で、効率を求めないことで得られるものに気付いたり、そもそも以前とは違う身体の状態を受け入れること・・・とても大切なことだなと思うのですが、とても難しいですね。「対話」はどこまで効果があるものなのでしょうか。

志村:参考になるか分かりませんが、とある脳科学者が行った、3つのチームに競い合わせてどのチームが一番ゴールに近づけるかという研究があります。

  1. IQの高い人を集めたチーム
  2. その業界に精通している人を集めたチーム
  3. お互いが「今日ちょっと体調悪いんじゃないかな?」とか、「会社来るときに嫌なことあったんだな」という風な機微が分かる人を集めたチーム

普通はIQが高い優秀な人材を企業は求めます。また、介護業界であれば専門性の高い人や業界に精通している人を集めるかもしれません。しかしこの研究の結果では、3の人の気持ちがわかって対話できる柔らかい関係性であるチームが最も結果を出します。今、この変化の激しい時代には、これまでの成功パターンが成功へと導きません。IQが高いと全く新しいプロジェクトをやろうとしても、できない理由を言い始めます。また、業界に精通している人達は、固定概念があるので「やってもしょうがない」と、始めからやりません。だからイノベーションが起こるのは、3のようなチームなのです。だから対話が必要なんです。

秋本:それは面白い研究ですね。対話をする中で、例えば話を聞く側のとき、自分自身の色んな感情が湧いてきたり、内なる声が聞こえてきます。そのとき自分自身の声との対話はどうすればいいのでしょうか。

志村:実践して上手くいっていることとは言えませんが、DIDの中で、「食禅(じきぜん)」という禅宗の和尚さんをお招きして行うプログラムがあります。

3ee5f1c5e3c7b21b5c307f2bbfc3a3fb

志村:3つお椀がありまして、おかゆと漬物と胡麻塩とを丁寧に丁寧に・・・

その中で禅の話を色々教えて頂くのですが、例えば座って瞑想をしているとき、色々な雑念が飛んできますよね。それを抑えようとしたりするじゃないですか?なんかこう無にならないといけないと。

しかしその和尚さんは「無にならなくてもいい」とおっしゃいます。人だから勝手に湧いてくるんですよね。湧いてくることはいいと。ただ、それを追っかけなければいいんです。例えば朝起きて何となく不安だな〜と感じていたり、会社行きたくないな〜と思ったりしても、今そういう気持ちがあるんだな〜って気付いてあげるだけでいいんです。それを今日会社に行ってあの仕事するのは嫌だからな〜と追いかけ始めると、朝日を見て美しいなと感じる今の心がなくなってしまう。分かったような、分からないような話ですが、未来と過去に縛られると今がなくなってしまうんですよね。

秋本:聞いていて、頭では分かっていても難しいなって思ってしまいますね。とくにマイナスな感情が湧いてきたときは。

志村:いや、難しくはないんですよ。やってみるとできることだから。難しいなと思った感情があると難しくなるから、簡単でも難しくもなくて、ただそうだなと思う。

秋本:今、そう思おう、思おうとしています。(笑)

志村:(笑)

秋本:それでは最後に、例えばケアする人と患者さんの関係を築く中で、そもそもご本人が関わりを求めていなかったり、そもそも言葉として交わすことがなかなか難しい状態の方でも、ダイアログで生まれる関係性や深い気づきを得ることはできるのでしょうか。

志村:難しい質問ですよね。これ最後ですか?(笑)

秋本:はい(笑)

志村:今日ここに皆さんが来られたのは大体6時半位ですかね?今何時くらいですかね?

秋本:今9時15分くらいです。約3時間半が経とうとしています。

志村:では少し、目をつぶってみてください。3時間半も一緒にいたので、お互いのことをよく知っていると思います。では、皆さん目の前の人、もしくは隣の人の、服、靴や髪型を明確に伝えられる人は、目をつぶったまま手を挙げてもらっていいですか。

11953248_299994133504132_3124177315754846408_n

志村:各チーム1人もいませんね。これって何故でしょうか?皆さんは視覚に障害があるわけではなく、目は見えて、グループの人と真剣な話しをしてきました。皆さんは「視覚」があるにも関わらず、目の前で話した人の服すら見ていないんです。視覚障がい者は、もし3時間半あれば確かに目は見えませんが、一緒にいる人の特徴は大体話すことができますし、もっともっと関わっているんだと思うんですよ。皆さんは目を使っているが故に、こういうことを何となくにしてしまっている。

では、恥ずかしいかと思うので、目をつぶったまま隣の人と手を繋いでみてください。

11891154_299994116837467_8384205842985727179_n

志村:ね、これでつながりましたね。意外と手の感じは違いませんか?左の人は大きかったり、右は小さかったり、ウエットだったりドライだったり。

会場:(笑)

志村:そうなんですよ。右手と左手の人はこれまで触ってきたものも違うし、考え方も違うし、人生も違うし、当たり前なんです。だってみんな違うもの。

まだ目を閉じたまま。

温かくなってきましたか。人の手って温かいんですよ。だから上司も温かいし、介護する人も温かいし、介護されている人も温かいんだけれども、たかだか1m30cm離れるだけでこの温かさがわからないんですね。

会社や満員電車だったらセクハラだと見られるかもしれませんが、その中でも人はこういう体温を持って生きています・・・。皆さん方は今日目をあまり使わなかったので、その手を握ったまま静かに目を開けて、今度はそのチームの方を自分の目で、よーく見てあげてください。

会場://(照笑)

志村:では、手を離してみて下さい。

会場://(照笑)

志村:これが人と人が出会った時に相手を感じるということです。これがない限り、いくら対話しようが全く意味がありません。今この会場の雰囲気がちょっと変わったのを感じませんか?

会場:(うなずく)

志村:空間自体がやわらかくなったというか、なんとなくチームが仲間っぽいし、なんとなく信頼できるようになった感じがしませんか。でも、人数も変わっていないんですよ。椅子も机も何も変わっていません。何が変わったかというと、人を視る力、人との関わり方、人への興味や好奇心とか、そういうものです。だから私たちは暗闇の中でこれに挑戦しています。しかし、本当は暗闇をつくらなくてもこういう明るいところでできるのが理想なんです。その日が来るまで暗闇を作り続けるしかありません。できるだけ1日でも早く暗闇を作らない方がいいと思っています。できるはずです、人だから。そんな感じで今日は終えたいと思います、ありがとうございました。

イベントのおわりは、会場全体が暖かい空気に包まれ、この日の学びの場を築いた全ての人に拍手を送って、締められました。

11866362_299985010171711_5334397361290696542_n

最後に次回のイベントのお知らせです!次回は10月4日、堀田聰子さんをお招きし、「地域包括ケアシステムって結局、何?」をテーマに開催致します。

現在、「病院・施設から在宅・地域へ」をコンセプトに地域包括ケアシステムの構築の重要性が至るところで問われています。つまるところ、どんな状態なのでしょうか。そのために私たちはどんな姿で10年後を迎え、どんな働き方をしているのでしょうか。数多くの先進事例を研究する堀田聰子氏が考える「地域包括ケアシステム」の未来のカタチに迫りたいと思います。

スクリーンショット 2015-08-19 20.13.56

『PRESENT_03 堀田聰子』 詳細・お申し込みはこちら

次回も素敵な学びの時間を皆さんとともにつくれることを、楽しみにしております。

 

(文:秋本可愛 写真:北村真理)