「介護にイノベーションを起こすのは難しい。」医師 武藤真祐氏が語る2025年に向けた一歩とは


HEISEI KAIGO LEADERS新企画、欲張りな学びの場「PRESENT」。

この企画は、「live in the present(今を生きる)」という私たちの意志のもと、私たちが私たちなりに日本の未来を考え、学びたいテーマをもとに素敵な講師をお招きし、一緒に考え対話し繋がるご褒美(プレゼント)のような学びの場です。

1つの目標年数として掲げる2025年。私たちの欲しい未来は、今の積み重ねによってつくられます。その今の積み重ねが未来のプレゼントとなるようにと、想いを込めて企画しました。

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2015年5月23日、記念すべき初回は、「2025年問題への突破口!現場からイノベーションは起こせるのか。」をテーマに医師の武藤真祐氏にお越し頂きました。上野にある「いいオフィス」にて、70名を越える方にご参加頂きました。

メインコーディネーターは代表の秋本可愛、ファシリテーターはPRESENT運営チームメンバー医師 田中公孝が務めました。

最初に秋本から今回のイベントコンセプトが伝えられました。

PRESENTのコンセプトは、「聞く、考える、対話する、気付く」場です。ただ主催者や講師の話を一方的に聞いて帰るのではなく、聞いたことをその場で考えて、自分が考えたことや感じたことを参加者同士が対話することによって、より深い“自分の気付き”として持って帰って頂きたいという意図が込められています。

また、対話のルールとして、以下の4つが設けられました。
1.「私」を主語にして語る
2.経験談や主観を歓迎する
3.人は違っていて当たり前
4.あえて判断を保留する

秋本からは、「よりよい学びの場をつくるために、テーマの設定、武藤さんとのお打ち合わせを含め、できる限りの準備をして今日この場を迎えました。オープンした今からは、みなさんとともに良い学びの場をつくっていけたらと思います。」と話がありました。

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武藤氏の講演は、「2025年問題への突破口!現場からイノベーションは起こせるのか?」というテーマのもと、前半は想い・問題意識編、後半は実践編の2部構成で行われました。

前半の講演では、「どのような思いを持って、現在の活動を行ってきたのか」という武藤氏の想いの部分のお話をしていただきました。

武藤氏は、東京大学医学部を卒業され、最先端の医療環境の中で医師として順風満帆な出世コースを歩んでこられました。しかし、10年間歩んできた中で、1つの疑問にぶつかります。

「医師として自分が目の前の患者さんを診ることは非常にやりがいがあるし、目の前の患者さんに貢献できているという実感が得られるし、ものすごく価値がある。しかし、この積み重ねだけで、医療の環境は救われるのだろうか。

大きな疑問を持ちながらも、「何を他にやれるのか、さっぱりわからなかった。ただ、何かしら社会をよくしたいし、困っている人がいたら、助けてあげたい。ただ、やりたいと思っても、そのための道具・スキルがない。」武藤氏は、どうしたらよいのか考えたと言います。

そして、問題解決能力、プレゼンテーション能力などのビジネスで使われているようなスキルを身に着ける必要があると感じ、コンサルティング会社マッキンゼーに転職されます。

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マッキンゼーに転職され、2年間コンサルタントとして働く中で、武藤氏は、2つのことに気が付きます。

1つ目は、コンサルタントとしてクライアントのためと思って考えた戦略が現実的でなく、現場でできないということがありました。一方、現場でこうあるべきだと考えたことでも、うまくいかないこともあることから、コンサルタントとしてのマクロの視点(鳥の目)現場の視点(虫の目)、両方のバランスがうまく組み合わさった時に、現場からのイノベーションが生まれるということ。

2つ目は、少子高齢化問題、とくに高齢化の問題は日本がこれから直面する最大の社会問題であり、財政を含めて大きな問題の根底をなしており、あらゆるところにゆがみを生んでいること。武藤氏はこの問題に関わる現場を作りたいと思い、2010年1月、在宅医療のクリニックを設立されます。

武藤氏は、クリニックを設立する際に以下のことを大切にしていたと言います。

患者さんや利用者さんに関わるすべての人が、プロフェッショナルな集団であること」
どんなによい医療や介護を提供したとしても、他の部分で良くない対応をすると組織として意味がなくなってしまう。だからこそ、患者さんやご利用者さんに関わるすべての人がプロとなる必要があるということです。そのために実行していることをご紹介頂きました。

  1. フラットな組織
    医師が一番えらいという考えはありません。医師にしか決められないことはもちろん医師が決めますが、対等に看護師や介護士が話し合って、一番良いケアをつくりあげていくカルチャーをつくっていっています。
  2. 1人1人がマネジメントを学んでいる組織
    普段医師は「マネジメント」を学ぶ機会がありません。例えば私たちは「ドラッカー365日の金言」という本を朝会で全員で読んでいます。全ての人がマネジメントを理解するようにしています。
  3. それぞれがそれぞれの役割に専念できる環境がある組織
    以前病院で働いた時、医者が医者の仕事を純粋にしている時間は短いと感じました。書類を書くなどの雑務が大変多いため、医者が医者としてやるべきことをできる環境をつくろうと思いました。看護師も同じです。それを事務職や介護職などを良い形でトレーニングしていくことでやりました。また、医師が訪問してカルテを書く時に、コンタクトセンターに電話してカルテの中身を口述します。そのセンターが石巻にあって、聞いた人がそれを全て入力してくれます。医師が戻って来たらカルテがほとんどできていて、最後に少し修正するだけで済みます。例えば施設に回ったときは一気に30人くらい診察するため、午後は全てカルテに当てなければならなくなります。しかしこのシステムを導入したことによって1時間で済むようになりました。

仕事を全て見直して、誰がすべきなのかをゼロベースで整理し直し、ITの力を駆使することによって現在の組織体制を築かれてきました。

前半の最後に武藤氏からは、「ここまでに至ったのは、とても簡単なことがきっかけです。大学病院で働いていたときに非常勤として在宅医療に行ったことが忘れられませんでした。大学病院でかっこいいカテーテルの処置をやっているときには全く見えてこなかった現状が、家ではあるんです。古びた家の中に高齢の住人が1人で寝ていて、薬は飲めずにその辺に放ってあるような状況がありました。皆さんも目にしたことがあるかもしれませんが、あれが本当の高齢化の現状なのです。整った環境の中でやる病院の医療はごく一部でしかありません。これが高齢社会の現実で、こういう状況の高齢者が増えてきたときに、今の病院医療だけでは解決できない問題があるのではないかと思ったことが原点です。皆さんもそれぞれ皆さんの現場があると思います。そこで何か問題があったときに、『しょうがないな』とか、『当たり前なんじゃないの』と放っておけば、誰も解決できないかもしれない。しかし、『おかしいな、このままではいけない』と思う態度そのものが大切なのではないかと思います。皆さんがそれぞれ今現場でどんな問題意識を感じているでしょうか。」と問いかけがありました。

このあと3~4人に分かれて「あなたが現場で抱いた問題意識、あなたの想いはなんですか?」という問いのもとグループワークを行いました。

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介護士、医師、看護師、経営者、IT系、金融、それぞれがそれぞれの立場から感じる問題意識や想いをスケッチブックに記入し、それをもとにシェアし合いました。

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後半は、問題意識を抱いた1人1人がどうやって解決のためのアクションを起こして行くのかについてお話頂きました。

「コインの裏返し」はしない
コンサルの世界でよく言われる言葉です。例えば、「医者不足だから医者を増やそう」「時間が取れていないから時間をとろう」というような単純な思考ですぐに解決策に走る人がいますが、これは根本的な解決にはなりません。

問題を解決するにするには、まずは、何が問題なのかを特定することから始まります。そして、何を、いつまでに、どれくらいというように数字を加えた具体的なゴールを設定するということが非常に重要です。問題を特定するのは、MECEやso what,whyなど様々な手法が使われます。

しかし、その問題を特定すること自体がそもそも難しいため、問題を特定するには何が必要かという考える「デザインシンキング」が、ここ約10年間で広まってきています。

デザインシンキングで重要なことは、2つ。

1つ目は、観察と共感
介護や医療であれば、目の前の患者さんや利用者さんに対して、先入観を持たずに、その患者さんや利用者さんが本当は何に困っているのかを様々な視点で徹底的に観察をし、その患者さんや利用者さんの立場に共感して、考えることです。

2つ目は、プロトタイプをつくること。
目に見えるプロトタイプ(試作品)を作り、みんなで見て検証することやユーザーに使ってもらうことを繰り返しながら精度を高めていきます。最初から完成品である必要はなく、早めにやってみることが重要です。これは「現場からのイノベーション」という今回のテーマにおいてはとても大切です。経験が多いほど自分の思いが強くなるので、まずは自分が見ているだけではなく、他者の視点をできるだけ多く収集し、もう一度ブレインストーミング(集団でのアイデア交換)をして考えます。そのときの視点は利用者にあることを忘れないで下さい。

武藤氏からは、「皆さんには前半、ご自身が抱く問題意識について話をして頂きましたが、もう一度引いて、自分の目線だけで語っていなかったかもう一度考えてみて下さい。」と、会場に問いかけがありました。

Design-Thinking
お話の中でご紹介のあったアメリカのデザインコンサルティング会社IDEOが掲げるデザイン思考の5つのステップ

以上の方法で、どんなによい問題解決方法を見出したとしても、誰かがやらなければ意味がありません。そこで強調したいのが「リーダーシップ」です。

どのようにリーダーシップを発揮していくのか、武藤氏が大切にしている5つのことをご紹介頂きました。

  1. 道徳心
    道徳心は、 物事の判断に迷ったとき、振り返っても「あのときの判断は間違っていなかった」と自信を持って言えるかということです。善悪の判断をするためには、個人の経験も大事だが、社会通念を持っていることだと私は思います。いわゆる教養の本を読んで身に着ける時間は、リーダーにとって非常に重要だと考えています。
  2. 物事の本質をとらえ、先をよむ力
    今起きていることの本質は何で、それをどうやって人に伝えるか考えることが大切です。リーダーの仕事を単純に言うと、「物事を決めて、伝えて、実行していく」。物事の本質を掴めないと、どうやって実行するかがずれてきてしまいます。本質を掴むためには、様々な視点を持つことが大切です。マクロの視点やミクロの視点だけでなく、世の中の流れを掴まなければなりません。例えば、介護と医療の世界では、保険点数は大きな肝になります。世の中の流れを掴み、先をよむ力が非常に重要です。
  3. 美しい言葉を使う
    曖昧なことを言ったとき、下の人は混乱してしまいます。そのため、リーダーは明確な言葉を使い、出来うるなら、美しい言葉を使った方が良いです。美しい言葉を明確に使い、人を動かすような技法を使った言葉を覚えるべきだと思います。そのためにも、本はとても有効です。
  4. 現場感覚を持つこと
    リーダーは、だんだん現場から乖離していきます。そのときに現場の視点を忘れると組織は必ず崩壊し ます。今何を現場の目線で考えているかということを、いかに強く持っておく事が、将来リーダーになったときに必ず活きてくるので、ただ漫然と過ごすのでは なく「現場目線は何なのか」を意識して過ごして欲しいと思います。
  5. 決める
    リーダーにとって決めるということは非常に大きな役割です。決めることも同様に鍛える必要があります。例えば、「今日何を食べるか決めること」もリーダーシップの訓練になります。決断の背景には「なんでその決断をするのか」と、理由が必ずあるはずです。「決める」ということは、責任があるため、リーダーは説明できないといけません。急にホームランを打てるのではなく、毎日コツコツと練習する必要がるので、是非皆さんも日頃の生活の中で、自分の決断の理由を問う習慣をつけることは必ず今後役に立ってくると思います。

後半のお話のあとは、前半のワークで共有した問題意識の解決に向け、「今の学びから明日からあなたができる一歩目は何ですか?」というテーマでグループワークを行いました。

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ワーク後のネットワーキングの時間では、会場の室温も一気に上がって、素晴らしい熱気が充満していました。

「イノベーション」という今回のイベントテーマから、お食事は「未来の介護食」をコンセプトにCRAZY KITCHNさんに素敵な食事をご提供頂きました。

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飲み物は、ソフトドリンクやビールに加え、武藤さんが石巻で事業展開されていらっしゃることから、少しでも私たちも東北へこのイベントを通じて貢献できたら良いなという思いから東北のお酒をご用意しました。

飲み物はなんと!、私たちの想いに共感してくれた企業、個人様からの差し入れでした!本当にありがとうございました。

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イベントラストは武藤さんとのQ&Aへ。秋本がコーディネーターを務め、事前に寄せられた質問にお答え頂きました。

秋本:たくさんの質問をお寄せ頂いています。教育に関する質問が多いですかね。社内教育はどのようにされていらっしゃいますか?

武藤:プレゼンが終わったのでもう飲んで良いかなと思い、勧められたお酒の中に気仙沼のお酒があって飲んだらとても濃くて、きちんとお話できるかが心配ですが。

会場:(笑)

武藤:社内教育は、部門によって異なります。うちの組織は、医師部、連携部(看護師やソーシャルワーカー)、アシスタント部(運転など診療の補助をしてくれる人)、事務部と法人運営部の5つに分かれています。社内教育としては先ほどご紹介したドラッカーの本を読むなどもありますが、私たちはクレドを作っています。

組織を作る時に参考にしたのが、リッツカールトンです。彼らのクレドには、言葉は違うかもしれませんが、「紳士、淑女にサービスをするものは紳士、淑女であれ」というのが根底にあります。僕らも創業メンバーで自分たちの組織が何のために存在しているのかということを考え、「YOU CREDO」をつくりました。

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「YOU CREDO」  祐ホームクリニックサイトより引用

武藤:クレドをつくったときから、朝会で毎日全員でこのクレドを読んでいます。朝会ではクレドを読むことと、ドラッカー365日の金言を読むことから始まります。根底として我々は何の為に組織員として存在しているのかをみんなで共有すること。それは形式的なものではなく、毎日みんなで確認し、クレドに沿っているか否かを評価します。それでボーナスも決まります。詳細に組織文化を浸透する仕組みを作っています。もちろん細かい指導をすることもありますが、いかに文化を築いていくかが大事だと思っています。私たちは急激な規模の拡大は行いません。この文化をいかに広げていくか、そして10年、20年続く組織にするためにも、とても大切に考えています。

秋本:文化を大切にすることは、量よりも徹底的に質にこだわり抜いているように感じられたのですが、それに少し関連して「在宅を突き詰めて行くと究極なビジョンはどうなると思いますか。」というご質問を頂いています。

武藤:クレドでも言っているのですが、一番最後何をやらなければいけないかというと、「希望ある社会を創造する」ということを上位概念に置いています。我々が診ている方は、寝たきりであったり、癌の末期の方が多いのですが、その人たちが過ごす人生の最期の時間に少しでも希望をどう持ってもらえるか。

緩和ケアであっても、身体的な緩和ケアや精神的な緩和ケアなど様々な緩和ケアがあります。痛みや苦しみを感じさせないための医者としての技術も大切ですが、それだけではありません。例えば、患者さんとご家族が仲が悪いケースもあります。そういった場合、少しでも家族関係を良くする為にどのようにすれば良いかを考えます。今生きている瞬間も大事ですが、亡くなった時に、家族にその人をどのように思ってもらえるかを考えて、非常に難しいですが、早い段階から家族関係の修復へのアプローチも必要になります。僕も大学病院で働いていたときは、いかに血管を拡げるかというようなことがミッションだったのですが、今の考え方としては、その人の人生をいかに僕らが関わる期間は短いながらも理解をして、その人が亡くなったとしても、僕らができることはなんだったのかを考える。それが少なくとも患者さんにとっては、希望ある社会に最期なれるんだとしたら、在宅医療の一番大きな目的なのではないかと思います。それは病院で亡くなるのではない世界を作れる僕らの大きなミッションです。

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秋本:とても直球な質問です。ずばり!介護のイノベーションは、起きますか?それに加えてもう1つ、今後連携を進めていきたい業種はどこでしょうか。

武藤:介護そのものにイノベーションが起きるかと問われると、僕は難しいと思います。

その理由の1つは、技術的な観点です。介護は、技術よりも「人の力」が必要不可欠な仕事だからです。例えば医療の場合、がんが100%治る薬が開発されたらそれだけでイノベーションです。介護は日頃の排泄や睡眠など、生活そのものをサポートすることなので、どんなに技術的なイノベーションが生まれたとしても、最期は人がとても大事です。介護ロボットが許容されるようになったら分かりませんが、1人1人が声をかけたり優しくしてあげるのがとても大事なので、現状ではそこにイノベーションは正直生まれにくいと思っています。

2つ目に、収益の面です。保険点数で収益が決まっているのが医療と介護のルールです。例えば何か新しいイノベーティブなものを生んだからそれで3倍の収入が入ってきて、次への投資ができるわけではない。これが他の業界との大きな違いです。今のルールでは、何か良い自費サービスを増やしたとしても、払える利用者は限られてくるので現行のルールでは難しいと思っています。

例えば、医療と介護のICT をもちいた情報連携というのは、1つのイノベーションになりうるとは思いますが、やはり質を上げるとか質の均等化をはかることが目的となります。

他の例で言えば、遠隔医療で医療も介護も一緒に考えた場合に、少ない医療や介護資源の中で、今と同じような質を担保できるような情報連携の仕組みなどができれば、それは1つのイノベーションと言えるでしょう。

しかし、iPhoneのような劇的なイノベーションは生み出しにくいのです。それでは面白くないので、デザインシンキングなど、利用者の目線でゼロベースで考えることがイノベーションを生み出す一歩に繋がるかもしれません。

我々が今連携しようとしているのは、コンビニや運輸業などです。医者、看護師や介護士はこれまで制度的には接点を持っていましたが、そういう人たちだけではもう足りなくなっています。21世紀型の社会インフラとして、例えばコンビニは介護施設より多いです。また、何か自宅に届けてくれる人や定期的に自宅に訪れる電気やガスの人。 そういった業態の人たちと垣根をなくして介護をもう一度捉え直すことが大事だと思います。今までの既存の概念にはありませんが、ただそれは「高齢者の生活」という視点で考えたときに、自ずと接点がある人は浮かんできます。

もう1つ我々が今取り組もうとしているのは、テレビです。高齢者の自宅には、たいていテレビがあり、家にいるときテレビを見て過ごす人も多いです。これを通じて新しいサービスができないか、テレビを作っているメーカーや放送局と連携をしています。つまり、その人の目になって、耳になって考えたときに、これまで全く違った発想が生まれるかもしれません。

秋本:そうやってどんどん色んな業界の人や、祐ホームクリニックを石巻で立ち上げられたときもボランティアさんなど多くの人を巻き込んでいらしたかと思うのですが、そういった仲間づくり、人を巻き込むコツを教え頂けたらと思います。

武藤:やるべきことをまず決めることだと僕は思っています。リーダーはだいたい自分のやりたいことが強くありますよね。それだとなかなか上手くいかないことが多いんですね。リーダーの仕事は、例えば「まずこれをやりましょう」と決めることです。そして一緒にやってくれる仲間には、色んなことをやりたいと言っている人がいます。その一緒にやってくれる人たちが何をやりたいのかということと、モチベーションが上がるポイントは何かを知ることをとても大切にしています。ただ、それだけではみんなが好き勝手やってしまうので、何が一番重要であるかを決める必要があります。最後、どうしても埋まらないところをやったり、やれる人を連れてくるなり、最後まで責任を持つのがリーダーの仕事です。

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秋本:最後に、HEISEI KAIGO LEADERSは2025年に向けて活動を始めたコミュニティで、本日のお話の中ではイノベーションは起きないとのお話はありましたが、一方で今日は現状を変えたいという思いからどうやってイノベーションを起こしていくのか武藤さんにお話し頂きました。今日来て下さった方は世代や業種関係なく、色んな問題意識や想いを持っているからこそ、今日この場にお越し頂いたのだと思っています。そんな私たちに向けて、最後に一言頂戴できたらと思います。

武藤:あまりえらそうなことは言えませんが、「イノベーション」はどの業界においても起こそうとするのであれば、年齢、経験や思いなど様々なバックグラウンドを持つ人が集まって、その中で発火するものをつくることしか21世紀の中でイノベーションは生まれないと思っています。経験や知識が全てであった時代から、それぞれの人が大量な知識の洪水の中から、それぞれ興味のあるものを持っていると思います。

僕が大学にいたとき、友達の95%は医者だったんですね。よく考えたら特異な環境ですよね。マッキンゼーに行き、医療業界以外の優秀な人たちと関わる中で、自分の価値観がさらに広がり、磨かれていることに気づきました。それまでは、医療業界の範囲で考えていたのですね。もっと若いときに気付くことができていたら、今よりもっと自分の枠は広がっていたかもしれません。

今日ここにいらっしゃる皆さんにお願いしたいのは、多くの人と知り合って、もっともっとチャレンジして下さい。どうしても自分の安心していられるところに居たくなりますが、いかに鍛えて、外に行って、新しいイノベーションをみんなでどうやったら生めるのかということを、続けて欲しいと思います。私も上手くいかなかったことはたくさんありますが、それでもやり続けていられるのは仲間がいて、支えてくれたからだと思うんですね。今日もこういったところを1つの機会として、みんなで新しいものをつくっていけたらと思います。ありがとうございました。

 

イベントの最後は、全員でこの日の学びの場を築いた全ての人に拍手を送って、締められました。

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今回のイベントには、医療・介護に関わらず様々な業種の人にご参加頂きました。新たなつながりが生まれ、年齢や業種関係なくそれぞれの想いや考えをフラットに交換し合えるこの場は、武藤氏のお話の中でもあったイノベーションが生まれる1つのきっかけになるかもしれません。参加者の皆さんと築いた学びを、私たちメンバーもそれぞれの現場、そして次回のイベントへと繋げていけたらと思います。

次回のPRESENTは、8/8(土)18:30〜ダイアログ・イン・ザ・ダークの志村真介氏をゲストに迎え、「ダイアログで介護は変わるのか?」をテーマに開催致します。

超高齢化社会において、溢れる様々な課題―その全てにと言っても 過言ではないほどに、「人と人との関係性」が密接に関わっています。 肩書きや立場など関係なく、1人の「人」として関わることができたら、 もっと日本の介護はよくなるかもしれません。ダイアログの重要性・可能性を 講師の志村真介さんとご参加頂く皆さんとともに探っていきたいと思います。

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『PRESENT_02 志村真介』 詳細・お申し込みはこちら素敵な学びの時間を皆さんとともにつくれることを、楽しみにしております。

 

(文:山本健治・秋本可愛 写真:北村真理)