活動内容 ACTIVITIES

楽しさなくして参加なし。地域をつくるコミュニティデザインとは?(PRESENT_11山崎亮 レポート)

PRESENT REPORT 東京 Archive


 
これからの地域福祉を語るうえで外せない 地域包括ケアシステム。
地域包括ケアシステムとは、高齢者が要介護状態になっても“住み慣れた地域“で暮らし続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みのことです。今までの国主導の事業ではなく、地域主体の取り組みとなるため、行政・民間・ボランティア・市民のより活発な参加が求められています。

どうしたら地域の人たちにより主体的に、楽しみながら参加し続けてもらえるのか?

HEISEI KAIGO LEADERSがつくる学びの場「PRESENT」。第11回となる今回は、サイボウズ株式会社の素敵なオフィスをお借りし、コミュニティデザイナーとして様々な地域を“参加”によって活気づける株式会社studio-L代表 山崎亮氏に、その想いとエッセンスをお聞きしました。

 

「絶対に倒れない建物」をつくるか?「倒れた時に助け合える街」をつくるか?

 

僕は元々建築業出身なんですが、コミュニティデザインという仕事を始めたきっかけは、95年の阪神淡路大震災。
倒壊した建築物が人を殺している、ということが衝撃で、建築の人間としてどう向き合うべきか、10年くらい悩みました。

方向性は2つあって、「絶対に倒れない建物」を作るのか、「倒れても助け合える街」を作るのか。前者を行う人はたくさんいると思ったので、僕は後者、街のソフトを作る仕事である、コミュニティデザイナーを選びました。

僕は、建築の仕事をもらったとき、建築家だけで考えるのはもったいないと思っています。地域に住んでいる人と話し合って建物をつくった方が、住民の皆さんがたくさん使ってくれるし、参加した分愛着も出るし、建てた後に反対運動が起きるような悲しいことはなくなるはずだと思うからです。

 

「また来てね」と言える、“関りしろ”のある病院づくり

 

僕が携わったプロジェクトの1つ、兵庫県明石市の譜久山病院のお話をします。

建築家として、ハード(建物)だけでなく、ソフト(どう使うか)を住民、従業員、院長とみんなで考えました。家具やユニフォーム、庭に植える木など、病院の設計として絶対に必要な部分以外は関わる人にどんどん決めてもらいました。
コンセプトはある先生から出た「『また来てね』って言える病院にしたいんですよ」という言葉。でも、「病院だからまた来てもらっては困るでしょ(笑)」と言いながら、それは素敵だなあと思ったんです。

では…、と考え、じゃあ“健院”をつくろう、治療に来てもらうのではなく、カフェや交流スペースをつくって“関わりしろ”をもつ。そしたらまた来られる。

そして何より嬉しかったのは、当時高校生だった院長のお子さんが、将来医師になるかどうかを悩んでいたことに対し、今回のプロジェクトを通して「(医師になる)覚悟を決めた」という話を聞けたことなんです。

みんなが参加して、つくっていって、変わっていくこと。これが大事だと思う。
それは民間の建物でもそうですし、行政主導の建物であっても同じことだと思います。

「あるものをどう使うか」から「ないからどうする」へ

 

行政についてのお話をしましょう。100年くらい前、1960年代くらいまでは、税収は必要最低限くらいしかなかったんです。当時は「結(ゆい)」「座(ざ)」「連(れん)」「道普請(みちぶしん)」等と呼ばれる互助の仕組みが当たり前でした。

その後高度経済成長を経て税収は増加し、例えばぬかるんだ道をアスファルトに舗装するなど、行政が住民のためにやってくれることが増えました。

さらにバブル時代には税収は余り、大きな美術館がいきなり建つなど、住民や環境への配慮の無い建物が作られるなど、使い道を考慮する暇なく投資されました。そこで、「税金をいかに正しく使うか」という意味で“まちづくり”という言葉が出てきました。この頃は、あくまでも「あるものをどう使うか」という発想です。住民から行政に対しては、反発とともに過剰な期待が出てきました。「道が汚れている、すぐに来い!」といった具合ですね。

そして今、2000年くらいから税収はどんどん減っています。再び行政に頼らず自分たちでやらないといけない時が来ている。しかし今ワークショップをやると、まだ1980年代くらいの感覚の方が多いです。それはまだ行政にお金があった時の考え方。
これからの行政との関わり方は、要望・陳情ではなく、提案・実行型でないといけない。「あるものをどう使うか」から、「ないからどうする」への考え方へシフトする必要があるんです。

 

地域包括ケアは、正し“すぎる”

 

今日は福祉・介護の世界で周りを巻き込んだ活動をされている皆様が集まっていただいていると思っています。僕はその業界の専門ではないですが、参加については同じことが言えると思います。

参加には、「理性」と「感性」が必要だと考えます。人間の思考判断は、まず直感、つまり「感性」で判断して、その後「理性」で考えるんです。

少し詳しく説明すると、人間の思考判断は以下2つのシステムを持っていて、システム1から入り、システム2に移行します。

システム1:右脳的、予備知識がなくてもわかる、判断時間が短い、一瞬
例:楽しい、美しい、気持ちいい

システム2:左脳的、リテラシー、知識が必要、考えるのに時間がかかる
例:正しい、儲かる、合理的である

今日のテーマでもある「地域包括ケア」とか「福祉」というテーマは、とても正し“すぎる”んです。
介護や福祉について、例えば「介護保険はもうパンクします!」という課題を伝えて、参加を促す動きは、もちろんそれ自体はとても良い、素晴らしいことなのですが、残念ながら、美味しそうでも、楽しそうでもないんです。「感性」には響かない。

今日の講演会は、会場や食事、資料のデザインなどとても考えられていると思います。
会場もカジュアルだし、軽食もかわいらしい。些細な事のように思いますが、デザインによって、スピーカーのテンションや、参加者の反応も違ってくるんです。
参加を促すには、デザインを通して、「自分はここにいるべき人間だ」と思えることがすごく大事なんです。

デザインの一歩は美術館から!

 
では、みなさんか今日から実践できる、身近に役立つデザインのコツをお教えします。

例えば、自分の作るチラシを改善するという課題があるときに、美術館にあるチラシは参考になります。美術館には、近隣の美術館で行うものも含めて、美術展のチラシがたくさん置いてあります。チラシの見本がたくさんあるわけです。

それをもらってきて、ファイルに綴じて、自分だけのデザイン辞書を作る。そして必要な時にその中から作品を真似して、自分のチラシに活かしていくのです。

大切なことは、たくさんの素晴らしい見本にたくさん触れて、模倣する動作をすることによって、それを追体験していくことなんです。3回やればなんとなくコツがわかってきます。初めからクリエイティブなデザインなんてできない、でも真似することはできるのです。

 

プロジェクトデザインも真似することから。

 
 

プロジェクトも同じです。よい事例を真似することから始まります。

うちでは、面白いと思う事例をHPから100個集めてA4の1枚にまとめます。その中から10個選んで3ページのノートにする。そこから更に3つに絞ったら、手土産もって実際に会いに行きます(笑)。クリエイティブなワークショップってとても難しいんです。でも、こうやって、事例を100も200も知っていれば目利きになることはできますよ。

 

参加を促すワークショップとは?

 
本来、ワークショップってとても難しいものです。皆さんもご経験があるかもしれませんが、模造紙と付箋を持っていっても、なかなか意見が出なかったり、まとまらなかったり。

それは、当たり前のことなんです。
いいワークショップをやろうと思ったら、スタッフ側が参加者の10倍も100倍もテーマについて知らないといけない。出てきた意見の中で、ダイヤの原石と石ころを見分けないといけないのです。

だから、地域包括ケアを中心になって引っ張って言っていただく皆様には、ぜひ独創性あるものだけをめざすのではなく、より多くの事例を知って、役立てていってほしいです。

山崎さんのお話を受けてのディスカッション、参加者同士の交流も盛り上がります。

 

よりよい地域づくりのために、友達をたくさんつくろう!

 
プログラムの最後は、質疑応答。会場からの質問を山崎さんにお伺いします。(聞き手:秋本可愛)

 

秋本:地域で何かを進めようとするとき、地域の中にもいろいろな人がいると思います。無関心な人達、コミュニティに積極的に参加してくれない人にはどうアプローチすべきですか?

 

山崎:諦めたほうがいい。でも期待はします。
こういった参加型のプロジェクトには、どこでも参加のモチベーション差の問題は起こります。僕としては、参加の程度に濃淡を付けて考えています。

10人:テーマについて、夜まで語れるコアメンバー
100人:何かをするといつも来てくれる人。SNS更新や冊子作製の手伝いをお願いする
1000人:サポーターと呼んでいる、何かイベントするなら当日だけ手伝ってくれる人
それ以外:サポーターの人がちょっと口コミを発信してくれた、それを見てくれた人

この中で重要なのは1000人いるサポーターです。彼らが興味を持ちサポーターになり、サポーター自身が発信しやすい情報を作り続けることが重要だと思っています。

 

 

これまでの様々な取り組みの中で、なかなか上手くいかなかったり、失敗してしまったという事例はありますか?

 

失敗は数え切れません。会津で美術館をつくった時は、かなり苦戦しました。
ワークショップをやっても誰も来ないし、来ても誰も意見がない。

困ったので、その地域でまず自分たちと友達になってくれる人が誰かを考えました。

…おばあちゃんだと思いました。

そこで、おばあちゃん対策として若いイケメンが3年会津に移り住んだんです。(笑)
仕事は、明るく元気に早起きして、ご飯を3食、通りに面した庭(外)で食べること。

始めて少し経つと、通りかかるおばあちゃんが野菜をくれるようになった。
そして、1ヵ月経つと、「そんなもんばっか食べて!」と言いながら今度は手作りの惣菜をくれるようになった。

3か月たつと第3段階。
顔見知りになったおばあちゃんが少し恥ずかしそうに持ってきてくれたのは…なんと、亡き夫が着ていた服。ここまできて、初めて寄り合いを持ち掛けます。(会場笑)

 

 

ここまでくると、やっと地域の居場所を獲得でき、むしろ地域の中心になる。
おばあちゃんの孫や家族が集まって、チームになる。そして美術館ではガーデニングキャンプやワールドカフェならぬワールドBBQを実施し、除幕式ではみんなで集めた風呂敷で作ったパッチワークを使って、大成功を収めました。

 

最後に、今日参加してくれたみなさんにエールをお願いします!

 

地域づくりは心が折れることが多い。だから、友達をたくさん作ってください!

FacebookとかTwitterで色々書かれたり、反対派がいたり、僕も心が折れますよ。そんな時、「わかる!」って言ってくれる人がいるだけで助かるもの。今日はたくさんの同じ志の人が来ているので、たくさんの友達が出来たらうれしいです!

 

昨今コミュニケーションについては、「コミュニケーション力」や「クリエイティビティ」など、わかるようなわからないような言葉で語られることが多くあります。
しかし、山崎氏の語るそれは、「ロジック」と「努力」と「泥臭さ」でできていると感じました。経済思想や人間の思考パターン研究を元にしたアカデミックな思想が骨格とすれば、過去の事例を徹底的に調べ上げる、模倣する努力が肉となり、そのうえで、実際に手土産をもって地域に出向き、それでもだめなら住み着いて、3食地域に開いていくなんとも地道で泥臭い想いが動かしているのです。

ここまでのメソッドと努力と情熱を、私たちが暮らしている「地域」という場所にぶつけてくれる人がいる。そして、この学びを受けた私たちが、さらにそれぞれの種を育てていく。それだけで少し日本の未来にも希望を持てました。そして、「正しさだけでは人は動かない」というあたり前のことが、ぐっと腹に落ちたそんな一日でした。


 

ゲストプロフィール

 

山崎 亮 Ryo Yamazaki

studio-L代表。
東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)。慶応義塾大学特別招聘教授。
1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。
建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。
地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。
まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。
「海士町総合振興計画」「studio-L伊賀事務所」「しまのわ2014」でグッドデザイン賞、「親子健康手帳」でキッズデザイン賞などを受賞。

著書に『コミュニティデザイン(学芸出版社:不動産協会賞受賞)』『コミュニティデザインの時代(中公新書)』『ソーシャルデザイン・アトラス(鹿島出版会)』『ふるさとを元気にする仕事(ちくまプリマー新書)』『コミュニティデザインの源流(太田出版)』などがある。

※プロフィールは、イベント開催時の情報となります。

開催概要

日時:2017年2月18日(土)
会場:サイボウズ株式会社 東京オフィス

PRESENTについて

2025年に向け、私たちは何を学び、どんな力を身につけ、どんな姿で迎えたいか。そんな問いから生まれた”欲張りな学びの場”「PRESENT」。
「live in the present(今を生きる)」という私たちの意志のもと、私たちが私たちなりに日本の未来を考え、学びたいテーマをもとに素敵な講師をお招きし、一緒に考え対話し繋がるご褒美(プレゼント)のような学びの場です。


 

この記事を書いた人

 

江原 里沙 Risa Ebara
IT営業職/HEISEI KAIGO LEADERS PRチーム

群馬県出身。大学ではロシア語を専攻しながら政治経済史を学ぶ。
田舎と都会、日本と海外を経験し、労働としての介護に興味をもつ。卒業後はITの営業として活動。CRM、デジタルマーケティング、IoTなど。趣味は一人旅。


パートナー一覧 PARTNERS

  • サイボウズ株式会社
  • 株式会社シルバーウッド
  • 社会福祉法人慶生会
  • ドクターメイト株式会社
  • AYUMI EYE
  • アカリエヘルスケアカンパニー株式会社
  • 社会福祉法人 隆生福祉会
  • 株式会社ニッソーネット
  • NPO法人 グレースケア
  • ウェルモ株式会社
  • ケアスタイル(インフォコム株式会社)
  • 株式会社リデザイン・メッド