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人を、地域をよりよい姿に!地域に飛び出した理学療法士が描く、新しいリハビリテーションの形。 (KAIGO MY PROJECT OB/OGインタビュー Vol.11)

KAIGO MY PROJECT 東京 OB/OGインタビュー

千葉県松戸市。都心へのアクセスも良く、ベッドタウンとして約50万人が暮らすこの街を、「最期の時を笑って迎えられるような街にする」という想いで、よりよい街づくりを仕掛けようとする一人の理学療法士がいます。
松戸市出身・KAIGO MY PROJECT3期に参加した松村大地さん。
なぜ理学療法士が街づくり?そこには、松村さんが考えるリハビリテーション観が大きく影響していました。
「つながりを通じて、人が輝き、人に優しくなれるまつどへ」という理念を掲げ、Mi-Project – 一般社団法人まつど地域共生プロジェクトを立ち上げて、地域活動を始めた松村さんの想いと活動についてお話を伺いました。

 

インタビューを行った日は、Mi-Project初のイベント「Mi-Study」の開催日。
これからの高齢社会のあるべき姿として、国が掲げる「地域共生社会」。地域住民や地域の多様な主体が参画し、支えあい、共によりよい社会を目指します。
そんな「地域共生社会」を松戸で実現するため、住民として一人ひとりが何をできるか、識者の講演・参加者同士の対話で深めていきました。

 


まだまだ“芽”のようなものだけれど、ここから何かが生まれ育まれていく…。
そんな期待感が生まれたイベントでした。

そんなイベント終了後、松村さんにお時間を頂き、お話を伺いました。

話し手:松村 大地 理学療法士/Mi-Project運営、KAIGO MY PROJECT3期
聞き手:野沢 悠介 HEISEI KAIGO LEADERS PRチーム

野沢:本日のイベントはお疲れ様でした!何かが始まる期待感のあるイベントだったと思います。率直に終わってみてどうでした?

 

松村:ありがとうございます。
「終わってよかった」とほっとした気持ちと、もう一つは単純に「やってみてよかったな!」という想いがあります。課題もあったけど、次に活かせる学びの多い一日でした。今日感じたことを次に活かしたいです。

 

人の人生・健康に携わりたい。その想いで理学療法士の道へ。

 

地域での活動の第一歩をスタートさせた訳ですが、ここに至るストーリーを教えてください。そもそもなんですが、松村さんは、なぜ理学療法士という仕事を選んだのですか?何かきっかけがあったんでしょうか?

 

実は、強い動機があった訳ではなく…。
大学生の時に見た「オレンジデイズ」というドラマがきっかけでした。登場人物の一人が作業療法士の仕事をしていて。それで「世の中にリハビリテーションという仕事があるのだ」と知りました。
元々、小中高と野球をやっていたこともあって、スポーツや身体を通して人を支援できる仕事をしたいと思っていたんです。その一方で、学校の授業を通して、日本の高齢化の進展にも漠然と興味がありました。リハビリテーションという仕事を知って、スポーツと高齢化問題の両方に携われそうだなと思ったのがきっかけです。
「色々と視野を広げたら?」という親の勧めもあって、高校卒業後は一般の大学に行ったのですが、志望は変わらず、卒業後に専門学校に進学し、理学療法士の資格を取得しました。

 

高校でのリハビリテーションの出会いをきっかけに、大学~専門学校と、資格取得まで比較的長い期間がありますけれども、「この道でよいのかな?」みたいな迷いが生じることはありました?

 

全くなかったですね。根拠はないのですが、「自分は理学療法士になるんだ」という確信はずっとありました。
今思い返してみると、小学校の卒業文集に「最期の瞬間に笑って死ねる人生にしたい」と書いているんですよね。辛いこと・大変なことがあっても、一つひとつ目の前のことを積み重ねていって、後悔しないように、生きていきたいみたいなことを小さいころから考えていました。
リハビリテーションって、一人ひとりの課題に向き合い、寄り添いながら支援をして、共に笑顔をつくる仕事なんだと思います。そういうところが、昔からの自分の想いに重なったように思います。

 

「最期の瞬間に笑って死ねる人生」
よい言葉ですね。その想いが自分の生き方のスタイルだけでなく、「他者の人生・健康に関わりたい」という思いにつながるのが、きっと松村さんらしさなのかなと思ったのですが、
その想いも昔から変わらないのですか?

 

そうですね。振り返ると自然に自分の周りに人がいて、前に出る機会が多かったように思います。それも引っ張っていくというよりは、自分のことより他者のことを気遣う機会が多かったです。学級委員とか応援団長とかしていましたね。
「人の役に立った」という経験をして、それが純粋に嬉しいという感覚を積み重ねてきました。

 

なるほど。昔からの松村さんの大切にしてきた想いが活かせる仕事として、理学療法士に巡り合ったのですね。就職してからも、その想いは活かせていけましたか?

 

はい。今働いている法人は、学生時代の実習先だったんですけれども、実習中から自然と自分らしさを出せて、ここで働きたいと思える場所でした。実際に今も働きやすいです。
利用者さんを元気にするためには、理学療法士の力だけでは限界があると思っているんですけれども、ここでは色々な職種の人が自然と集まって、「どう利用者さんの暮らしをよくするか?」というディスカッションがあちこちで始まります。そこがよいなと思ってます。

 

現在は、松戸での地域活動を進めていますが、職場は都内ですよね?
当時の職場選びの際は、地元で働くということは特に考えていなかったのですか?

 

そうですね。当時は「松戸をよくしたい、貢献したい」という考えは自分の中に全くなくて、法人の理念や、自身が理学療法士として学べる・経験できるかどうかという視点で考えていました。

 

答えは、生活の中にある。

 

そこから、地域での活動に関心が向いたのは、何かきっかけがあるのですか?

 

就職後、回復期の病院で2年働いていました。2年目の終わりころに患者さんが退院後自宅で生活するための準備として家庭訪問をしたのですが、その際に病院ではそこまで歩けなかった人が、家に帰った途端に、嬉しさもあったのか、きびきびと歩き出したんです。「この人、こんなに動けるの!」って驚きました。(笑)
「答えは生活の中にある」と改めて実感して、病院での治療で完結するのではなく、退院後の家での生活も考えられる理学療法士になっていきたいなと思うようになりました。
そんな矢先に、法人内異動の話があり、診療所で働くことになりました。
訪問の現場でも様々な生活の姿を見て、たくさんよい経験ができています。

 

仕事を通して、家での暮らしや地域への関心が広がったのですね。

 

「リハビリテーション」と「介護」の間の壁

 

キャリアを広げる中で、何か課題認識みたいなものはありましたか?

 

多職種連携が進んでいるとはいえ、やはり医療・リハビリテーションの領域と、介護の領域の間での壁を感じることはありました。理学療法士が見る「その方ができること」と、日常の生活に寄り添い、生活の様子をよく知っている介護職の人から見る「その方が普段していること」には隔たりがあることが多いです。
理学療法士などが、リハビリテーションで見たことだけで判断して指示をしても、生活の様子をより見ている介護職の人から見たら、「そんなの無理でしょ?」という話になってしまう。
一方で理学療法士側も「何で介護職の人たちは協力してくれないんだ!」と思ってしまう。そんな時は、お互い話合えればよいのだけれど、どちらも「あっちが分かってくれない」と諦めてしまっているように思えました。
「利用者さんをよくしたい」という想いは同じはずなのに、リハビリテーションって生活を変えてなんぼなのに、そんなところで引っかかってる場合じゃないと思っていたんです。
そんな時にHEISEI KAIGO LEADERSやマイプロのことを知り、介護に携わる人と関わりながら、自分のやりたいことを見つめようと思い、参加を決めました。

 


KAIGO MY PROJECT3期のメンバー
 

介護の領域の人との接点を持つためにマイプロに参加したのですね。
「相手のことを知ろう」と思って行動に移されたのはすてきだなと思うのですが、松村さんが介護職に対して「なんで協力してくれないの?」と憤る理学療法士にならなかったのはなぜなのでしょう?

 

いや。僕もなってたと思います。
でも、「なんで協力してくれないの!」と憤ることがあっても、同時に「その人にも、その人なりの意見や理由はあるよね」という想いも同時に持っていました。だから、出来る限り意見を聞くように心がけていました。その状況を自分の中でも打破したいからこそ、介護領域の人の想いをもっと知ろうと、マイプロに参加したのかもしれません。

 

“外の世界”では、リハビリテーションのことは全然知られていなかった。

 

松村さんはKAIGO MY PROJECT3期に参加された訳ですが、実際に参加して介護領域の人と対話して、何か発見はありました?

 

初回に早速強く思ったのが、「みんなリハビリテーションについて、全然知らないんだ!」ということでした。
みんな僕の言葉を全然理解できてないんですよね。リハビリテーションという言葉から説明する必要あった。
自分の職場はリハビリテーションが浸透している現場だから、関わる介護職の人も一定程度リハビリテーションのことを理解してくれている。でも、そうでない現場の介護職の人は、リハビリテーションのことをよく知らないんだ。
これが大きな気づきでした。
介護とリハビリテーションは近いと思ってたけど、全然そうじゃなかったんです。
だったら、自分が発信して、伝えていかなきゃだめだなと思いました。

 

その気づきは、ご自身の日々の活動にも変化を与えそうですね。

 

そうですね。今まで以上に、自分から積極的に伝えることが大切だと思うようになりました。
職場でも「これは理学療法士だけですむ問題じゃないぞ」と思ったら、介護職員に繋げたり、相談することを意識的にしていきました。
そうしたら、「私たちも動きやすい」と介護職員が言ってくれたんです。
「ああ、こういう関りを待ってたんだな」と思いました。
最初は「もっとみんなでコミュニケーションをとろうよ!」と自分以外の人の姿勢に対して疑問に思ってたんですけど、自分が動くだけでも周りも変わるんだなって。
そうやって、お互いに意見を出し合える環境は広がったように思います。

 

「人は変えられないが、自分は変えられる」という言葉もありますものね。ご自身の気づき・変化を通して、周囲にもよい影響を与えるよい循環が生まれていますね!

 

自分の両親は、笑って最期の時を迎えられるだろうか?

 

話をMi-Projectに移していきます。
マイプロの最終発表会の際も、「自分の生まれ育った松戸をよくしたい」とお話していたと記憶していますが、なぜ、松戸で活動しようと思い始めたのでしょうか?

 

在宅での仕事をするようになって、家族にも目が向くようになっていきました。
介護疲れしているご家族とか、旦那さんが亡くなって、介護していた奥さんの方も力が抜けて体調を崩してしまったりとか…。

そんな姿を、自分の両親と重ねたんです。
自分の両親も亡くなる時は絶対来る。その時に、自分の親が「最期の時を笑って迎える」ことができるのかな?自分が育った、自分の親が住む、松戸の介護や医療の現状が、どんな風になっているのかな?そういったことに思いがいき、「自分は松戸のことを何も知らないぞ」ということに気が付いたんです。

それで、「知らないなら知ろう」と調べていくうちに、松戸で「まちづくりキーパーソン養成講座」というのがあったので、勢いで参加してみたんです。

 

初めての地域活動—専門性が活きた!

 

初めて地域活動に参加してみてどうでした?

 

まず「若い人が来た!」と驚かれました。(笑)
当時は自分が最年少。シニア層で、「仕事を終えてひと段落して、地域に貢献することを始めてみるか」という自分の親の世代の人が多かったんです。最初は世代の違いに戸惑いもありましたが、その人たちと触れ合って、地域の人の考えや不安を聞けたのは大きかったです。

思ったのは、みんな健康を気にしていたり、居場所を求めているな、ということ。そんな中で、自分のリハビリテーションの知識や経験を話すと喜んでもらえたんです。

例えば、お祭りのお手伝いに参加した時、数日前にぎっくり腰になってた人がいて、「腰が痛い」ということだったので、色々とアドバイスをしたら、「あなた何者!?」と驚かれて、感謝されました。
直接、理学療法をした訳ではないけど、自分がいることでその場で解決したり、頼りにしてもらえることもある。街の中で自分の専門性を活かせるのかも、と可能性を感じたんです。
それで、色々な所に顔を出して、話をしていたら、共感してくれて「一緒にやろう!」という人と出会えて、Mi-Projectの立ち上げにつながったんです。

 

松村さんが元々大切にされていた「一人ひとりの暮らしに寄り添い、笑顔にする」という想いが地域の中で活かせることに気づかれたんですね。
Mi-Projectのロゴも、人とのつながりを意識したデザインになっているように思いますが?

 


Mi-projectのロゴ

 

そうですね。仰るとおり、人のつながりを意識しています。
Mi-Projectが人と人とのつながりを産むような場になってほしい。松戸という地域で支えあう。未来に向かって一緒に考えていきたい。そんな願いを込めています。

 

Mi-Projectでは、これからどんなことをしていこうと思っていらっしゃいますか?

 

大きく2つあります。
一つは地域に介護や医療福祉の専門職が活躍できる場を作りたいと思っています。多世代交流サロンの「みんなんち」という場所があるのですが、そちらの活動の一環としてメンバーで「まつど暮らしの保健室」という形で講座や健康相談などを始めています。

 


 

もう一つは、自分の同世代の人たちを巻き込みたいと思っています。Mi-Cheersという地域のプレーヤーが交流する場所もスタートします。福祉職や医療職に限らず、地域をよりよくしたいという仲間が欲しいので、今後色々仕掛けていきたいですね。

 

社会を、地域を変えるリハビリテーション

 

活動がこれから広がっていくわけですね!最終的なゴールは、「自分の両親が、松戸の人が笑って最期を迎える社会にしたい」ということだと思いますが、松村さんが一番やりたいことは何でしょう?

 

社会の中で「自分は誰かの役に立てているんだ」と思える人を増やしたいです。松戸のシニア層の人と関わっていても「誰かの役に立ちたい」と思っている人が多いのですが、
高齢者や障害者はなかなかそういう「誰からの役に立つ」という形で地域と接点を持てていないのが現状です。
自分たちが何か活動をして、そこに参加してもらって、「参加してよかったね」で終わるのではなく、参加してくれた人が活動を通して自信を得て元気になって、社会で活躍するきっかけになりたいと思います。

 

お話を伺っていて、私自身もリハビリテーションの概念が広がったように思います。

 

広い意味で社会参画を促すリハビリテーションをしたいんです。やっぱり僕は根っからのリハビリテーション人間なんですよね。
何か支援をして、支援を受けた人が喜んだ・助かったで終わるのでなく、その人の次のアクションを促すことがしたいんです。
誰もが「自分がいてよいんだ」「役に立てているんだ」と思えるような社会づくり・地域づくりをリハビリテーションの視点から仕掛けたい。そう思っています。

 

変化を楽しむスタイルを持ち続けたい。

 

松村さんにとって、KAIGO MY PROJECTへの参加は、アクションへのよいきっかけになったのでしょうか。

 

僕にとっては、マイプロは一歩踏み出すことのきっかけになりました。
だからこそ、現状にもやっとしている・悶々としている人には、一度参加してみてほしいです。
何か課題認識を持つ人は、マイプロに限らず、一度外に出て色々な人と触れ合ってみるとよいと思います。

「脱皮しない蛇は死ぬ」という言葉があります。僕はこれを「変化をしないとだめだ」と受け取っています。人生の中で絶対に変化する瞬間というものはあるからこそ、その変化を楽しもうと考えています。
KAIGO MY PROJECTに参加して、外の世界に出てみて、変化することを、そう前向きに思えるようになった気がします。

まずは自分のマイプロとして、成功・失敗関係なくMi-Projectを泥臭く続けていこうと思っています。アクションを続けることで、新しい変化が出てくると思うので、楽しみながら変化していきたいですね。

 

ありがとうございました!
最後に、このインタビューをご覧になった松戸地域の人に伝えたいことがあれば、ぜひお願いします。

 

松戸の同世代の人で、医療介護に関わらず、自分の環境をよりよくしたいと思ったら、ぜひ一緒に何かやりましょう!
「私たちの世代が、地域に何ができるだろうか」ということを考える仲間が欲しいです。

 

 

松戸に軸足を置きつつ、外の世界とつながることで、地域を変える風を吹かせる。
理学療法士としての専門性を活かしながらも、様々な人たちと連携をすることで、よりよいものを産み出していく。

専門職としての誇りを持ちながらも、専門領域を越境して学び、アクションを起こしていく松村さんのスタイルは、介護職・理学療法士にとどまらず、これからの専門職に求められる姿なのではないかと思いました。

機能回復や身体的健康にとどまらず、一人ひとりの社会参画・よりよい地域社会を産み出す新しいリハビリテーション。松村さんの挑戦は、これからも続きます。

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この記事を書いた人

野沢 悠介 Yusuke Nozawa
株式会社Join for Kaigo取締役/ワークショップデザイナー
大手介護事業会社の採用担当者・人事部門責任者として、新卒採用を中心とした介護人材確保に従事。
2017年より、Join for Kaigoに加入、介護領域の人材採用・定着・育成をよりよくするために活動中。
趣味は音楽鑑賞。好きなアーティストを見に、ライブハウスに入り浸る日々。


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