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東日本大震災、避難誘導中の介護職員の犠牲は数百名。いざという時、僕たちは高齢者を見捨てることはできるのか? | 防災介護士の達人コラム

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今年もまた3月11日がやってきて、そして静かに終わろうとしている。
1万8千人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災から7年。

僕が関わる介護領域も大きな被害を受けた。厚生省老健局の平成23年6月13日時点での調査では、岩手、宮城、福島、3県で介護施設の全壊・半壊は52ヶ所、入所者・職員合わせて死亡者・不明者数は658名。

2017年版の「全国地震動予測地図」では、今後30年以内に震度6弱以上の揺れが起きる確率は、千葉の85%、2位は水戸と横浜の81%で昨年と変わらず。東京も47%と言われている。

震災の恐ろしさはもう知っているはずなのに、僕たちはあれから変われたのだろうか。

 

「若者は、障害者や高齢者は見捨てるべき。」と言った全盲の人との出会い

僕は介護職6年目。防災に興味を持ったのは学生の頃。防災のことをやっている先輩達がかっこ良くて、自分もそうなりたいと思い、防災系のボランティアをしていた。

とある防災訓練に参加したとき、全盲の高齢者と避難経路をまわる、それが私のミッションだった。先輩に憧れて防災のボランティアをはじめたものの、全く畑違いの文学部に進学していたため、正直どのように接したらいいのか分からず、戸惑いしかなかったことをよく覚えている。

そんな私の気持ちを察してくれたのか、「大丈夫。」と、慣れたように歩き、もはや私がその方に先導される状況になっていた。歩きながらその方と話したことは、今でも胸の片隅に引っかかり続けている。

「私たちはちょっとした変化でも適応が難しい。そんなことって思うだろうけど、点字ブロックにちょっとした荷物が置きっぱなしになってでもしたときは、壁だよ、壁。だから、災害にでもなれば、もうどうにもならないよ。」

 

そして、ポツリとこう言ったのだった。

「こんなの形式的な訓練なんだから、いざという時は私のような障害者も高齢者も、見捨てなさい。君の様な若者は、我々に巻き込まれる必要なんてないんだから。」

その当時は、その言葉にうまく返答できず、かといって深く考えることもしていなかった。しかし、その半年後にその言葉が現実に起きてしまったのだ。

 

3.11の覚悟。介護職として諦めたくないこと。

2011年、3月11日。東日本大震災。

冒頭に述べた通り、多くの人が命を一瞬にして奪われた。僕にとって何よりショックだったのは、避難誘導中に命を落とした高齢者・介護職員が数百人いたという話を耳にしたこと。

約1年間、学業の合間に被災地でのボランティアを行い、2012年4月から私は介護士として社会人生活をスタートさせた。介護の現場で、様々な人と出会い、様々な経験を積み重ねてきた。

そんな今、一人の介護士として、私が思うのは、万が一何かあったとき、あの時の、あの人の言葉通りに、自分は入居者を見捨てられる程、非情にはなれないということだ。でも、一緒に犠牲にあうことだって避けたい。

介護を受ける人も、介護をする人も、災害時に一緒に命を守る術があるのではないだろうか。

そんな思いはあるけれど、万が一何かあったときの備えは、残念ながら7年前からあまり進んだ感覚がない。

 

東日本大震災から7年、私が介護職として働くのも4月で7年目に突入する。

今も、介護の仕事自体はとても楽しい。きっとやろうと思えば、今まで通り一介護として働き続けることはきっとできるのだろう。ただ、本当にそれでいいのか? と、毎年3月11日を迎える度に心のどこかでずっと引っかかり続けてきていた。

そんな中、KAIGO  MY  PROJECTの12期に参加し、自分の想いと向き合う中で、自分の心に浮かんでくるのは、やっぱりあの時の全盲の人の言葉だった。今はまだ言えないけれど、もしまた会うことができたら「大丈夫です。見捨てませんし、何が起きても心配ないように準備してますから」と、胸を張って応えられる介護士になりたい。そんな風に思った。

当時の私とは違うのは、介護現場で積み重ねてきた経験があること。 そしてHEISEI KAIGO LEADERSの活動を通じてできた、自分の想いを応援してくれる仲間がいること。

もしかしたら、今なら何か出来るのかもしれない。 そんな想いで、震災から7年目の今日、新たな一歩を踏み出してみようと思う。避難誘導中に亡くなった介護職の方たちの在り方に敬意を持って、これからの「介護×防災」をテーマの在り方をさまざまな角度から見つめていきたいと思う。

もちろん、災害が起きないのがいい。しかし、もし起きた時、知らないことで守れないことを減らしたい。できない私たちに後悔したくない。そんな想いでこの活動を行っていく。

 


この記事を書いた人

清水 達人

清水 達人  Tatsuhito Shimizu
介護職、介護予防運動指導員/HEISEI KAIGO LEADERS PRチーム

学生時代に防災関係の活動や海外ボランティアに従事。東日本大震災時にも、学生ボランティアとして東北でも救援活動を行う。
介護士の経験と防災への関心から、「介護×防災」を考える“防災介護士”としての活動をスタート。
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