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東大卒の福祉職。「せめて厚労省で!!」という親の反対を押し切って福祉の現場に出た理由とは。(高学歴介護職インタビュー)

OTHERS Column

  • 「東大卒×東大卒」夢の対談

以前にこちらの記事『東大卒の介護職。「東大行ったのに何で?」を超えて探る、“モテる介護職”とは?(早大生まっきーの高学歴介護職インタビュー)』で東大卒介護職としてインタビューを受けました木場です。この度、東大を卒業し、新卒で福祉の仕事に就いた方がいるとのことでお話しする機会をいただきましたので「東大卒×東大卒」でお送りします。

エリートコースから介護職へ

麻布高校から「自然な流れで」東京大学に入るという完全なエリートコースを歩んでいた御代田太一さんは卒業後、滋賀の社会福祉法人が運営する救護施設で働いているとのこと。

介護・福祉の現場の待遇を知る私の当然の疑問として浮かんできたのは「親御さんは反対しませんでしたか?」というものでした。

御代田:それはもう反対の嵐です。説得は…あまりしてないですね。 関心があることは親もわかっていて、その時は「学生時代は好きなことやればいい」と言ってくれていました。

ただ、いざ就活の時期になって福祉現場に行くことにしたと伝えた時は「ありえない、せめて厚労省で!!」って。
「福祉の現場の人にも、厚労省の人にも失礼だろ!」って思いますけど…。(笑)

でも、それがリアルな心情だったんだなとは思います。

自分もそれで聞くわけでもなくて、母もしかたないと思ってくれたようです。 今は仲良く?というか僕が就職したタイミングで母も福祉系の非営利組織に転職しています。

木場:反対していたお母さんも今は福祉系の仕事に就いてらっしゃると。そんなこともあるんですね!

 

ゼミとの出会い

 

学生時代から興味を持っていたということでしたが、理科Ⅰ類(主に工学部に進学)で入学した御代田さんがどうして福祉に興味を持ったんでしょうか。

 

1年生の時はハーバード大学との学生会議を共催する団体に所属して毎日夜遅くまで一生懸命やっていたんですが、2年になってそれが無くなって時間ができた時、急に人生に悩んで、なんで生きているんだっけ?とか考え始めて深みにはまっていきました。

そうして悩んでいる時に偶然手に取った哲学の本が胸に刺さって、教養学部の哲学専攻に進みました。同じ頃に「障害者のリアルに迫る」というゼミに参加して初めて障害当事者の方に出会って、そこで「障害」って面白いと思ったのがきっかけですね。

 

※「障害者のリアルに迫る」ゼミ

「障害者のリアルに迫る」東大ゼミは、経済学部の学生によって、2013年に開講されて以来、有志の学生により運営されている自主ゼミナールです。
「障害」や「障害者」について、固定観念を打破しタブーなくリアルに迫ることを目的として、講義にとどまらずあらゆる活動を展開しています。

身体障害や知的障害といった一般的に知られる「障害」だけでなく、ハンセン病元患者や依存症者、性的マイノリティなど、広い意味での「生きづらさ」を抱える人々に目を向けながら、受講生に一方的に知識を伝えるのではなく、障害をめぐる問題に触れる中で生まれるさまざまな疑問や悩みについて、一人ひとりが自由に考え、感じることのできる場所を目指している

(webサイト紹介文より)

 

毎回マイノリティの当事者をお呼びして話をしてもらうゼミで、制度の話とか支援はこうあるべきという話ではなく、今までどう生きてきたのかをお話ししてもらっていました。そして授業の後は、必ず障害のあるゲストも交えて飲み会をする。

3年間ゼミに関わる中で本当に多くの障害のある人と出会って、授業だけじゃなく支援現場に見学に行ったり、合宿をして泊まり込みで施設の人に話を聞きに行ったりしていました。

 

「障害」の何が面白かったんでしょうか? 

 

今もうまく言葉にできませんが、障害のある人に会う度、色々な方向に感情を強く揺さぶられました。

例えば、東大教授の福島智さんは目と耳が聞こえません。
その方が、ちょっとうわずった声で、光とともに音まで失った当時のエピソードや、恋愛、仕事、今の生活、そして生きる意味についてありありと語ってくれました。学生からの質問も通訳者を通じてなんでも答えてくれた。障害のある人の話を面と向かって聞くのも初めてだった僕にとっては、福島先生の存在から語られた内容まで、すべてが目から鱗でした。

でも飲み会は2次会まで付き合ってくれて、通訳者に学生たちのビールの量をこっそり聞いて、突然「御代田君、もっと飲みましょう!」とか言ってくる(笑)「福島先生、ホントは見えてるんでしょ?」とかツッコみながら、僕らも酔っぱらって、教室では聞けないようなことを聞いてみたり。「障害」のタブー感が一切なく、本当に新鮮でした。

瞼しか動かないALSの方を呼んだとき、授業後の懇親会で、ある学生が、「1つのボタンで治るとしたら押しますか?」って聞いたんですが、即答で(といっても介助者が口と目の動きで1文字ずつゆっくりと読み取って)「押しません」って答える場面があったり。みんなビールを片手にじっと聞き入っていました。。

毎回、自分が更新されるような体験でした。 あ、実はゼミから本を出しているので、詳しくはそちらを(笑)

 


『障害者のリアル×東大生のリアル』(ぶどう社)

福祉の現場への思い

障害・福祉への関心から、在学中にヘルパーの資格も取り現場を訪問していた御代田さん。
「東大新卒で就職活動」の流れに乗ることに悩んだ末、やっぱり現場に行ってみたいという思いが強く、福祉施設に就職したそうです。

今のお仕事はどんなことをされているんですか?

 

生活困窮者、元ホームレス、刑務所出所者、精神病院の退院者、アルコール依存、被虐待経験者、派遣切り、外国人など、今お金も住まいもない人たちが来る「救護施設」というところで働いています。

ある方は車に轢かれて一命を取り留めた後、警察に保護されてきたんですが、自分の名前も覚えていない、記憶がないという方がいて、しばらくは保護された地域の名前で仮名をつけて呼ばれていました。高校の名前だけ覚えていたので、そこから本名がわかって、妹さんがその後駆けつけて…
他にも、知的障害があって自分の記憶を辿って話すことが難しい方なので本当なのかもわからないんですが、聞いた限りでは家出をしたきり約20年間行方不明扱いで賽銭泥棒を続けて生きてきたという方もいました。

働き始めてすぐに、こんな人たちが同じ日本に生きていたのか、と思いました。

施設には今90人ぐらいの方が住んでいて、そのうち約4人に1人が介助が必要な高齢障害者です。
日々の業務の半分は介助で、排泄・食事・入浴の介助。身の回りのことが自分でできる人にはその人に必要な日常生活のサポートをしながら、アパートや仕事を見つけ、地域での生活に戻るための支援をしています。

 

 

大変そうにも聞こえますが、嫌になることはありませんか?

 

失敗することもあって、怒鳴られた時は嫌でしたよ。

持っているお金を全部使ってしまう方がいて、お小遣いの管理を担当していたんですが、朝「今日渡しますね」と言ったのに準備していなくて、「お前担当だろうがどないしてくれんねん」って怒鳴られながら胸ぐらつかまれて。
自分の失敗もあったり、「あいつは東大らしい」って利用者の間で噂が流れて拒絶されたりして大変な時もあります。

最近のことですが、なかなか自分の意思を出してくれなかった元ホームレスの60代の方に「なあなあ御代田くん、ワシ御代田くんのことだんだん好きになってきたわ」と言われました。
そんな、心を開いてもらえる瞬間がちょっとずつ増えてきて、自分の存在によって気持ちが変わったりする人が出てきたことにとてもやりがいを感じています。

欲を言えば、「この人のこの言葉ってどういう背景から出てきているのか?」みたいなことを現場でもっと議論して深めていきたいと思いますね。

 

最後の一言に東大っぽさが感じられた御代田さんですが、今後はどうしたいと思いますか?

 

今働いている滋賀の法人は、多くの現場を持ちながらも、毎年1500人規模のフォーラムを開催したり、障害者の芸術活動を支援と発信の一環で美術館を運営していたり、「福祉」という枠を広げようとしています。また制度作りにもコミットしている。
しっかりとした現場があるけど、現場だけじゃない。そこに惹かれて就職しました。

 

※御代田さんの現在の拠点

社会福祉法人グロー
ボーダレス・アートミュージアムNO-MA【社会福祉法人グローが運営する美術館】

自分の20年、30年後を考えた時に「福祉」の枠がどんどん広がって行くだろうなと感じているので、現場で経験を積みながら、広い視点で福祉を捉えていけたらと思っています。

 


 

タフな現場のことを楽しそうに話す御代田さんに、きっと何かやってくれる、そんな気配を感じた今回のインタビュー。

内容とは全く関係ありませんが、会った印象は非常にさわやかな好青年で、意地悪な自分はついつい欠点を探してしまいましたが見つかりませんでした。
せっかく知り合えたので介護・福祉業界に学閥を作っていきたいです。

 


 

この記事を書いた人

木場 猛  Takeru Koba

介護福祉士/KAIGO LEADERS PRチーム

東京大学文学部卒業。在学中から介護現場に出て18年目。
現場経験を生かし株式会社リクシスで介護離職の問題に取り組む。


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